
ピンポーン。
玄関を開けると、作業着姿の感じのいい若い人が立っていて、こう言います。
「近くで工事をしている者なんですが、通りがかりにお宅の屋根を見たら、瓦が少しずれているようで。このままだと雨漏りしますし、強い風で飛んだらご近所にご迷惑がかかりますよ。今なら無料で点検しますけど、どうですか」
この一言が出た瞬間に、警戒してください。
これは、点検商法と呼ばれる悪質な訪問販売の、典型的な入り方です。
無料の点検をきっかけに家に上がり込んだり、屋根に上ったりして、「このままでは大変なことになる」と不安をあおり、その場で高額な工事の契約を結ばせます。
国民生活センターに寄せられた点検商法の相談は、2025年度で約2万件にのぼります。
数年前と比べて大きく増えています。
屋根工事の点検商法のトラブルでは、契約した人の8割以上が60歳以上だったというデータもあります。
9月にも、警察庁のデータをもとに点検商法についての記事を書きましたが、その後も相談が続いているので、今回はもう少し実践的に、玄関先でどう対応すればいいのか、契約してしまったらどうすればいいのかを、住宅会社の立場から書いておきます。
ご自身のことだけでなく、離れて暮らすご両親のことも思い浮かべながら読んでいただければと思います。
点検商法の典型的な流れ
国民生活センターが紹介している典型的な勧誘の流れを、現場で聞く話もあわせて整理しておきます。
1. 突然の訪問
「近くで工事をしているので、ご挨拶に」「この地域を回って点検しています」「市から委託を受けて」などと言って、突然訪ねてきます。
「近所で工事をしている」というのは、実際にはうそだったという事例もあります。
市や役所の名前を出すのも、よくある手口です。
役所が、業者に個別の家の点検を頼んで回らせることは、まずありません。
2. 無料点検の提案
「通りがかりに見たら瓦がずれていた」「アンテナが傾いている」「雨どいが外れかけている」と言って、無料で点検しますと持ちかけます。
地上からぱっと見ただけで、屋根の傷み具合が正確に分かることはほとんどありません。
3. 屋根に上って、写真を見せる
点検と称して屋根に上り、「こんなに傷んでいます」と写真や動画を見せます。
最近は、ドローンで撮影したという写真を見せる手口もあります。
ここで注意してほしいのは、その写真が本当にお宅の屋根のものかどうかは、見せられた側には分からない、ということです。
別の家の傷んだ屋根の写真を見せる、点検のふりをして瓦をわざとずらしたり割ったりする、という悪質な例も報告されています。
4. 不安をあおる
「このままだと次の大雨で雨漏りします」
「瓦が飛んだら、ご近所の車や人にけがをさせて、損害賠償になりますよ」
「今すぐ直さないと、家全体が腐ってしまう」。
家の持ち主の不安を、強くあおってきます。
5. その場で契約を迫る
「今日契約してもらえれば、足場代はサービスします」
「この地域で工事をしている今だけの特別価格です」
「材料が余っているので安くできます」。
考える時間を与えずに、その場での契約を迫ります。
6. 保険金の話を持ち出す
「火災保険を使えば、自己負担なしで直せますよ」
「保険の申請はこちらで代わりにやります」
と言って、契約のハードルを下げようとするのも、よくある手口です。
7. 次々に別の工事を勧める
屋根の工事が終わると、今度は「外壁も傷んでいる」「床下に湿気がある」「分電盤が古くて火事の危険がある」と、別の工事を次々に勧めてくることもあります。
最近は、屋根の点検商法への警戒が広まったことから、分電盤や給湯器の点検をきっかけにした相談も増えています。
玄関先で、話を終わらせる
点検商法の被害を防ぐ一番の方法は、玄関先で話を終わらせることです。
家に上げない、屋根に上らせない、その場で契約しない。
この三つを守るだけで、ほとんどの被害は防げます。
「結構です」とはっきり断る
訪問してきた人が感じよく丁寧だと、断るのが申し訳なく感じてしまうかもしれません。
でも、頼んでもいないのに突然来た人に、気を遣う必要はありません。
「結構です」「必要ありません」「うちは決まった業者に頼んでいます」と、はっきり伝えてドアを閉めてください。
理由を説明する必要もありません。
理由を言うと、それに合わせて別の話を持ち出してくるからです。
インターホン越しに対応する
そもそも、玄関を開けないのが一番です。
インターホン越しに用件を聞いて、心当たりのない訪問であれば、「結構です」と答えて終わらせてください。

インターホンの録画機能があれば、録画しておくと、あとで相談するときにも役立ちます。
屋根に上らせない、家に上げない
「無料ですから」「見るだけですから」と言われても、屋根に上らせたり、家に上げたりしないでください。
一度上らせてしまうと、「こんなに傷んでいる」と言われたときに、それが本当かどうか確かめる方法がありません。
点検を口実に、わざと屋根を壊されることもあります。
名刺やチラシを受け取っても、その場では決めない
どうしても気になる場合は、名刺やチラシだけ受け取って、「家族と相談してから、こちらから連絡します」と伝えて帰ってもらってください。
「今日決めてもらえないと、この値段ではできない」と言われたら、それはその業者を断る十分な理由になります。
本当に必要な工事であれば、一晩考えたくらいで手遅れになることはまずありません。
一人で判断しない
特に高齢の方は、一人で判断しないことが大事です。
訪問してきた業者の話を聞いたら、必ず家族や、信頼できる知り合いに相談してから決めてください。
離れて暮らすご両親がいる方は、「知らない業者が来て工事の話をされたら、決める前に必ず電話して」と、今日にでも伝えておいてください。
それだけで防げる被害がたくさんあります。
「火災保険で無料で直せます」には特に注意
点検商法で、最近特に多いのが、火災保険を使った勧誘です。
火災保険には、台風や強風、雪、雹などの自然災害で家が壊れたときに、修理費が補償される契約が多くあります。
本当に自然災害で壊れたのであれば、保険を使って直すのは正当なことです。
ただ、経年劣化、つまり年月がたって自然に傷んだものは、基本的に保険の対象になりません。

