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今年は、シロアリの相談がとても多い年でした。
春先の羽アリの季節から夏の終わりまで、「床がふかふかする」「玄関の柱の下のほうがぼろぼろになっている」「お風呂場の入口の木枠を押したらへこんだ」という電話が続きました。
空き家の現地調査で床下をのぞいたら、土台が広い範囲でシロアリに食べられていた、というケースもいくつもありました。
新潟は、シロアリが少ない地域だと思われがちです。
確かに、暖かい地域で被害の大きいイエシロアリはほとんど見られません。
でも、ヤマトシロアリは新潟にも普通にいて、湿った木材が大好物です。
雪国の家は、床下や浴室まわり、玄関まわりが湿りやすく、条件がそろうと、シロアリにとってはかなり住みやすい環境になります。
それに加えて、湿った木材は、シロアリがいなくても腐朽菌によって腐っていきます。
シロアリと腐れは、どちらも「木が湿った状態が続く」ことから始まる、親戚のような問題です。
今日は、家の構造を長くシロアリと腐れから守るための方法の一つとして、私たちが新築やリフォームで採用している「ホウ酸塩(ボレート)による木材保存処理」について書いてみます。
良いところだけでなく、気をつけるべきところも含めて、なるべく正直にお伝えします。
今年、シロアリの相談が多かった理由
今年なぜ相談が多かったのか、はっきりした理由を一つに決めることはできません。
ただ、現場を見ていて感じることはいくつかあります。
一つは、空き家や、住む人が少なくなった家が増えていることです。
人が住まなくなった家は、換気がされず、床下の湿気がこもりやすくなります。
雨漏りや水漏れに気づくのも遅れます。そうした家の床下は、シロアリにとっては格好の住みかになります。
もう一つは、築年数がたった家で、新築のときの防蟻処理の効果がとっくに切れているケースが多いことです。
後で詳しく書きますが、一般的な防蟻剤の効果は5年程度が目安とされています。
築20年、30年の家で、一度も再処理をしていない、という家は少なくありません。
それから、リフォームで床をはがしたり、浴室を入れ替えたりしたときに、初めて被害が見つかるケースも多かったです。
シロアリは木の内側から食べ進むので、表面からは被害が分かりにくいんです。
床がふかふかする、柱を叩くと軽い音がする、という段階になると、すでにかなり進んでいることがほとんどです。
防腐・防蟻処理とは何か
木造住宅では、土台や柱の下のほう、つまり地面に近い部分の木材を、シロアリや腐れから守るための処理をします。
住宅の性能を評価する基準でも、地面から1メートルくらいまでの木材には、防腐・防蟻の措置をとることが求められています。
この処理に使う薬剤には、大きく分けて二つの種類があります。
合成殺虫剤系の薬剤
現在、多くの住宅で使われているのが、ピレスロイド系やネオニコチノイド系などの合成殺虫成分を使った薬剤です。
木材に吹き付けたり、塗ったりして使います。
シロアリが触れるだけで効果があり、即効性が高いのが特徴です。
土壌に散布して、地面からシロアリが上がってくるのを防ぐ使い方もできます。
一方で、成分が時間とともに分解したり揮発したりするので、効果は5年程度が目安とされています。
それを過ぎたら、再処理が必要になります。保証の期間も、多くの場合5年に設定されています。
新築のときは家が空っぽなので、床下に薬剤を吹き付けるのは簡単です。
でも、住み始めてからの再処理は、床下の狭い空間にもぐって作業をすることになり、手間もかかりますし、点検口がない家ではそもそも作業できる範囲が限られます。
そして実際には、5年ごとに再処理をしている家は、それほど多くないのが現実だと思います。
ホウ酸塩系の薬剤
もう一つが、ホウ酸塩(ボレート)を使った薬剤です。
ホウ酸は、目薬やうがい薬にも使われていたことのある、自然界に存在する鉱物由来の成分です。
ホウ酸塩を水に溶かして木材に塗ったり吹き付けたりすると、木材の中にしみ込みます。
シロアリがその木材を食べると、体の中で栄養をうまく取り込めなくなって、やがて死んでしまいます。
腐朽菌に対しても、繁殖を抑える働きがあります。
