
「空き家を買って民泊を始めたいんですけど、銀行の空き家ローンを使えば、自己資金はほとんどいらないんですよね?」
最近、こんなご質問をいただくことが増えてきています。
ネットで「空き家ローン」「空き家活用ローン」という言葉を見かけて、物件の購入費もリノベーションの費用も、まとめて安い金利で借りられる、と思っている方が多いようです。
正直に言うと、ここは少し誤解があります。
調べてみると、空き家に関するローンを扱っている金融機関は全国で増えてきていますが、その多くは、空き家の解体費用や、自分や家族が住むための購入・リフォームの費用が対象です。
民泊や宿泊施設のように、事業として空き家を使う場合は、こうしたローンの対象外になっていることがほとんどです。
じゃあ、民泊や宿泊施設を始めたい人は、全部自己資金でやるしかないのかというと、そうでもありません。
事業として計画を立てて、建物の状態をきちんと示せば、物件の購入費とリノベーションの費用をまとめて借りられる可能性はあります。
今日は、新潟の金融機関が出している空き家関連のローンの実際と、自分で住む場合、事業として使う場合それぞれの資金の組み方、そして自己資金の持ち出しをできるだけ抑えるための実務的な進め方を書いてみます。
「空き家ローン」は、実際どんな商品なのか
全国の金融機関の6割が扱っているが、実績はまだ少ない
リクルートの住宅情報サイトの記事によると、2025年度の時点で、空き家に関するローンを扱っている金融機関は全体の約6割にのぼるそうです。
ただ、扱っている金融機関の約6割は、実際の融資の実績がほとんどないと答えています。
商品はあっても、まだあまり使われていない、というのが今の状況です。
使い道は、解体が中心
空き家関連のローンの使い道で一番多いのは、空き家の解体費用です。
最近は、空き家の購入やリフォームに使える商品も少しずつ増えてきています。

ただ、多くの商品に共通しているのが、原則として「自分や親族が住むため」という条件です。
投資や賃貸、事業として空き家を使う場合は、対象外とされていることが多いです。
新潟の金融機関の例
新潟県内の金融機関の例をいくつか挙げておきます。
大光銀行「たいこう空き家解体ローン」 空き家の解体費用に使えるローンです。
10万円から500万円まで、返済期間は10年以内。対象は大光銀行の営業区域内の物件で、個人の不動産賃貸業にあたる方は対象外とされています。
使い道は解体費用で、リフォームや購入には使えないようです。
第四北越銀行 第四北越銀行のホームページを見た限りでは、「空き家活用ローン」という名前の専用商品は見つかりませんでした。
空き家の解体費用などにフリーローンが使えることや、担保なしで最大800万円まで借りられるリフォームローンがあることが紹介されています。
自分で住む家を買う場合は、住宅ローンで購入とリフォームの費用をまとめて相談できます。
商品の内容は変わることがありますし、ホームページに出ていない形で相談に乗ってもらえることもあります。
実際には、取引のある金融機関の窓口で直接相談してみるのが一番確実です。
自分で住むなら:住宅ローンで購入とリフォームをまとめる
空き家を買って、自分や家族が住む場合は、住宅ローンを使うのが基本です。
購入費とリフォーム費を、一本の住宅ローンにする
多くの金融機関では、中古住宅の購入と同時にリフォームをする場合、その費用をまとめて住宅ローンで借りることができます。
リフォーム費用だけを別のリフォームローンで借りると、金利が高く、返済期間も短くなりがちです。
住宅ローンにまとめれば、低い金利で、長い期間で返せるので、毎月の返済をかなり抑えられます。
ただ、まとめて借りるには、物件の売買契約の段階で、リフォームの内容と見積もりができている必要があります。
ここが大事なポイントです。
フラット35の空き家対策の金利引き下げ
住宅金融支援機構のフラット35には、購入とリノベーションをまとめて借りられる「フラット35リノベ」があります。