悪質な業者は、経年劣化による傷みを「台風で壊れた」ことにして保険を申請させようとしたり、「保険金が下りなくても解約できない」契約を結ばせたりします。
保険金が出たあとに、高額な手数料を請求されることもあります。
うその内容で保険金を請求すれば、契約者本人が保険金詐欺に問われるおそれもあります。
「保険で無料になる」という話には、乗らないでください。
保険が使えるかどうかは、自分で保険会社や代理店に直接確認するのが確実です。
もし契約してしまったら
その場の勢いで契約してしまった、という方もいると思います。
その場合でも、あきらめないでください。
クーリング・オフ
訪問販売で契約した場合は、契約書を受け取った日から8日以内であれば、無条件で契約を解除できるクーリング・オフという制度があります。
工事がすでに始まっていても、8日以内であれば解除できます。
クーリング・オフの通知は、書面で送るのが基本です。
はがきに、契約日、契約の内容、金額、業者名、契約を解除する旨を書いて、簡易書留や特定記録郵便など、送ったことが記録に残る方法で送ってください。
送る前に、はがきの両面をコピーしておきます。
2022年6月からは、電子メールなどでの通知もできるようになっています。
契約書に必要なことが書かれていなかったり、クーリング・オフについての説明がなかったりした場合は、8日を過ぎていても解除できることがあります。
うその説明で契約させられた場合
「このままだと雨漏りする」といったうその説明で契約させられた場合は、クーリング・オフの期間を過ぎていても、契約を取り消せることがあります。
消費者ホットライン「188」
困ったときは、一人で悩まずに、消費者ホットライン「188(いやや)」に電話してください。
近くの消費生活センターにつないでもらえます。
クーリング・オフのやり方や、業者との交渉の方法について、相談に乗ってもらえます。
すでにお金を払ってしまった場合や、業者から脅されているような場合は、警察にも相談してください。
新潟で特に気をつけたい時期
新潟では、点検商法が増えやすい時期があります。
一つは、台風や強風、大雨のあとです。
「この前の台風で、このあたりの家はみんな屋根が傷んでいる」と言って回る業者が出てきます。
実際に被害が出ている地域では、本物の業者と見分けがつきにくくなるので、特に注意が必要です。

もう一つは、雪が降る前の秋です。
「このままだと雪の重みで屋根が壊れる」
「冬の前に直さないと間に合わない」
と、冬への不安をあおってきます。
雪国ならではの心配ごとにつけこむ手口です。
それから、春の雪どけのあとも要注意です。
「雪で雨どいが壊れている」
「屋根の板金がめくれている」
と言って訪ねてきます。
どの時期も、家の持ち主が「もしかしたら本当に傷んでいるかもしれない」と思いやすいタイミングです。
だからこそ、突然の訪問には乗らずに、気になることがあれば自分から信頼できる業者に相談するようにしてください。
本当に屋根が心配になったら
訪問してきた業者を断ったあとで、「でも、本当に屋根が傷んでいたらどうしよう」と心配になる方もいると思います。
その場合は、自分から、信頼できる地元の業者に点検を頼んでください。
信頼できる業者かどうかを見分けるポイントを、いくつか挙げておきます。
- 会社の所在地がはっきりしていて、実際に事務所がある
- 建設業の許可や、建築士事務所の登録など、必要な許可や資格を持っている
- 点検の結果を、写真や報告書で丁寧に説明してくれる
- その場で契約を迫らない
- 見積もりの内訳が分かりやすく、何にいくらかかるのかが分かる
- ほかの業者の見積もりと比べることを嫌がらない
- 今すぐ直さなくてもいいものは、そう正直に言ってくれる
複数の業者に見積もりを頼んで比べるのも、とても大事です。
同じ工事でも、業者によって金額が倍以上違う、ということも珍しくありません。
清新ハウスの点検について
清新ハウスでも、屋根や外壁の点検を行っています。
ドローンを使った屋根の点検もしています。
ここで、はっきりお伝えしておきます。

清新ハウスは、ご依頼のないお宅に突然訪問して、点検や工事の営業をすることはありません。
「清新ハウスの者です」と名乗って突然訪ねてくる人がいたら、当社に確認の電話をいただければと思います。
当社がドローンで点検をするときは、お客様にも撮影した映像や写真を一緒に見ていただき、どこがどう傷んでいるのかを、その場で確認していただけるようにしています。
すぐに直さなくてもいいところは、そうお伝えします。
点検をしたからといって、工事を契約していただく必要はありません。
「うちは大丈夫」と思っている人ほど
点検商法の被害にあった方の多くは、「自分は大丈夫だと思っていた」とおっしゃいます。
業者は、話がとても上手です。
丁寧で、感じがよく、親切そうに見えます。
家のことを本気で心配してくれているように感じます。
だからこそ、だまされてしまうんです。
ピンポーン、「お宅の屋根、傷んでますよ」。
この言葉を聞いたら、相手がどんなに感じがよくても、玄関先で話を終わらせてください。
そして、心配なことがあれば、自分から信頼できる業者に相談してください。
屋根や外壁のこと、訪問業者に言われたことで不安になっていることがあれば、清新ハウスにもお気軽にご相談ください。
工事の契約をしてしまった方の、見積もりや工事内容の確認のご相談にも乗っています。
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