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ホウ酸塩処理のメリット
揮発しないので、効果が長持ちする
ホウ酸塩の一番の特徴は、揮発しないことです。
合成殺虫剤系の薬剤は、空気中に少しずつ成分が出ていったり、分解したりすることで効果が落ちていきます。
ホウ酸塩は無機物なので、分解したり揮発したりしません。
雨などで水に濡れて溶け出さない限り、木材の中にとどまり続けます。
壁の中や床下など、雨がかからない場所であれば、効果が長く続くと考えられています。
メーカーによっては「半永久的」と表現しているところもあります。
5年ごとの再処理を前提にしなくていい、というのは、住まいの維持管理を考えるうえで大きな違いです。
室内の空気を汚しにくい
揮発しないということは、薬剤の成分が室内の空気に出ていきにくい、ということでもあります。
最近は、気密性の高い住宅や、床下の空気を室内に循環させる床下エアコンのような工法も増えています。
こうした住宅では、床下の空気と室内の空気がつながるので、床下に使う薬剤が揮発するかどうかは、気にしておきたいポイントです。
ホウ酸塩は、そういう住宅とも相性がいい処理方法です。
毒性が比較的低い
ホウ酸塩は、人やペットなどの哺乳類に対する急性の毒性が比較的低いとされています。
シロアリや腐朽菌に効いて、人への影響が小さい、というのがホウ酸塩の考え方です。
ただし、「まったく無害」というわけではありません。
ホウ酸も化学物質の一つで、大量に口に入れれば健康に影響が出ることがあり、水道水の水質基準などでも管理の対象になっています。
施工のときには、施工者が適切に扱うことが前提です。
とはいえ、住まいになってから壁の中や床下に塗られた状態で、住む人が口にするようなことはまずありません。
腐朽にも効く
ホウ酸塩は、シロアリだけでなく、木材を腐らせる腐朽菌の繁殖も抑えます。
新潟のように湿気の多い地域では、シロアリと同じくらい、腐れから家を守ることが大事です。
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ホウ酸塩処理の弱点と、気をつけるべきこと
良いことばかり書くと不公平なので、ホウ酸塩処理の弱点も書いておきます。
ここを理解したうえで使うことが、何より大事だと思っています。
水に溶けやすい
ホウ酸塩は水に溶けやすい性質を持っています。
だからこそ木材にしみ込むのですが、逆に言えば、処理した木材が雨に濡れたり、水がかかり続けたりすると、成分が溶け出してしまいます。
そのため、ホウ酸塩処理は、雨がかからず、地面に直接触れない場所の木材に使うのが基本です。
日本しろあり対策協会も、ホウ酸系の製剤は適用範囲が限られることを明示するよう求めています。
新築の場合は、屋根がかかって雨が入らない状態になってから処理をする、処理した木材に雨がかからないように養生する、といった施工の管理が欠かせません。
それから、雨漏りや水漏れが続いて木材が水に濡れ続ければ、処理した成分が流れてしまいます。
ホウ酸塩処理をしたから、雨漏りを放っておいていい、ということにはなりません。
土壌の処理には使えない
合成殺虫剤系の薬剤のように、地面に散布して土壌からシロアリを防ぐ使い方は、ホウ酸塩ではできません。
水に溶けやすいので、地下水などに流れ出てしまうおそれがあるからです。
触れただけでは効かない
ホウ酸塩は、シロアリが木材を「食べる」ことで効く薬剤です。
触れただけで死ぬ、という効き方ではありません。
シロアリは、処理された木材の表面に土で通り道(蟻道)を作って、その上を通り抜け、処理されていない木材まで到達することがあります。
処理していない木材や、家具、段ボールなどがあれば、そこが食べられてしまうこともあります。
このため、ホウ酸塩処理だけで建物全体を完全に守れるわけではありません。
日本しろあり対策協会も、この点からホウ酸製剤だけでは建物全体を守れないという見解を示しています。
だからこそ、組み合わせで考える
私たちがお伝えしているのは、ホウ酸塩処理は「万能の薬」ではなく、家を長持ちさせるための仕組みの一つだ、ということです。
シロアリと腐れから家を守るには、薬剤だけに頼らず、次のような対策を組み合わせることが大事です。
