
最近の家づくりの打ち合わせでは、最初から性能の数値の話になることが増えました。
「UA値はいくつですか」
「C値は0.5を切れますか」
「耐震等級3は標準ですか」
「断熱等級7は可能ですか」。
インターネットやSNSで勉強してから来られる方が増えて、住宅の性能について詳しい方が本当に多くなりました。
それ自体は、とてもいいことだと思っています。
性能の低い家が当たり前だった時代に比べれば、住まい手が性能に関心を持つようになったのは、業界全体にとっても前向きな変化です。
ただ、打ち合わせを重ねていく中で、少し心配になることもあります。
数値をよくすることが目的になってしまって、肝心の「どんな暮らしをしたいのか」の話が置き去りになっている。
他社の数値と比べることに疲れて、何を決めればいいのか分からなくなっている。
数値を詰めることに時間を使いすぎて、間取りや予算の検討が後回しになっている。
正直に言うと、机の上の数値ばかりに目を向けて、考えすぎてしまった家づくりは、うまくいかないことが多いと感じています。
今日は、住宅性能の数値が何を表していて、何を表していないのか、そして数値とどう付き合えば、満足できる家づくりにつながるのかを書いてみます。
性能の数値は、とても大事です
最初にはっきりさせておきたいのは、性能の数値は大事だということです。
2025年4月からは、新築の住宅に省エネ基準への適合が義務づけられ、断熱等性能等級4が最低ラインになりました。
国はさらにその上の等級5や6を目指す方向を示しています。
新潟のように冬の寒さが厳しく、夏も蒸し暑い地域では、断熱と気密の性能が暮らしの快適さや光熱費に直結します。
地震の多い日本では、耐震の性能も欠かせません。
だから私たちも、性能を軽く見るつもりはまったくありません。
断熱、気密、耐震、換気。
どれも、家族が長く安心して暮らすための土台です。
問題は、数値そのものではなく、数値だけを見て家づくりを進めてしまうことです。

数値が表していること、表していないこと
よく話題になる数値について、それぞれが何を表していて、何は表していないのかを整理しておきます。
UA値(外皮平均熱貫流率)
家の外側(壁、屋根、床、窓など)から、どれくらい熱が逃げやすいかを表す数値です。
小さいほど断熱性能が高いことになります。
UA値は、設計図をもとに計算で出す数値です。
家全体の平均の値なので、たとえば大きな窓を北側に設けても、壁の断熱を厚くすれば数値は同じになることがあります。
でも、実際の住み心地は、窓の位置や大きさ、方角によってかなり変わります。
窓際の寒さや、夏の西日の暑さは、UA値の数字だけでは分かりません。
また、UA値には、冬の日差しをどれだけ取り込めるか、夏の日差しをどれだけ遮れるか、という要素は入っていません。
同じUA値の家でも、日射の取り込み方によって、冬の暖かさも、夏の暑さも違ってきます。
C値(相当すき間面積)
家にどれくらいすき間があるかを表す数値です。
小さいほど気密性能が高いことになります。
C値は、完成した家で実際に測定する数値です。
設計だけでは決まらず、現場で職人さんがどれだけ丁寧に施工したかで結果が変わります。
C値は、施工の丁寧さを確認するための大事な数値です。
ただ、C値が低ければ、それだけで快適な家になるわけではありません。
気密性が高い家では、換気の計画がきちんとしていることがとても大事です。
換気が計画どおりに働いていないと、空気がこもったり、結露が起きたりします。
また、C値は測定したときの値です。
年月がたつと、木材の乾燥や建物の動きで、すき間は少しずつ変化します。
耐震等級
地震に対する建物の強さを表す等級です。
等級1が建築基準法で求められる最低限の強さで、等級3はその1.5倍の地震の力に耐えられる強さとされています。
耐震等級は、構造の計算をもとに決まる等級です。
実際の地震に強い家にするには、計算どおりに施工されていること、地盤がしっかりしていること、建物が傷まずに長く維持されていることも大事です。
一次エネルギー消費量
家で使う冷暖房や給湯、照明などのエネルギーを、一定の条件で計算した数値です。
ただ、実際のエネルギーの使い方は、住む人の暮らし方によって大きく変わります。
家族の人数、家にいる時間、暖房の設定温度、お風呂の入り方。
同じ性能の家でも、光熱費は家族によってまったく違ってきます。

