
「この家、直して使うのと、壊すのと、どっちがいいんでしょうか」
五泉市や村松地区で古い家のご相談を受けると、最後はだいたいこの質問になります。
大きな梁が通っていて、立派な床の間があって、ご両親やおじいさんの代から住み継いできた家。
壊すのはもったいない気がする。
でも、直すのにいくらかかるか分からない。
壊すにもお金がかかる。
どっちにしても、決めきれずに何年も空き家のまま、という家が本当に多いです。
私は全国古民家再生協会の理事、新潟古民家再生協会の代表理事として、古民家の活用にも長くかかわってきました。
古い家は残せるなら残したい、というのが正直な気持ちです。
それでも、全部の家を残すべきだとは思っていません。
残したほうがいい家もあれば、残すのが難しい家もあります。
今日は、古民家を再生するとどれくらいの費用がかかるのか、そして、残すか壊すかを決めるときに何を見ればいいのかを、五泉の家を前提に書いてみます。
古民家再生の費用は、幅がとても大きい
最初に、費用の話からしておきます。
「古民家を再生するといくらかかりますか」と聞かれても、正直、家を見るまでは答えられません。
同じくらいの大きさの家でも、数百万円で済むこともあれば、数千万円かかることもあります。

なぜそんなに幅があるのか。費用を大きく左右するのは、次のようなことです。
どこまで手を入れるか
一番大きいのは、手を入れる範囲です。
水まわりを新しくして、傷んだところを補修して、住めるようにする部分的な改修なら、数百万円の範囲に収まることもあります。
屋根をふき替えて、断熱を入れて、耐震補強をして、間取りも変えて、という全面的な再生になると、新築と同じくらいか、それ以上かかることも珍しくありません。
建物の傷み具合
同じ工事内容でも、建物がどれだけ傷んでいるかで費用は大きく変わります。
雨漏りが長く続いていた家は、屋根だけでなく、その下の梁や柱、床まで傷んでいることがあります。
床下の湿気でシロアリの被害が広がっていると、土台や柱の交換が必要になります。
家が傾いていれば、まず建物を起こして直す工事が必要です。
空き家になってからの年数が長いほど、こうした傷みが進んでいることが多いです。
屋根の種類と大きさ
古民家は屋根がとにかく大きいです。五泉や村松の農家住宅は、母屋の屋根だけでもかなりの面積があります。
瓦屋根なら、瓦をおろして下地を直して葺き直す工事になります。
茅葺きの上にトタンをかぶせてある家も多くて、その場合は、トタンを替えるのか、茅をおろして屋根をつくり直すのかで費用がまったく違ってきます。
雪の多い地域なので、屋根は一番お金をかけないといけないところだと思っておいてください。
断熱と耐震
昔の家は、断熱という考え方がほとんどないまま建てられています。冬に快適に住もうと思うと、床、壁、天井、窓の断熱が必要です。
耐震については、古民家の多くは、柱を石の上に載せる「石場建て」など、今の建築基準法とは違う伝統的な構法で建てられています。
今の基準のやり方で耐震補強をしようとすると、建物の性格を壊してしまうこともあるので、伝統構法をよく分かった人に診てもらう必要があります。
見えないところの費用
古い家の改修では、工事を始めてから分かることがどうしても出てきます。
壁をはがしたら柱が腐っていた、床をはがしたら土台が傷んでいた、といったことです。
それから、改修でも解体でも、工事の前にアスベスト(石綿)の事前調査が法律で義務になっています。
昭和の時代に改修された古民家には、スレートの屋根や天井の板など、アスベストを含む建材が使われていることがあって、見つかれば対策の費用がかかります。この話は別の記事で詳しく書いています。
壊すにも、お金はかかる
「直すのが高いなら、壊せばいい」と思われるかもしれません。
でも、解体にもかなりの費用がかかります。
古民家は建物が大きく、柱や梁も太いので、普通の木造住宅よりも解体の手間がかかります。
母屋のほかに、納屋、作業小屋、蔵、車庫がある家も多いです。
家財がそのまま残っていれば、その処分の費用もかかります。
建物の大きさや、付属の建物の数、道路の広さ、アスベストの有無などによって、解体費は大きく変わりますが、大きな農家住宅だと数百万円になることも珍しくありません。

それから、税金のこともあります。
住宅が建っている土地は、固定資産税が軽くなる特例があります
。建物を壊して更地にすると、この特例がなくなって、土地の固定資産税が上がります。
壊して土地として売る、新しく家を建てる、といった次の予定が決まっていないまま壊すと、税金だけが上がって、土地が手元に残る、ということになりかねません。
残すか、壊すかの判断基準
では、何を見て決めればいいのか。私が実際に家を見るときに、気にしているところを書いておきます。
1. 骨組みがしっかりしているか
一番大事なのは、柱、梁、土台など、家の骨組みの状態です。
太い梁や柱が健全で、腐れやシロアリの被害が一部にとどまっているなら、再生できる可能性は高いです。
古民家に使われている木は、今では手に入りにくい太さや質のものも多くて、それ自体に価値があります。
逆に、土台や柱の広い範囲が腐っている、シロアリに食われている、という場合は、直すより建て直したほうがいいこともあります。
2. 雨漏りが、どれくらいの期間続いていたか
雨漏りは、古民家の一番の敵です。
雨漏りが始まってすぐ直していれば、被害は限られます。
でも、空き家のまま何年も雨漏りが続いていると、屋根の下の梁や、床、壁まで傷んでいきます。
屋根裏をのぞいて、梁に雨のしみや腐れがどれくらいあるかを見ると、残せるかどうかの見当がつきます。
3. 家が傾いていないか
床にビー玉を置いたら転がる、建具が閉まらない、というくらい家が傾いている場合は、基礎や地盤から見直す必要があります。
傾きを直す工事は、できないわけではありませんが、費用がかかります。
傾きの原因が地盤なのか、土台の腐れなのかによっても、対応が変わってきます。
4. その家を、何に使うのか
建物の状態と同じくらい大事なのが、残したあとに何に使うのか、です。
自分たちや子どもが住む、民泊や宿にする、お店や地域の集まる場所にする、貸す。
使い方が決まっていれば、それに必要な工事の範囲と、かけられる費用が決まってきます。