それから、住宅金融支援機構と連携している市町村では、空き家バンクの物件を買う場合などに、フラット35の金利が当初5年間、年0.5%引き下げられる「地域連携型(空き家対策)」が使えることがあります。
お住まいの市町村が連携しているかは、市町村の窓口で確認してください。
市町村の補助金と組み合わせる
市町村によっては、空き家バンクの物件を買って住む人に、改修費用の補助を出しているところもあります。
国の省エネリフォームの補助金と組み合わせられることもあります。
民泊・宿泊施設を始めるなら:事業として借りる
ここからが、民泊や宿泊施設を始めたい方に一番知っておいてほしいところです。
住宅ローンは使えない
民泊や宿泊施設は、事業です。
住宅ローンは、自分が住むための家を買うためのローンなので、民泊用の物件には使えません。
「住宅ローンで買って、あとから民泊にすればいい」と考える方もいますが、これは契約違反になるおそれがあります。
金融機関に知られれば、一括での返済を求められることもあります。
絶対にやめてください。
事業性の融資を相談する
民泊や宿泊施設のための資金は、事業のための融資として相談することになります。
主な相談先は、次のようなところです。
- 地方銀行や信用金庫の事業性の融資
- 日本政策金融公庫の創業向けの融資
- 自治体の制度融資(信用保証協会の保証付き)
事業性の融資は、住宅ローンと違って、決まった商品に当てはめて審査するというより、事業計画の中身を見て、貸せるかどうか、いくら貸せるかを判断します。
ここで、建物の状態をきちんと示した事業計画があるかどうかが、大きな差になります。
インスペクションを添えた事業計画が、なぜ効くのか
金融機関が一番心配していること
空き家を使った事業に、金融機関が慎重になる理由は、はっきりしています。
古い建物は、どこが傷んでいるか分からない。
リノベーションの費用が、あとからいくら膨らむか分からない。
工事が終わる前にお金が足りなくなって、事業が始まらないかもしれない。
始まっても、思ったほどお客さんが来ないかもしれない。
金融機関が一番気にしているのは、「この計画の数字は、本当に信用できるのか」ということです。
インスペクションで、建物のリスクを見える形にする
ここで役に立つのが、建築士などの専門家による建物の状況調査(インスペクション)です。
インスペクションでは、建物の傾き、基礎や外壁のひび割れ、雨漏りの跡、床下や屋根裏の状態などを調べて、報告書にまとめます。
この報告書があると、建物のどこが傷んでいて、どこに手を入れる必要があるのかを、第三者の目で示すことができます。
報告書をもとにリノベーションの見積もりを出せば、「この費用は、根拠のある数字です」と金融機関に説明できます。
事業計画に入れておきたいこと
金融機関に出す事業計画には、少なくとも次のような内容を入れておきます。
- 物件の概要と、選んだ理由(立地、周辺の観光や需要)
- インスペクションの結果と、必要な補修の内容
- リノベーションの内容と見積もり(補修、設備、消防設備、家具など)
- 物件取得費とリノベーション費用、その他の費用を合わせた総額
- 自己資金の額と、借りたい額
- 宿泊料金、予約が入る日数の見込み、売上の計画
- 運営の費用(管理委託、清掃、光熱費、税金、保険など)
- 返済の計画
- 許可や届出の見通し(旅館業法の許可、住宅宿泊事業の届出など)
数字は、楽観的に作りすぎないことが大事です。
予約が入る日数は少なめに、費用は多めに見積もっておいたほうが、金融機関の信頼は得やすくなります。
自己資金の持ち出しを抑えるための実務
1. 物件取得とリノベーションを、最初から一体で計画する
一番大事なのは、物件を買う前に、リノベーションの計画と見積もりまで済ませておくことです。

物件を先に買ってから、リノベーションの費用を借りに行くと、物件の購入費は自己資金や別の借入で払っていて、リノベーションの分だけ新たに相談することになります。
そうなると、借りられる額が足りなかったり、物件の購入で自己資金を使い切ってしまったりします。
物件の購入費とリノベーションの費用を、最初から一つの計画としてまとめて相談すれば、全体として借りられる額が見えますし、自己資金をどこにどれだけ使うかも計画しやすくなります。
2. 見積もりの精度を上げて、追加費用を減らす
古い建物の改修は、工事を始めてから追加の費用が出ることが多いです。
着工後に追加の費用が出ても、事業性の融資では、すぐに追加で貸してもらえるとは限りません。
結局、自己資金で埋めることになります。

インスペクションで建物の状態をよく調べておくこと、アスベストの事前調査など、法律で決まっている費用を最初から見積もりに入れておくこと、見積もりの1割から2割程度は予備費として見ておくこと。
これが、結果的に自己資金の持ち出しを減らすことにつながります。
3. 補助金は、後から入ることを前提にする
国や市町村の補助金を使えば、実質的な負担を減らせます。
ただ、補助金の多くは、工事が終わって実績を報告してから支払われる「後払い」です。
工事の代金は、先に自分で用意しなければなりません。
補助金が入るまでの間のお金を、どうやって用意するかも計画に入れておいてください。
金融機関によっては、補助金が入るまでのつなぎの資金を相談できることもあります。
4. 段階的に始める
最初から全部の部屋を整えて、立派な施設にしようとすると、初期費用は大きくなります。
まずは一部の部屋だけで始めて、売上の実績をつくってから、次の部屋に手を入れていく。
最初は住宅宿泊事業の届出で始めて、需要が確かめられたら旅館業の許可に切り替える。
こうした段階的な始め方も、初期費用を抑える方法の一つです。

実績ができれば、次の融資の相談もしやすくなります。
5. 自己資金は、ゼロにしようとしない
自己資金の持ち出しを抑えることは大事ですが、ゼロにしようとするのはおすすめしません。
金融機関は、事業を始める人がどれだけ自分のお金を入れているかを見ています。
自己資金がまったくない計画は、審査で厳しく見られがちです。
それに、開業してしばらくは、思ったように予約が入らないこともあります。
手元に運転資金を残しておかないと、すぐに資金が回らなくなります。
自己資金は、物件や工事に全部使うのではなく、一部を開業後の運転資金として残しておく。
そのうえで、足りない分を借りる、という考え方が安全です。
清新ハウスでお手伝いできること
清新ハウスでは、空き家の購入から、リノベーション、民泊・宿泊施設の開業まで、まとめてご相談いただけます。
グループ会社では、住宅宿泊管理業として民泊の運営管理も行っています。

- 物件探しと、購入前の建物チェック
- 建物状況調査(インスペクション)のご案内
- インスペクションの結果をもとにした、リノベーションの計画と見積もり
- 消防設備やアスベスト調査など、法律で必要な費用の洗い出し
- 金融機関に出すための、事業計画の数字づくりのお手伝い
- 国や市町村の補助金の確認と申請
- 開業後の運営管理
融資の審査そのものは金融機関が行うので、私たちが「借りられます」とお約束することはできません。
でも、金融機関に説明するための建物の資料と、根拠のある見積もりを用意することはできます。
「この空き家で民泊を始めたいけど、お金の計画がよく分からない」「自分で住むために空き家を買いたいけど、リフォームの費用まで借りられるのか知りたい」。そういう段階でのご相談で大丈夫です。
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