- 基礎と土台の間に通気のための部材を入れて、床下や土台が湿らないようにする
- 床下の湿気が逃げるように、換気や防湿の対策をとる
- 基礎の構造や、シロアリが入り込みにくい部材で、地面からの侵入経路を減らす
- 床下点検口を設けて、定期的に床下を点検できるようにする
- 浴室や台所など水まわりの水漏れを早めに見つけて直す
- 必要に応じて、土壌の処理やベイト工法(シロアリを誘い出して駆除する方法)を組み合わせる
ホウ酸塩処理で木材そのものを長く守りつつ、湿気を溜めない構造と、定期的な点検で、シロアリと腐れが入り込む余地を減らしていく。
この組み合わせが、家を永く守るための考え方です。
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新潟の家で、特に気をつけたい場所
新潟の家でシロアリや腐れの被害が出やすい場所を、現場の感覚で挙げておきます。
浴室まわり
昔ながらのタイル張りの浴室は、タイルの目地や、浴槽まわりのすき間から水が入り込んで、壁の中や床下の木材が湿り続けていることがあります。
浴室の入口の木枠や、脱衣所の床が傷んでいたら要注意です。
玄関まわり
玄関の土間と木材が接するところは、雪や雨で濡れた靴や傘の水分で湿りやすい場所です。
玄関の柱の下のほうや、上がり框の下が被害を受けやすいです。
北側の床下
日が当たらない北側の床下は、湿気がこもりやすく、カビやシロアリの被害が出やすいです。
雪で埋もれる外壁の下のほう
冬の間、雪に埋もれる外壁の下のほうは、長い期間湿った状態が続きます。
外壁の内側の土台や柱の根元が傷んでいることがあります。
増築部分のつなぎ目
後から増築した部分と、もとの建物のつなぎ目は、雨仕舞いが甘く、水が入り込みやすい場所です。
リフォームでも、ホウ酸塩処理はできる
ホウ酸塩処理は、新築だけでなく、リフォームでも行えます。
床をはがして床下を直すとき、浴室を入れ替えるとき、壁を開けて断熱改修をするとき。
こうした工事で構造の木材が見えるタイミングは、ホウ酸塩処理をするいい機会です。
木材が表に出ている状態なら、処理もしやすく、確実にしみ込ませることができます。
すでにシロアリの被害が出ている場合は、まず被害の範囲を確かめて、食べられて弱くなった木材を交換したり補強したりします。
そのうえで、残りの木材と新しい木材にホウ酸塩処理をします。
今いるシロアリの駆除が必要な場合は、駆除の方法もあわせて考えます。
住みながらの床下の処理は、床下にもぐって作業できる高さと点検口があるかどうかで、できる範囲が変わります。
まずは床下の状態を見てから、どの方法が合っているかを判断します。
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空き家や中古住宅を買う前にも
空き家や中古住宅を買ってリノベーションしようと考えている方は、購入の前に床下の状態を確認することをおすすめします。
シロアリの被害は、表からは見えにくいものです。
購入してから床をはがしたら土台がぼろぼろだった、ということになると、リノベーションの費用が大きく膨らみます。
購入前の住宅診断(インスペクション)で、床下にもぐって確認してもらうと安心です。
そのうえで、リノベーションのときにホウ酸塩処理をしておけば、その後の維持管理の負担を減らせます。
清新ハウスの考え方
清新ハウスでは、新築でもリフォームでも、「見えなくなる構造部分こそ大事にする」ことを心がけています。
壁や床が仕上がってしまえば、土台や柱は二度と目に触れません。
でも、家を何十年も支えるのは、まさにその見えない部分です。
シロアリや腐れで土台が傷めば、どれだけ内装がきれいでも、家の寿命は縮んでしまいます。
ホウ酸塩処理は、そうした見えない部分を長く守るための選択肢の一つです。
ただし、万能ではありません。
湿気を溜めない構造、点検しやすい設計、水まわりの早めの補修と組み合わせてこそ、効果を発揮します。
今年は本当に、シロアリの相談が多い一年でした。
「うちは大丈夫かな」と気になった方は、一度床下を見てみませんか。
床下点検口から状態を確認して、必要な対策を一緒に考えます。
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