
新潟の古い家を訪ねると、立派な庭に出会うことがよくあります。
枝ぶりのいい松、苔むした石灯籠、手水鉢、飛び石、池の跡。春にはツツジやサツキが咲き、秋には紅葉が色づく。
親や祖父母が何十年もかけて手を入れてきた庭です。
ところが、空き家の相談で現地に伺うと、その庭が見る影もなくなっていることが少なくありません。
松は枝が伸び放題で形が崩れ、ツツジは隣の木と絡み合い、足元は雑草に覆われて飛び石も見えない。
伸びた枝が隣の家や道路にはみ出している。
秋になれば落ち葉が隣の敷地に積もり、夏には虫が出る。
「親が元気だった頃は毎年植木屋さんを呼んでいたけれど、今はとても手が回らない」「もう全部切ってしまおうかと思っている」。
そんな声もよく聞きます。
確かに、庭の手入れは手間も費用もかかります。
でも、何十年もかけて育った庭木や、庭石、灯籠は、一度なくしてしまうと、もう取り戻せません。
今日は、荒れてしまった実家の庭を、全部なくしてしまうのではなく、伝統の庭の良さを活かしながら、今の暮らしに合った手のかからない庭に生まれ変わらせる「庭園再生」についてお話しします。
庭が荒れた空き家で起きること
まず、庭を放っておくとどうなるのかを整理しておきます。
近所への迷惑
伸びた枝が隣の家の屋根や雨どいにかかる、落ち葉が隣の敷地や側溝に積もる、雑草の種が飛んでいく、毛虫や蚊が増える。
庭が荒れた空き家は、近所の方にとって悩みの種になりがちです。
2023年4月に施行された民法の改正で、隣の家の木の枝が境界を越えて伸びてきた場合、木の持ち主に切るよう求めても相当の期間内に切ってもらえないときや、持ち主が分からないとき、急ぐ事情があるときには、隣の人が自分で枝を切れるようになりました。
空き家の持ち主にとっては、知らないうちに自分の木が切られてしまうこともある、ということです。
そうなる前に、自分で手入れをしておくほうが、ご近所との関係も保てます。
防犯と景観
草木が生い茂った空き家は、外から中の様子が見えにくくなり、不審者が入り込んだり、ごみを捨てられたりしやすくなります。
地域の景観も損なわれます。
管理不全空家のリスク
2023年の空家等対策特別措置法の改正でできた「管理不全空家」の判断では、建物の状態だけでなく、立木や雑草の管理状況も見られます。
庭木が荒れて周囲に悪影響を与えている状態が続けば、市町村から指導や勧告を受けるきっかけになることもあります。
売るときの印象
空き家を売りに出すとき、買い手が最初に目にするのは、建物の外観と庭です。
庭が荒れていると、それだけで「管理されていなかった家」という印象を与え、建物の中を見る前から評価が下がってしまいます。
逆に、庭がきれいに整っている家は、それだけで印象がずいぶん違います。
古い家でも、手入れされた庭があると「大切に住まれてきた家」だと感じてもらえます。
「全部切る」前に考えてほしいこと
庭の手入れが大変だからといって、すべての木を切り、庭石を撤去して、砂利敷きや駐車場にしてしまう、という選択をされる方もいます。
それも一つの方法ですし、状況によっては正しい判断です。
ただ、その前に一度、立ち止まって考えてみてほしいと思います。
何十年もかけて育った松やモミジは、新しく植えても同じ姿にはなりません。
庭石や石灯籠、手水鉢も、今では手に入りにくいものがあります。
そうした庭の要素は、古民家や和風の住宅を好む人にとっては、大きな魅力になります。
最近は、古い日本家屋をリノベーションして暮らしたい、古民家で民泊や宿を開きたい、という方が増えています。
そういう方にとって、手入れされた和風の庭は、建物と同じくらい価値のあるものです。
全部をなくすのではなく、残すべきものを見極めて、手入れのしやすい形に整え直す。
それが庭園再生の考え方です。

庭園再生でできること
庭園再生では、主に次のような手入れや工事を組み合わせます。
剪定と間引き
まず、伸び放題になった庭木を剪定して、もとの形を取り戻します。
荒れた庭は、木の数が多すぎることがほとんどです。
昔は少しずつ植え足していった木が、年月とともに大きくなって、お互いの枝がぶつかり合っています。
日当たりや風通しが悪くなり、病気や虫の原因にもなります。
そこで、残す木と、間引く木を決めます。