机上の数値と、実際の暮らしのずれ
こうして並べてみると、性能の数値は、どれも「ある条件のもとでの計算や測定の結果」だということが分かります。
家の一面を切り取ったものとしては正確ですが、暮らしのすべてを表しているわけではありません。
実際の住み心地を決めるのは、数値だけでなく、次のようなことの組み合わせです。
間取りと窓の配置
どこに窓があって、どこから日が入り、どこを風が抜けるのか。家族がどこで過ごし、どう動くのか。
間取りと窓の配置は、数値以上に、暮らしやすさを左右します。
数値をよくするために窓を小さく、少なくした結果、家の中が暗くて閉塞感がある、という話も聞きます。
数値の上では高性能な家でも、住んでいて気持ちのいい家とは限りません。
冷暖房と換気の計画
断熱と気密の性能が高くても、冷暖房の機器の選び方や、配置の仕方が合っていなければ、家の中に温度のむらができます。
2階は暑いのに1階は寒い、トイレや脱衣所だけ寒い、ということもあります。
換気も同じです。
機械の性能だけでなく、空気がどこから入ってどこに抜けるのかを、間取りと合わせて計画する必要があります。
施工の品質
設計の数値がどれだけよくても、現場で正しく施工されていなければ、その性能は出ません。
断熱材のすき間、防湿の処理の甘さ、窓まわりの気密処理の不備。
こうしたことは、図面の上の数値には表れません。
施工の品質は、数値を競うより、どんな職人さんが、どんな手順で、どれくらい丁寧に施工しているかを見たほうが分かります。
地域の気候と敷地の条件
新潟の冬は、雪が多く、晴れる日が少ない気候です。
冬の日差しを取り込むことを前提にした設計の考え方が、そのまま当てはまらないこともあります。
雪の重さ、湿気、結露、夏の蒸し暑さ。
こうした地域の気候への対応は、全国一律の数値の比較だけでは見えてきません。
敷地の向きや、周りの建物の影、道路との関係によっても、最適な設計は変わります。
長く住むためのメンテナンス
家は建てて終わりではありません。
外壁や屋根、設備は、年月とともに傷み、手入れが必要になります。
性能を上げるために特殊な部材を使った結果、修理や交換のときに部品が手に入りにくくなる、ということもあります。
建てたときの数値だけでなく、10年後、20年後、30年後も、その性能を保てるかどうかも考えておく必要があります。

