
「親の家を相続したけど、自分たちが住む予定はないし、売りに出しても買い手がつかない。このまま維持していくしかないんでしょうか」
空き家のご相談で、一番多いのがこのお話です。
住宅街の中にある、築40年くらいの普通の一戸建て。
駅からは少し遠くて、建物も古い。
住むための家としては、なかなか買い手も借り手も見つからない。
でも、壊すにはお金がかかるし、壊せば土地の固定資産税が上がる。
結局、毎年の税金と、草刈りや雪の心配だけが続いていく。
そんな空き家の使い道として、最近ご相談が増えているのが、住宅を「屋内型のトランクルーム」や「バイク専用のガレージ」に変えて貸し出す方法です。
人が住む家としては需要がなくても、物を置く場所や、バイクを大事にしまっておく場所としてなら、借りたい人がいる。
住宅街の中にあることが、かえって便利になる。
長岡市でも、バイク用のコンテナやトランクルームが増えてきていて、こうした需要が新潟でも広がってきていると感じます。
今日は、空き家をトランクルームやバイクガレージに変える活用の方法と、その前に必ず確認しておきたい建築や法律の注意点、安定した収入にするための契約の仕組みを書いてみます。
なぜ、トランクルームやバイクガレージなのか
物をしまう場所が足りない
最近は、家の中に物をしまう場所が足りない、という方が増えています。
マンションやアパートには、大きな収納がないことが多いです。
季節ものの家電、冬用のタイヤ、アウトドアの道具、スキーやスノーボード、子どもの思い出の品。家の中に置いておくと狭くなるけど、捨てられない物を預けておく場所として、トランクルームを借りる人が増えています。
新潟は、冬用タイヤやスノーダンプ、除雪の道具など、季節によって使う物が多い地域です。
家の近くに、こうした物を置いておける場所がほしい、という声はよく聞きます。
バイクを、雨や雪からしっかり守りたい
バイクを持っている方にとって、置き場所は切実な問題です。
アパートやマンションの駐輪場は屋根がなかったり、盗難が心配だったりします。
大事にしているバイクを、雨や雪、紫外線にさらしたくない。
冬の間は乗れないので、雪の季節だけでも屋内にしまっておきたい。
こういう方が、屋根と壁、鍵のある専用のガレージを探しています。

長岡市内にも、バイク用のコンテナを貸し出している施設があって、月8,500円ほどで貸し出されている例があります。
屋外のコンテナでこの価格帯なので、空き家を使った屋内のガレージにも、十分に需要があると考えています。
住宅街にあることが、強みになる
住むための家として売れない理由の一つに、「住宅街の中にあって、特に便利な場所でもない」ということがあります。
でも、トランクルームやガレージを借りる人から見ると、自分の家の近くにあることが一番大事です。
住宅街の中の空き家は、近所に住む人にとって、歩いて行ける、自転車で行ける、車ですぐ行ける、ちょうどいい場所になります。
どんな形で使えるか
屋内型トランクルーム
空き家の部屋を、いくつかの区画に分けて、物を置くスペースとして貸し出す方法です。
和室や洋室を、パーテーションや棚で1畳から3畳くらいの区画に区切り、それぞれに鍵をつけて貸します。
屋内なので、屋外のコンテナと比べて、温度や湿気の変化が少なく、雨や雪の心配もありません。
バイク専用ガレージ
空き家の1階部分を、バイクを置けるガレージに変える方法です。
玄関や掃き出し窓を広げて、バイクを出し入れできる入口をつくります。
床は、バイクの重さに耐えられるように補強して、土間のコンクリートにすることもあります。
1台ずつ区画を分けて、それぞれに鍵をかけられるようにします。
バイク好きの方は、ガレージの中で整備や手入れをしたいという方も多いので、照明やコンセントがあると喜ばれます。
組み合わせる
1階をバイクガレージ、2階をトランクルーム、という組み合わせもできます。
バイクは重いので1階、軽い荷物は2階、という分け方です。
必ず確認しておきたい、建築と法律の注意点
ここが今日いちばんお伝えしたいところです。
空き家をトランクルームやガレージに変えるのは、ただ荷物を置いてもらうだけ、とはいきません。
1. 用途地域で、そもそもできない場所がある
土地には、都市計画で「用途地域」が決められていて、建てられる建物の種類が制限されています。
住宅街の多くは、住居系の用途地域に指定されています。
そのうち、第一種・第二種低層住居専用地域のような、閑静な住宅地を守るための地域では、倉庫や独立した車庫を建てることが、原則として認められていません。
空き家の使い方を倉庫や車庫に変えるということは、建築基準法の上では、建物の用途を変えることになります。
用途地域の制限にかからないかを、最初に確認する必要があります。