庭の主役になっている松やモミジ、形のいい木は残して手入れし、勢いが強すぎる木や、ほかの木の邪魔になっている木、枯れかけている木は思い切って間引きます。
木の数を減らすだけで、庭は見違えるほど明るくなり、毎年の手入れも楽になります。
下草の整理と地面の仕上げ
雑草に覆われた地面は、草を取ったうえで、手入れのしやすい仕上げに変えます。
苔が育つ場所は苔を活かし、日当たりのいい場所は防草シートを敷いて砂利で仕上げる、といった方法があります。
昔の庭に使われていた飛び石や延べ段が埋もれていれば、掘り起こしてもう一度見えるようにします。
庭石・灯籠・手水鉢の手入れ
庭石や石灯籠、手水鉢は、苔や汚れを落とし、傾いているものは据え直します。
崩れかけた灯籠は、地震のときに倒れると危ないので、しっかり固定し直すか、場所を移すことも考えます。
ライトアップ
庭園再生でおすすめしたいのが、夜のライトアップです。
松やモミジの根元から照らしたり、石灯籠に明かりを入れたりするだけで、夜の庭はまったく違う表情を見せます。
昼間の庭とはまた違う、落ち着いた美しさがあります。
今は、消費電力の少ないLEDの照明が主流なので、電気代もそれほどかかりません。
タイマーをつけておけば、毎日決まった時間に点灯させることもできます。
空き家の場合は、夜に明かりがつくことで、人の気配が感じられ、防犯にも役立ちます。
ウッドデッキ・テラスの増設
縁側や居間の前に、ウッドデッキやテラスを設けると、庭は「眺めるだけの場所」から「過ごす場所」に変わります。
天気のいい日は、デッキに椅子を出して、お茶を飲みながら庭を眺める。
家族や友人と集まって、庭を見ながら食事をする。
室内と庭がつながって、家全体の広がりが感じられるようになります。
いわば、庭を家の一部として使う「アウターリビング」です。

観賞型の庭と、アウターリビング型の庭
庭園再生の方向性は、大きく分けると二つあります。
観賞型の庭
伝統的な和風庭園の美しさを、できるだけそのまま活かす方向性です。
主役の木と庭石を中心に構成を整え、座敷や縁側から眺めたときに一番美しく見えるように仕上げます。
ライトアップで夜の庭も楽しめるようにします。
古民家や和風の住宅として売りたい場合、民泊や宿として活用したい場合に向いています。
宿泊する方にとって、座敷から眺める手入れされた日本庭園は、それだけで泊まる理由になることがあります。
アウターリビング型の庭
和風の庭の要素を残しながら、今の暮らしで使いやすい庭にする方向性です。
木の数を減らして開放感を出し、ウッドデッキやテラスを設けて、庭で過ごせるようにします。
芝生や砂利の広場をつくって、子どもが遊んだり、バーベキューをしたりできるスペースを確保することもあります。
若い世代の家族が住むためにリノベーションする場合や、中古住宅として売るときに幅広い層に興味を持ってもらいたい場合に向いています。
どちらがいいかは、その家をこれからどう使うのか、誰に住んでもらいたいのかによって変わります。
建物のリノベーションと一緒に考えると、家全体としてのまとまりも出てきます。
新潟の庭ならではの工夫
新潟で庭を整えるときに欠かせないのが、雪への備えです。
雪吊りと冬囲い
新潟の冬は、雪の重さで庭木の枝が折れたり、木そのものが倒れたりすることがあります。
松などの大事な木には、雪吊りをして枝を支えます。
低木は、竹や縄で冬囲いをして守ります。
雪吊りや冬囲いは、手間はかかりますが、冬の庭の風物詩でもあります。
ライトアップと組み合わせると、雪の積もった庭に雪吊りの縄が浮かび上がる、とても美しい景色になります。
空き家の場合は、毎年の冬囲いを誰がやるのかも、あらかじめ決めておく必要があります。
手入れの手間を減らしたい場合は、雪で傷みやすい木を間引いて、冬囲いが必要な木の数を減らしておくのも一つの方法です。
剪定の時期
庭木の剪定は、木の種類によって適した時期が違います。
たとえば松は、春に新芽を摘む「みどり摘み」と、秋から冬にかけて古い葉を落とす手入れが基本です。
新潟では、雪が降る前の秋に剪定と冬囲いをまとめて行うことが多いです。
ウッドデッキの素材と構造
雪国のウッドデッキは、雪の重さに耐えられる構造にすることが大事です。
冬の間、デッキの上に雪が積もり続けることを考えて、柱や根太をしっかり組みます。
素材は、天然の木材なら腐りにくい樹種を選ぶか、防腐処理をしたものを使います。
