
築100年の古民家を解体すると、何十年も家を支えてきた柱や梁の多くは、産業廃棄物として処分されてしまいます。
乾燥しきって狂いも少ない、今ではまず手に入らない太さの国産材が、です。
この仕事を長くやっていますが、解体現場でそういう材が積まれているのを見るたびに、正直いまでも「もったいないな」と思ってしまいます。
私は、一般社団法人全国古民家再生協会では直前理事長を、一般社団法人全国空き家アドバイザー協議会では理事長も務めています。
10月23日から25日まで、福島県郡山市で全国古民家再生協会の「第14回全国大会 福島大会」が開かれ、3日間参加してきました。
今日はその感想と、大会初日に全国会議が開かれた「循環型建築ネットワーク」の話を、新潟で家づくりをしている立場から書いてみます。
ちょっと長くなりますが、古い家や実家のことで悩んでいる方には、何かしら引っかかるところがあると思います。
郡山での3日間、全国大会はこんな内容でした
新潟から郡山までは磐越道で一本なので、感覚としては「お隣の県にちょっと行ってくる」くらいです。
それでも会場の郡山ビューホテルアネックスに着いて、入口に立っている「歓迎 第14回全国大会 福島大会」の大きな看板を見ると、やっぱり気持ちが引き締まりました。
今回の大会テーマは「環(めぐる)〜つながりの輪 未来へ〜」です。
東日本大震災から15年、今の福島県になってから150年という節目の年で、この年に福島で全国大会をやること自体に意味があったんだと思います。
初日の23日は郡山市公会堂で、循環型建築ネットワークの加盟企業だけが参加する全国会議と研修会がありました。
夜は交流会と前夜祭です。
2日目の24日がメインの日で、午前は省庁レク、お昼過ぎに通常総会、午後から全国大会の式典、夜は大懇親会という一日がかりのスケジュールでした。
基調講演はパンツェッタ・ジローラモさん。
テレビや雑誌のイメージが強い方ですが、実は建築一家の出身で、ナポリで歴史的建造物の修復に関わっていたそうです。
今は会津若松で古民家の再生プロジェクトを進めていて、会津美里町の観光大使もされています。
イタリアの人が会津の古民家を直している、というのは、考えてみるとなかなか面白い構図ですよね。
スペシャルステージではスパリゾートハワイアンズのダンシングチームが踊ってくれて、会場が一気に華やかになりました。
最終日の25日は、空き家活用株式会社の和田貴充さんを講師に迎えた若手経営者勉強会と、エクスカーションです。
エクスカーションは鶴ヶ城やさざえ堂を回る会津コースと、中間貯蔵施設や請戸小学校を訪ねる浜通りコースの2つ。
浜通りコースは、福島で15年間何が起きてきたのかを自分の目で見ることになるので、建築に関わる人間としては一度行っておくべき場所だと感じます。
直前理事長として客席から見た大会
式典の会場に入ってまず驚いたのは、人の多さです。
長机がずらっと並んで、各支部の名前が書かれた札が置かれていて、北海道から九州まで本当に全国から会員が集まっていました。
主管の福島第一支部の皆さんは、背中に「古民家」と大きく染め抜かれた紺の法被姿で会場中を動き回っていて、その姿を見ているだけで「ああ、全国大会に来たな」という気持ちになります。

村田理事長の挨拶に続いて、ご来賓の方々からもご挨拶をいただきました。
少し前までは自分がああいう場に立つ側だったので、今回は客席からゆっくり見られて、ちょっと不思議な感覚でした。
今回あらためて感じたのは、古民家や空き家の問題が、行政や国の政策の場でちゃんと議題として扱われるようになってきたことです。
午前の省庁レクもそうですが、十数年前は「古民家」という言葉自体がまだ一般的ではなかったと聞いています。
それが今は国や自治体と同じテーブルで話ができるようになった。
地道に活動を続けてきた全国の会員の積み重ねがあってのことで、私自身も理事長時代にその一部に関われたのはありがたいことだったなと、少ししみじみしました。
夜の大懇親会は立食形式で、船盛りや福島の料理がずらりと並び、あちこちで名刺交換や近況報告の輪ができていました。
普段はオンラインでしか顔を合わせない他県の支部の方と直接話せるのは、全国大会ならではです。
茅葺き職人さんがなかなか確保できない話、行政との連携の進め方、空き家相談の件数が増えている話。
どこの地域も抱えている悩みが驚くほど似ていて、横のつながりはやっぱり必要だなと思いました。
懇親会の最後には、福島第一支部の皆さんが壇上に並んでお礼のご挨拶をされました。
これだけの規模の大会を準備するのは、相当な時間と労力がかかったはずです。
福島第一支部の皆さん、本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。
大会旗は福島から熊本へ
大懇親会の一番の盛り上がりは、大会旗の引き継ぎでした。
紺地に「全国大会」と書かれた大会旗には、これまでの大会のリボンが結ばれていて、「第13回 兵庫大会 2025」に続いて「第14回 福島大会 2026」のリボンが加わりました。
旗には「未来の子どもたちのために」という言葉も入っています。
次回の第15回全国大会は熊本県での開催が決まり、福島から熊本へバトンが渡されました。
熊本も震災を経験している土地です。
15年かけて復興の歩みを続けてきた福島から、熊本へ。
大会テーマの「環(めぐる)」がそのまま形になったような場面で、見ていて少しぐっときました。
来年は新潟からもできるだけ多くのメンバーで熊本に行きたいと思っています。
循環型建築ネットワークってなに?
ここからは、大会初日に全国会議が開かれた「循環型建築ネットワーク」について説明させてください。
一般の方にはあまり馴染みのない言葉だと思います。
循環型建築ネットワークは、建築・不動産関係の企業のネットワークです。
工務店、不動産会社、設計事務所、材木店など、いろいろな業種の会社が全国から加盟していて、古民家の再生や活用、伝統の技術を活かした「新民家」の推進、住まいについての教育(住教育)の普及などに取り組んでいます。
省庁や自治体、古民家再生に関わる議員連盟とも連携していて、一つの会社ではとても手が届かない規模の取り組みを、ネットワーク全体で進めているのが特徴です。