トランクルームが建築基準法の上でどの用途として扱われるか、バイク用のガレージが車庫として扱われるかなどは、計画の内容や市町村の判断によって変わることがあります。
ここは、自分だけで判断しないで、建築士や市町村の建築の窓口に相談してください。
なお、2023年の空家法の改正で、市町村が「空家等活用促進区域」を定めると、その区域の中では、空き家の活用のために用途の制限を緩める特例が使えるようになりました。
お住まいの市町村でこうした区域が定められているかも、確認してみる価値があります。
2. 用途変更の確認申請が必要か
建物の用途を変える場合、変えたあとの用途が建築基準法で決められた「特殊建築物」にあたり、その部分の床面積が200㎡を超えるときは、建築確認の申請が必要です。
倉庫や自動車車庫は、特殊建築物にあたります。
ただ、一般的な一戸建ての空き家は200㎡以下のことが多いので、確認の申請そのものはいらない場合がほとんどです。
ここで勘違いしやすいのが、「確認申請がいらない=何をしてもいい」ではない、ということです。
申請がいらなくても、変えたあとの用途として、建築基準法の決まりに合っている必要があります。
これは、建物の持ち主の責任です。
3. 床の強さと、建物の安全
バイクは、車種によっては200kgを超えます。それが何台も並ぶと、住宅の床では重さに耐えられないことがあります。
トランクルームも、人が住むとき以上に、本や家財など重い物が集まることがあります。
特に2階を使う場合は、床がどれくらいの重さに耐えられるかを確認して、必要なら補強します。
古い空き家の場合は、耐震性も確認しておきたいところです。
地震で建物が傷んで、預かっている物が壊れたり、取り出せなくなったりすれば、借りている人とのトラブルになります。
4. 消防と、ガソリンの扱い
バイクにはガソリンが入っています。
屋内に何台ものバイクを置く場合、火災への備えはとても大事です。
消火器の設置はもちろん、市町村の火災予防条例で決まりがある場合もあります。
計画の段階で、消防署に相談しておいてください。
トランクルームでも、ガソリンや灯油、スプレー缶など、燃えやすい物は預けられないように、契約で決めておく必要があります。
5. 倉庫業の登録が必要になる場合がある
もう一つ、法律の面で大事なのが、倉庫業法です。
お客様の荷物を「預かって保管する」形でサービスをすると、倉庫業にあたり、国土交通大臣の登録が必要になります。
登録には、倉庫の設備の基準を満たす必要があって、空き家ではまず難しいです。

