
先日、私が所有している空き家で、柿が盗まれました。
敷地の中にある柿の木の枝が切られていて、数十個の柿がなくなっていました。
熟れて落ちた実を誰かが拾っていった、という話ではありません。
枝ごと伐採されて、持っていかれていたんです。
警察に被害届を出して、捜査をお願いしました。
正直、柿の数十個くらいで、と思う方もいるかもしれません。
でも、私が被害届を出したのは、金額の問題ではありません。
空き家の敷地に勝手に入られて、木を切られて、実を持っていかれた。
これは、はっきり犯罪です。
秋になると、空き家の庭の柿や栗、ブドウなどを、近所の人や通りがかりの人が取っていく、という話をよく聞きます。
「誰も住んでないんだから」「どうせ落ちて腐るだけだから」「もったいないから」。
悪気がない方も多いと思います。
でも、空き家の柿を勝手に取ることは、窃盗罪にあたります。
敷地に入れば、住居侵入罪などに問われることもあります。
枝を切れば、器物損壊になることもあります。
今日は、自分の空き家の被害のことも書きながら、空き家の果物を勝手に取ることがどんな罪になるのか、空き家の持ち主は何をしておけばいいのかを書いてみます。
空き家の柿は、誰のものか
まず、根本のところからです。
空き家の庭の柿は、その土地と木の持ち主のものです。
人が住んでいなくても、持ち主がいなくなったわけではありません。
民法では、木になる実のような「天然果実」は、その実が木から離れたときに、それを受け取る権利のある人のものになる、と決まっています。
木の持ち主のものになる、ということです。

木から落ちた柿も同じです。地面に落ちたからといって、誰のものでもなくなるわけではありません。
「空き家だから、持ち主がいない」と思われがちですが、空き家にも必ず持ち主がいます。
相続した家族が遠くに住んでいて、なかなか来られないだけ、ということがほとんどです。
持ち主が誰か分からない空き家でも、持ち主がいないわけではありません。
どんな罪に問われるのか
空き家の柿を勝手に取った場合、取り方によって、いくつかの罪に問われる可能性があります。
なお、2025年6月から刑法が改正されて、それまでの「懲役」と「禁錮」が「拘禁刑」にまとめられています。
以下は今の法定刑で書いています。
窃盗罪(刑法235条)
他人の物を、持ち主に無断で自分のものにすれば、窃盗罪です。
法定刑は、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
柿1個でも、窃盗は窃盗です。金額が小さいからといって、罪にならないわけではありません。
実際、各地で、他人の畑や庭の果物、野菜を盗んだとして、窃盗の疑いで逮捕される事件は毎年のように起きています。
ブドウや桃、梨など、高値で売れる果物を大量に盗む事件もあります。
「捨ててあると思った」「誰も取らないから」という言い訳は、基本的に通りません。
木になっている実や、その敷地に落ちている実は、持ち主が管理しているものだと考えるのが普通だからです。
住居侵入罪・邸宅侵入罪(刑法130条)
刑法130条は、正当な理由がないのに、人の住居や、人が看守している邸宅、建造物などに入った場合を罰しています。
法定刑は、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金です。
空き家は、人が住んでいないので「住居」ではありませんが、「邸宅」にあたります。
邸宅というのは、住むための建物で、今は人が住んでいないもの、たとえば空き家や別荘などのことです。
「看守している」というのは、持ち主や管理する人が、鍵をかけたり、定期的に見回ったりして、事実上管理している状態のことです。
それから、建物の中に入らなくても、塀や柵、生け垣などで囲まれた敷地の中に入れば、この罪の対象になると考えられています。
建物の周りの、囲いのある庭も、建物と一体のものとして守られているからです。
塀で囲まれた空き家の庭に入って柿を取れば、窃盗罪とあわせて、邸宅侵入罪に問われる可能性がある、ということです。
軽犯罪法違反
敷地に塀や囲いがない場合でも、まったく罪にならないわけではありません。
軽犯罪法では、入ることを禁じられた場所や、他人の田畑に、正当な理由なく入った者を罰しています。
立入禁止の看板を出している空き家の敷地に入れば、これにあたることがあります。
罰則は、拘留か科料と軽いものですが、前科になることに変わりはありません。
器物損壊罪(刑法261条)
今回の私の空き家のように、枝を切って実を持っていった場合は、木を傷つけたことになります。
他人の物を壊したり、傷つけたりすれば、器物損壊罪です。
法定刑は、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金もしくは科料です。
木の枝を切るのも、他人の物を傷つけることにあたります。