使い方が決まらないまま「とりあえず残す」と、空き家のまま傷みが進んで、何年かたってから結局壊すことになる、ということが多いです。
5. 再生した費用を、回収できるか
民泊や賃貸にする場合は、改修にかけた費用を、何年で回収できるかを考える必要があります。
自分たちが住む場合も、新築を建てた場合の費用や、毎月の光熱費、これからのメンテナンスの費用と比べてみてください。
6. 法律上の制限がないか
建物を建て直せる土地かどうかも、大事な判断材料です。
道路にきちんと接していない土地だと、一度壊すと新しく建てられないことがあります。
市街化調整区域にある家だと、建て直しに制限がかかることもあります。
そういう土地では、建物を壊さずに、今の家を直して使うほうがいい場合もあります。
7. 家族の気持ち
最後は、ご家族の気持ちです。
数字だけで考えれば壊したほうがいい家でも、家族が大事にしてきた家を残したい、という気持ちがあるなら、それは十分な理由になります。
逆に、数字の上では残せる家でも、誰も使わないなら、無理に残す必要はありません。
相続人が何人かいる場合は、早めに全員で話をしておいてください。
五泉・村松の古い家で、よく見るパターン
判断基準を書いてきましたが、実際の家に当てはめるとどうなるか。
五泉や村松で見ることの多い家を、いくつかのパターンに分けて書いておきます。
大きな母屋と納屋のある農家住宅
五泉の郊外でいちばん多いのがこのタイプです。母屋の骨組みはしっかりしていることが多いですが、屋根が大きいぶん、屋根の工事費がかさみます。
納屋や作業小屋は、母屋より傷みが進んでいることが多く、波形のスレート屋根が使われていることもあります。
母屋は残して、付属の建物は整理する、という判断になることが多いです。
村松の町なかに残る町家
村松は城下町だった歴史があって、町なかには間口が狭くて奥に長い町家が残っています。
隣の家と壁がくっつくように建っていることもあって、壊すとなると、隣の家への影響にも気をつけなければいけません。

一方で、通りに面していて、お店や小さな宿に使いやすいという面もあります。
使い方しだいで、残す価値が大きくなるタイプです。
昭和の時代に、一度大きく改修された家
外から見ると普通の古い家なのに、天井をのぞくと立派な梁が隠れている、という家もよくあります。
昭和の時代に、新しい建材で天井や壁を覆ってしまっているパターンです。
こういう家は、覆っている建材をはがすと、古民家らしい空間がよみがえることがあります。
ただ、その当時の建材にアスベストが含まれていることもあるので、はがす前の調査が欠かせません。
どのパターンでも、外から見ただけでは分からないことが多いです。
屋根裏と床下まで見て、はじめて判断できると思ってください。
夏に見て「これなら大丈夫そう」と思った家が、冬の雪の重みで建具が動かなくなる、ということもあるので、できれば季節を変えてもう一度見てもらうと安心です。
残すことにしたら、やっておきたいこと
一部だけ残す、という方法もある
全部を残すか、全部を壊すか、の二択で考えなくても大丈夫です。
母屋は残して、傷んだ納屋や増築部分だけ壊す。
家は壊しても、太い梁や建具、欄間を新しい家に使う。
蔵だけ残して、物置や小さな店にする。
こうした方法なら、費用をおさえながら、古い家のいいところを残せます。
段階的に直していく
最初から全部を直そうとすると、大きなお金がかかります。

まず屋根と雨漏りを直して、建物の傷みが進まないようにする。
次に水まわりと、よく使う部屋の断熱を直す。
そのあとで、ほかの部屋に手を入れていく。何年かに分けて直していく方法もあります。
ただ、何を先にやるかの順番を間違えると、あとで二度手間になることもあるので、最初に全体の計画を立ててから進めるのがおすすめです。
補助金を確認する
国の省エネリフォームの補助金や、耐震改修の補助金、市町村の住宅リフォームの補助金などが使える場合があります。
五泉市にも、市内の業者が行うリフォームの補助制度があります。
条件や受付の時期は年度によって変わるので、工事の契約の前に確認してください。
清新ハウスでお手伝いできること
清新ハウスでは、五泉市や周辺の地域で、古民家や古い家の再生と、解体、売却のご相談を受けています。

- 建物の骨組み、屋根、床下の状態の確認
- 残す場合の改修費用、壊す場合の解体費用の両方の見積もり
- 自宅、民泊、賃貸など、使い方に合わせた再生のプラン
- 伝統構法に合わせた耐震の考え方のご説明
- アスベストの事前調査の手配
- 補助金の確認と申請
- 壊して売る場合の、土地としての売却のご相談
「残すか壊すか、まだ全然決めていない」という段階でのご相談が、いちばんありがたいです。
両方の費用を並べて見ると、迷っていたことがかなり整理できると思います。
古い家は、一度壊してしまうと二度と戻りません。
でも、残すことにこだわりすぎて、何年も空き家のまま傷ませてしまうのも、もったいないことです。
決めきれないでいる方は、まず一度、家を見させてください。
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