手入れの手間を減らしたい場合は、樹脂製のデッキ材も選択肢になります。
屋根から雪が落ちてくる場所にデッキを設けると、落雪で壊れることがあるので、位置にも注意が必要です。
照明の防水と配線
ライトアップの照明は、雪や雨にさらされるので、屋外用の防水仕様のものを使います。
積雪で照明が埋もれないように、設置する高さや場所も考えます。

庭園再生の事例
最後に、私たちが関わった庭園再生の流れを、一つの例として紹介します。
複数のご相談をもとに、個人が特定されないようにまとめた例です。
相談の内容
新潟市の郊外にある、築50年ほどの和風住宅です。
お父さんが亡くなって数年、空き家になっていました。
県外に住む息子さんが、実家を売るか、リノベーションして貸すか迷っている、というご相談でした。
庭は、お父さんが植木が好きで、松やモミジ、ツツジ、サツキ、カエデなどがたくさん植えられていました。
ただ、数年手入れをしていなかったため、松の枝は伸び放題、ツツジとサツキは絡み合って一つの塊のようになり、地面は雑草に覆われていました。
伸びた枝が隣の家にかかっていて、隣の方から何度か連絡があったそうです。
再生の内容
建物の状態を見ると、手を入れればまだ十分に住める家でした。
そこで、古い和風住宅の雰囲気を活かして、リノベーションして貸す方向で計画を進めることになりました。
庭は、座敷から見える主役の松とモミジ、石灯籠を残し、その周りを中心に整えることにしました。
まず、松とモミジを剪定して形を整えました。
絡み合っていたツツジとサツキは、形のいいものを残して半分ほどに間引きました。
隣の家にかかっていた木は、思い切って伐採しました。
地面は雑草を取り除き、防草シートを敷いて砂利を入れました。
雑草に埋もれていた飛び石を掘り起こして、もう一度庭を歩けるようにしました。
座敷の前の縁側に続けて、ウッドデッキを設けました。
デッキに座ると、ちょうど松と石灯籠が正面に見える位置です。
夜には、松の根元と石灯籠に照明を入れました。
結果
庭を整えたことで、家全体の印象が大きく変わりました。
暗く閉ざされていた家が、明るく開けた家に見えるようになりました。
隣の方からも、「きれいになってよかった」と声をかけていただいたそうです。
リノベーションのあと、入居の募集をしたところ、「庭が気に入った」という理由で借りたいという方が見つかりました。
息子さんは、「全部切ってしまおうかと思っていたけれど、残してよかった」とおっしゃっていました。
庭を整えるには費用がかかります。
でも、その費用は、家の価値を上げ、借り手や買い手を見つけやすくするための投資にもなります。

庭の手入れを、続けられる形にする
庭園再生で大事なのは、一度きれいにして終わりにしないことです。
空き家の場合、持ち主が遠くに住んでいると、毎年の手入れを自分でするのは難しいと思います。
だからこそ、庭を整え直すときに、手入れの手間がかからない庭にしておくことが大事です。
木の数を減らす。
成長の遅い木を中心にする。
雑草が生えにくい地面にする。
冬囲いが必要な木を減らす。
こうした工夫で、年に一、二回の手入れで美しさを保てる庭にできます。
そのうえで、定期的な剪定や草取りを、空き家の管理とあわせて任せられる先を決めておくと安心です。
清新ハウスでお手伝いできること
清新ハウスでは、新潟市を中心に、空き家のリノベーションや売却、管理のご相談を受けています。
私自身、全国古民家再生協会や新潟古民家再生協会の活動を通じて、古い日本家屋とその庭を次の世代につなぐことに関わってきました。
庭園再生では、庭師さんとも連携しながら、次のようなことをご提案しています。
- 庭の現状の確認と、残す木・間引く木の見極め
- 剪定、伐採、下草の整理、地面の仕上げ
- 庭石や灯籠、手水鉢の手入れと据え直し
- ライトアップの計画と設置
- 雪国に合ったウッドデッキやテラスの設計と施工
- 建物のリノベーションと一体になった庭の計画
- 雪吊りや冬囲い、定期的な手入れの手配
「実家の庭をどうしたらいいか分からない」「全部切る前に一度相談したい」という方は、お気軽にご相談ください。
庭の写真を送っていただければ、まずはそれを見てお返事します。
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