器物損壊罪は、被害を受けた人が告訴しないと起訴されない「親告罪」です。
窃盗、邸宅侵入、器物損壊。
柿を取る、という一つの行為でも、やり方によっては、これだけの罪が重なることがあります。
「悪気はなかった」でも、罪になる
こういう話を書くと、「近所の人が、もったいないからと思って取っただけでしょう」と言われることがあります。
気持ちは分かります。
田舎では、昔から、近所の柿や栗を分けてもらう、という付き合いがありました。
持ち主が「どうぞ持っていって」と言ってくれていたなら、それは問題ありません。
でも、持ち主の許可がないのに取れば、それは窃盗です。
「昔はよかった」「みんなやっている」は、通りません。
それに、持ち主の側から見ると、誰が入ってきたのか分かりません。
近所の人なのか、知らない人なのか。
柿を取りに来ただけなのか、ほかの目的があるのか。
私の空き家の件も、誰がやったのかは分かっていません。
だから警察にお願いしています。
なぜ、私は被害届を出したのか
柿の数十個のことで、警察に届けるのは大げさだ、と思う方もいると思います。
それでも被害届を出したのには、理由があります。
空き家に勝手に入られることを、放っておけない
柿を取りに入る人がいる、ということは、その空き家の敷地に、知らない人が自由に出入りできている、ということです。
空き家に勝手に入られることを放っておくと、次は物置の物が盗まれるかもしれない。
建物の中に入られるかもしれない。
ごみを捨てられるかもしれない。
たばこの火の不始末で、火事になるかもしれない。
空き家の放火や不法投棄は、実際に各地で起きています。
「この家は誰も見ていない」と思われることが、一番危ないんです。
枝を切られたのは、木を傷つけられたということ
今回は、熟れた実を拾っていったのではなく、枝ごと切られていました。
柿の木は、切られた枝から病気が入ったり、翌年の実のつき方が悪くなったりすることがあります。
木そのものを傷つけられた、ということです。
空き家の持ち主として、示しておきたい
私は空き家の相談を受ける仕事をしていて、全国空き家アドバイザー協議会の新潟支部で事務局長もしています。
空き家の持ち主の方に「きちんと管理しましょう」とお話ししている立場です。

自分の空き家が被害を受けたときに、何もしないで済ませるのは違うと思いました。
空き家にも持ち主がいて、勝手に入れば犯罪になる。
そのことを、持ち主の側からはっきり示しておきたかったんです。
空き家の持ち主が、やっておきたいこと
被害を受けた立場から、空き家の持ち主の方にお伝えしておきたいことがあります。
1. 実がなる木は、早めに収穫するか、処分する
柿や栗などの実がなる木がある空き家は、実がなる前に、持ち主が収穫してしまうのが一番です。
遠くに住んでいて収穫に来られない場合は、近所の信頼できる方に「取って食べてください」とお願いしておくのも一つの方法です。
持ち主の許可があれば、窃盗にはなりません。
もう使うつもりがない木なら、思い切って伐採することも考えてください。
2. クマを呼ばないためにも、柿を放置しない
新潟では、柿の実を放っておくことには、もう一つ大きな問題があります。
クマです。
秋になると、熟れた柿を食べにクマが人里まで出てくることがあります。
誰も取らずに木に残った柿や、落ちて地面に転がった柿は、クマを呼び寄せる原因になります。
新潟県も、クマのえさになる、いらなくなった果実や農作物はきちんと処分するよう呼びかけています。
空き家の柿の木が、近所の人を危険にさらすこともある、ということです。
持ち主が収穫しないで放っておけば、地域にとって迷惑になります。
持ち主として、実がなる木の管理は大事な責任の一つだと思ってください。
3. 「立入禁止」をはっきり示す
敷地の入口に「私有地につき立入禁止」の看板を出しておくだけでも、勝手に入られることを減らせます。
看板があれば、「入ってはいけない場所だとは知らなかった」という言い訳もしにくくなります。
軽犯罪法の「入ることを禁じた場所」にあたることも、はっきりします。
4. 敷地を囲う、門を閉める
塀や柵、門がある空き家は、門を閉めて、鍵やチェーンをかけておいてください。
囲いがあることで、勝手に入りにくくなりますし、入った場合には邸宅侵入罪の対象になることもはっきりします。
5. 定期的に見回って、管理していることを見せる
空き家に一番効く防犯は、「この家は、誰かがちゃんと見ている」と思わせることです。
定期的に見回って、草を刈る、郵便物をたまらせない、窓や戸締まりを確認する。
こうした管理の跡が見えるだけで、勝手に入ろうとする人は減ります。