一方で、物を預かるのではなく、「収納のためのスペースを貸す」形であれば、倉庫業にはあたらないとされています。
借りた人が自分で鍵を開けて、自分で荷物を出し入れし、貸す側は荷物の中身や管理には関わらない、という形です。
空き家のトランクルームやガレージは、この「スペースを貸す」形で運営するのが基本です。
6. 固定資産税が上がることがある
見落としがちなのが、税金です。
住宅が建っている土地は、固定資産税が軽くなる「住宅用地の特例」が受けられます。
でも、建物を住宅として使わなくなり、トランクルームやガレージにすると、この特例が受けられなくなることがあります。
そうなると、土地の固定資産税が数倍になることもあります。
収入の計画を立てるときは、この税金の変化も必ず入れておいてください。
市町村の税務の窓口に、事前に確認しておくと安心です。
安定した収入にするための、契約の仕組み
施設を貸す契約にする
トランクルームやガレージを貸すときの契約は、「建物の一部を貸す」というより、「施設を使ってもらう」という形の契約にするのが一般的です。
普通の住宅の賃貸借の契約だと、借地借家法で借りている人の権利が強く守られていて、貸す側から契約を終わらせるには、正当な理由が必要になります。
あとで空き家を売りたくなったり、建て替えたくなったりしたときに、すぐには出てもらえないこともあります。
施設を使ってもらう契約として、使える物や使い方の決まり、料金の支払いが遅れたときの対応、契約を終わらせるときの手続きを、契約書できちんと決めておきます。
どんな契約の形にするかで、法律上の扱いが変わることもあるので、契約書は専門家と相談して作ることをおすすめします。
契約書に入れておきたいのは、たとえば次のようなことです。
- 預けてはいけない物(燃えやすい物、生き物、食べ物、違法な物など)
- 荷物の破損や盗難があったときの責任の範囲
- 料金の支払いが遅れたときの対応と、契約の解除
- 契約が終わったあとに荷物が残っていた場合の扱い
- 出入りできる時間や、騒音などの決まり
運営会社に一括で貸す
自分で一区画ずつ借り手を探して、契約して、管理するのは大変です。
トランクルームの運営会社に、空き家を一括で貸して、運営を任せる方法もあります。
毎月決まった額の賃料が入るので、収入は安定します。
そのかわり、自分で運営するより、手元に入る金額は少なくなります。
仮の数字で考えてみる
分かりやすくするために、あくまで仮の数字で考えてみます。
1階にバイクを4台置けるガレージ、2階に1〜2畳くらいのトランクルームを8区画つくったとします。
バイクガレージを1台月1万円、トランクルームを1区画月4,000円で貸せたとすると、全部埋まった場合の売上は月7万2千円、年間で約86万円です。
実際には、全部の区画が常に埋まるわけではありません。
半分から7割くらい埋まっている、と考えておくのが現実的です。
そこから、固定資産税、電気代、保険、清掃や見回りの費用、募集の広告費などが出ていきます。

初期費用としては、入口の拡張、床の補強、区画の間仕切りや鍵、防犯カメラ、照明、湿気対策などで、建物の状態によっては数百万円かかることもあります。
大きく儲かる、というより、「維持するだけでお金が出ていく空き家を、税金や管理費をまかなえて、少し手元に残る建物に変える」くらいのイメージで考えていただくのがいいと思います。
運営で気をつけたいこと
防犯
人の大事な荷物やバイクを置く場所なので、防犯はとても大事です。
防犯カメラ、しっかりした鍵、暗くならないような照明。
スマートフォンで開け閉めできる電子錠を使えば、誰がいつ出入りしたかの記録も残せます。
湿気とカビ
新潟は湿気の多い地域です。空き家は、人が住んでいないと空気がこもって、カビが出やすくなります。
預けた荷物にカビが生えると、トラブルになります。
換気扇や除湿機を置いて、湿気の管理をしてください。
床下の湿気がひどい家は、先に床下の対策が必要なこともあります。
冬の雪
冬の間も、借りている人が出入りできるようにしておく必要があります。

特にバイクガレージは、入口の前に雪が積もると、出し入れができなくなります。
除雪をどうするか、屋根の雪が入口の前に落ちてこないか、計画の段階で考えておいてください。
近所への配慮
住宅街の中なので、近所の方への配慮も欠かせません。
バイクのエンジン音、夜遅くの出入り、車の路上駐車。こうしたことで近所から苦情が出ないように、利用できる時間や、エンジンをかける場所などのルールを決めておきます。始める前に、近所の方にひとこと説明しておくと、あとの関係がずっと楽になります。
清新ハウスでお手伝いできること
清新ハウスは、不動産、建築、空き家の管理をまとめてご相談いただける会社です。
私自身も建築士として、空き家の用途変更のご相談を受けています。
- 空き家の土地の用途地域や、用途変更ができるかどうかの確認
- 建物の状態、床の強さ、耐震性の確認
- 入口の拡張、床の補強、間仕切り、防犯設備などの改修
- 収入と費用、固定資産税の変化を含めた試算
- 運営会社への一括貸しや、ほかの活用方法との比較
- 売却や解体を含めた、空き家の今後の方向性のご相談
全国空き家アドバイザー協議会の理事長として、全国の空き家の活用事例にも触れてきました。
住むための家としては使い道がなくても、別の形でなら地域の役に立てる空き家はたくさんあります。
「この空き家、トランクルームにできるかな」「ガレージにしたらどれくらいになるかな」という段階でのご相談で大丈夫です。
まずは、その土地と建物で何ができるのかを一緒に確認しましょう。
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