数値にこだわりすぎると、何が起きるのか
数値ばかりに目を向けた家づくりで、よく起きることを書いておきます。
特定の方のことではなく、業界全体で見聞きすることです。
予算のバランスが崩れる
性能の数値をよくしようとすると、断熱材を厚くする、窓をより高性能なものにする、設備を高いものにする、と費用がかさんでいきます。
ある程度までは、性能を上げることで、光熱費や快適さという形で返ってきます。
でも、性能を上げるほど、かけた費用に対して得られる効果は小さくなっていきます。
数値を最後の少しまで詰めるために大きな費用をかけた結果、間取りや内装、外構、家具に回す予算がなくなってしまう。
暮らしてみたら、数値の差よりも、収納が足りないことや、キッチンが使いにくいことのほうが気になる、ということもあります。
決められなくなる
ネットやSNSには、性能についての情報があふれています。
数値を比べ始めると、きりがありません。
A社はUA値がいくつ、B社はC値がいくつ、C社は耐震等級3が標準。
比べれば比べるほど、どこにも決められなくなってしまう方がいます。
家づくりには、決めなければいけないことがたくさんあります。
数値の比較に時間を使いすぎて、間取りや仕様を考える時間が足りなくなると、あとで「もっと考えておけばよかった」という後悔につながります。
住んでからの暮らしが置き去りになる
「この家で、家族とどんな暮らしをしたいのか」。
家づくりで一番大事なのは、本当はここだと思っています。
朝起きたときに、どこで日の光を浴びたいか。
子どもがどこで宿題をするのか。
休日はどう過ごしたいのか。
年を取ったときに、どの部屋で暮らすのか。
数値の話に夢中になっていると、こうした話をする時間がなくなってしまいます。
完成した家は、数値は立派なのに、家族の暮らしに合っていない、ということになりかねません。
我が家は高性能だと思いながらずっと住んでいるだけで、満足いくのだろうか?幸せになるのだろうか?
と疑問に思います。
つくり手との信頼関係が築きにくくなる
家づくりは、施主とつくり手が一緒に進めるものです。
数値の一つひとつを他社と比べて、根拠を求め続ける打ち合わせになると、お互いに疲れてしまいます。
つくり手が、数値を出すことばかりに気を取られて、本当に大事な提案ができなくなることもあります。
数値の確認はもちろん大事です。
でも、それ以上に、「この会社なら、私たちの暮らしのことを一緒に考えてくれる」と思える関係があるかどうかが、家づくりの満足度を大きく左右すると思っています。

数値と、上手に付き合うために
では、性能の数値とどう付き合えばいいのか。
私たちがお客様にお伝えしていることを書いておきます。
「目標の水準」を決めたら、その先は暮らしの話をする
まず、地域の気候や予算、家族の暮らし方から、性能の目標の水準を決めます。
新潟であれば、断熱等級6程度をひとつの目安にしながら、予算とのバランスで考える、といった決め方です。
目標の水準を決めたら、そこから先は、数値を少しでもよくすることより、間取りや窓の配置、冷暖房と換気の計画、収納、家事動線など、暮らしの話に時間を使ってください。
数値の「確かさ」を確認する
UA値は計算の結果、C値は実測の結果です。
それぞれ、どうやって出した数値なのかを確認してください。
C値であれば、全棟で測定しているか、測定の結果を書面でもらえるか。
UA値であれば、実際の設計にもとづいて計算しているか。
数値の大きさより、数値がきちんと確かめられているかのほうが大事です。
体感を確かめる
数値の比較よりも、実際にその会社が建てた家に行って、体感してみることをおすすめします。
完成見学会やOB施主のお宅の見学など、冬の寒い日や夏の暑い日に、実際の家の中の空気を感じてみてください。
数字では分からないことが、たくさん分かるはずです。
長い目で見る
建てたときの性能だけでなく、その性能を何十年保てるか、メンテナンスはしやすいか、修理のときに困らないか。(個人的に私はココを重視しています)
家族の暮らしが変わったときに、間取りを変えやすいか。
こうしたことも、性能と同じくらい大事な判断材料です。

清新ハウスの考え方
清新ハウスでは、性能を大事にしながら、性能だけで家づくりを考えないことを心がけています。
断熱、気密、耐震、換気。
どれも、新潟の気候の中で家族が快適に、安心して暮らすために欠かせないものです。
でも、それはあくまで土台です。
その土台の上に、家族一人ひとりの暮らしがあります。
数値についてのご質問には、何でもお答えします。
どうやって計算したのか、どう施工するのか、実際に住んだらどうなのか。
分からないことは分からないとお伝えします。
そのうえで、打ち合わせの多くの時間は、お客様の暮らしの話に使いたいと思っています。
どんな暮らしをしたいのか。
何を大事にしたいのか。
何に困っているのか。
そこから、家族に合った性能の水準と、家の形を一緒に考えていきます。
性能のことでも、間取りのことでも、予算のことでも、気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
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