遠くに住んでいて見回りが難しい場合は、空き家の管理サービスを使う方法もあります。
6. 防犯カメラを付ける
人が入ってきそうな場所に、防犯カメラを付けておくのも効果があります。
電源のない空き家でも、電池式やソーラー式のカメラがあります。
カメラがあるだけで、入ろうとする人をためらわせることができますし、何かあったときに警察に相談する材料にもなります。
7. 被害にあったら、警察に相談する
実際に被害にあったら、我慢しないで警察に相談してください。
被害届を出すときは、次のようなものがあると話が早いです。
- 被害の状況が分かる写真(切られた枝、なくなった実のあった場所など)
- 被害に気づいた日時と、その前に最後に確認した日時
- 敷地や建物の持ち主であることが分かるもの(登記事項証明書や固定資産税の通知書など)
- 防犯カメラの映像があれば、その映像
被害の時期がはっきりしないことも多いので、普段から見回ったときに写真を撮っておくと、あとで役に立ちます。
近所の空き家の柿が気になったら
逆に、近所の空き家の柿の木が気になっている方へ。
実が熟れて落ちて、道路が汚れている。
クマが来ないか心配。
もったいないから取ってあげたい。
こういうときは、勝手に取らないで、持ち主に連絡してください。
持ち主が分からないときは、町内会の役員さんや、市町村の空き家の担当窓口に相談する方法があります。
それから、2023年4月から民法が改正されて、隣の土地から自分の土地に枝が伸びてきている場合、持ち主に切るよう頼んでも切ってもらえないときなどは、自分で枝を切れるようになりました。
ただ、これは越境してきた枝を切ることができる、というルールで、隣の空き家の敷地に入って柿を取っていい、ということではありません。
切った枝になっていた実の扱いも、勝手に自分のものにしていいとは言い切れないので、まずは持ち主に相談するのが安心です。
空き家にも、持ち主がいる
空き家の柿を取った人に、悪気がなかったのかもしれません。
もしかしたら、「誰も住んでいない家の柿なんて、誰も気にしない」と思っていたのかもしれません。
でも、持ち主は気にしています。
少なくとも私は、枝が切られた柿の木を見て、とても悲しい気持ちになりました。

空き家は、持ち主にとっては、親が暮らした家だったり、自分が育った家だったりします。
住んでいなくても、思い入れのある大事な場所です。
空き家の持ち主の方は、勝手に入られない工夫と、実がなる木の管理を。
近所の方は、空き家にも持ち主がいることを、少しだけ思い出していただけるとうれしいです。
清新ハウスでお手伝いできること
清新ハウスでは、新潟市を中心に、空き家の管理や活用のご相談を受けています。
- 空き家の定期的な見回り、草刈り、庭木の剪定・伐採
- 立入禁止の看板、門や柵の補修、防犯カメラの設置のご相談
- 実がなる木の収穫や伐採のご相談
- 空き家を売る、貸す、活用するといった今後の方向性のご相談
遠方にお住まいで、なかなか空き家を見に来られない方も、お気軽にご相談ください。
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