掲げている理念は「未来の子どもたちの為に持続可能な循環型建築社会の実現」。
大会旗に入っていた言葉と同じですね。
循環型建築というと難しく聞こえるかもしれませんが、言っていることはシンプルで、家を建てては壊し、壊しては建てるというやり方をやめて、今ある建物や材料を長く使い、次の世代に回していこうという考え方です。
その代表が「古材」です。古材は古い木造の建物を解体したときに出てくる、再利用できる木材のこと。
全国古民家再生協会では、築50年以上の伝統構法や在来工法の建物に使われていた国産材を古材と定義しています。
冒頭にも書きましたが、何十年、百年以上も家を支えてきた柱や梁は、十分に乾燥していて狂いが少なく、強度もしっかりしているものが多いんです。
これを燃やしてしまえば廃棄物ですが、古材として次の家や店舗に使えば、廃棄物も減りますし、新しく木を伐る量や、輸入材を運ぶためのエネルギーも減らせます。
最近は、大手の不動産会社が協会と組んで、古民家の古材を構造材に使った新築注文住宅のプランを始めた例もあります。
古いものをそのまま残すだけじゃなくて、新しい家づくりの中に古材を組み込んでいく。
こういう仕組みを全国の加盟企業で支えているのが循環型建築ネットワークです。
雪国・新潟の家でこそ考えたいこと
新潟の古民家を見て回っていると、毎回思うことがあります。
雪の多い地域の古民家は、屋根に積もる雪の重さに耐えるために、小屋組が本当に豪快に組まれているんです。
太い梁が何本も渡されていて、初めて見た方はたいてい声を上げます。
新潟の冬を何十年、百年以上と越えてきた材なので、強さは折り紙付きです。
でも、そういう家でも住む人がいなくなって空き家になり、そのまま解体されてしまうケースが新潟でも少なくありません。
はっきり言いますが、解体すること自体が悪いわけではないんです。
建物の状態や立地、ご家族の事情によっては、解体が一番いい選択になることもあります。
ただ、何も見ないまま重機を入れてしまうのは、ちょっと待ってほしいと思っています。
解体の前に一度、建物の状態と古材としての価値を見てもらう。
それだけで、残せるものや次に活かせるものはずいぶん変わります。
たとえば梁を一本だけ抜いて、新しく建てる家のリビングの見せ梁にする、という使い方もできます。
おじいちゃんの代の家の梁が、孫の家の天井にかかっている。
こういう話は、実際にやってみるとお施主さんがすごく喜ばれます。

もう一つ、新潟は湿気が多くて寒暖差も大きい土地なので、古民家を再生するにしても古材を使うにしても、断熱や結露対策、床下の状態の確認は欠かせません。
古いものを活かすことと、今の暮らしに合った性能を確保することは、両方やらないと住める家にはならないので、そこはいつも気をつけているところです。
空き家の相談現場から見えること
全国空き家アドバイザー協議会の新潟支部は、新潟市から「空家等管理活用支援法人」に指定されています。
そのおかげもあって、ここ最近、実家の空き家についての相談は本当に増えました。
多いのは、「親が施設に入って実家が空いたけど、どうしたらいいか分からない」「相続したけど遠方に住んでいて管理できない」「売れるのか、貸せるのか、壊すしかないのか判断がつかない」といった相談です。
相続登記が義務化されたこともあって、以前より早めに動き出す方が増えている印象もあります。
相談を受けていて思うのは、早く相談してくれた家ほど選択肢が多いということです。
屋根や外壁の傷みが進んで雨漏りが始まると、再生や活用のハードルが一気に上がります。
雪国の空き家は、冬を一つ越すごとに傷みが進むこともあるので、「いずれ考えよう」と思っているなら、雪が降る前の今くらいの時期に一度動いておくのがおすすめです。
11月2日には新潟で「空き家課題トータルコンサルタント」の講習試験、11月15日には持ち家じまいのセミナーも予定しています。
実家のことが気になっている方は、のぞいてみてください。
古い家のこと、まずは一度相談してください
今回の全国大会では、全国の仲間と話をしながら、古民家や空き家の問題はもう一地域だけの話じゃないんだなと、あらためて感じました。
新潟でやっていることも、熊本や福島でやっていることも、根っこは同じです。
清新ハウスでは、古民家や空き家の調査、古材の活用、再生リフォーム、新築への古材の取り入れ、売却や活用の相談まで、まとめて受けています。
「うちの実家、壊すしかないのかな」と思っている方、解体の見積もりを取る前に一度ご相談ください。
現地を見て、残せるものがあるかどうか、正直にお伝えします。
来年の熊本大会も今から楽しみにしています。
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