
空き家の処分のご相談を受けて、まず最初にやるのが登記の確認です。
土地と建物の登記簿を取って、名義が誰になっているか、建物がちゃんと登記されているかを見ます。
ここで、思っていた以上によく出てくるのが「建物が登記されていない」というケースです。
土地は登記されている。
固定資産税も毎年払っている。
でも、法務局で建物の登記簿を取ろうとすると、該当するものがない。
ご家族にそれをお伝えすると、たいてい「えっ、そんなことあるんですか」という反応が返ってきます。
建物が登記されていないと、そのままでは売ることができません。
売る前に、建物を登記する手続きから始めることになります。
これには費用も時間もかかります。
さらに、敷地の中に納屋や車庫、物置、蔵といった附属の建物がいくつも建っていると、その扱い次第で費用がさらにふくらむことがあります。
今日は、空き家の処分の入口でつまずきやすい、この「未登記建物」と「附属建物」の話を、実際の相談の流れに沿って書いてみます。
未登記建物とは
建物を新しく建てたら、まず「表題登記」という登記をします。
建物の所在地、種類(居宅、物置、車庫など)、構造、床面積などを登記簿に載せる手続きです。
これで初めて、その建物が登記簿の上に存在することになります。
そのあとに、誰がその建物の持ち主なのかを示す「所有権保存登記」をします。
未登記建物というのは、この表題登記がされていない建物のことです。
登記簿の上には存在しない建物ということになります。
不動産登記法では、建物を新築した人や、表題登記がない建物を取得した人は、1か月以内に表題登記を申請しなければならないとされていて、怠った場合は10万円以下の過料という規定もあります。
ただ、実際には昔から、登記しないまま何十年も住み続けている家が少なくありません。

なぜ登記されていない建物がこんなに多いのか
「固定資産税を払っているんだから、登記もされていると思っていた」というのが、一番多い反応です。
ここがややこしいところなのですが、固定資産税は登記とは関係なくかかります。
市町村は、職員が現地を回ったり、航空写真を見たりして建物を把握していて、登記されていない建物にも課税しています。
だから、固定資産税の通知が毎年届いていても、登記されているとは限りません。
登記がされていない理由として多いのは、次のようなケースです。
住宅ローンを使わずに建てた家
銀行でお金を借りて家を建てる場合、銀行は建物に抵当権を設定するので、必ず登記をします。
逆に、自己資金で建てた家や、地元の大工さんに頼んで少しずつ建てた家は、登記をしないままになっていることがあります。
新潟の郊外や農村部の古い家では、こういうケースがけっこうあります。
あとから建てた増築部分や離れ
母屋は登記されているけれど、あとから増築した部分や、離れ、作業小屋は登記されていない、というパターンです。
登記簿の床面積と、実際の建物の大きさが全然違うこともあります。
建て替えたのに、登記がそのまま
古い家を取り壊して新しい家を建てたのに、古い家の登記が残ったまま、新しい家は登記されていない、ということもあります。
登記簿の上では昔の建物が今も建っていることになっていて、現地にはまったく別の建物がある状態です。
どれも、持ち主の方が意識しないまま何十年も過ぎているので、相続して空き家になって、売ろうとした段階で初めて分かることがほとんどです。
自分の家が登記されているか確認する方法
売ることを考え始めたら、まず次の方法で確認してみてください。
固定資産税の課税明細書を見る
毎年届く固定資産税の通知に、課税明細書がついています。
家屋の欄に「家屋番号」が書いてあれば登記されている建物、空欄になっていたり「未登記」と書いてあったりすれば、登記されていない可能性が高いです。
市町村で名寄帳を取る
名寄帳(なよせちょう)は、その人が市町村内に持っている不動産の一覧です。
登記されていない建物も含めて載っているので、敷地の中にいくつ建物があるか、そのうちどれが登記されているかを確認できます。
相続人であれば、戸籍などで相続関係を示して取得できます。
法務局で登記事項証明書を取る
建物の登記簿を取って、現地の建物と見比べます。
登記簿に載っている建物の数、種類、床面積が、実際に建っている建物と合っているかを確認します。
この三つを並べて見ると、「登記されている建物」「登記されていないけど課税されている建物」「もう取り壊したのに登記が残っている建物」がはっきりしてきます。

未登記のままだと、なぜ売れないのか
不動産を売るときは、買主に名義を移す「所有権移転登記」をします。
でも、建物が登記簿の上に存在しないので、名義を移しようがありません。
買主が住宅ローンを使う場合は、さらにはっきりしています。
銀行は建物に抵当権を設定できないと融資をしてくれないので、未登記の建物ではローンが通りません。
だから、建物を残して売る場合は、売主の側で先に表題登記と所有権保存登記を済ませておく必要があります。
相続した未登記建物の登記は、手間がかかる
自分で建てた家を登記するなら、建築確認の書類や工事の契約書、引き渡しの証明書などで「自分が建てた建物だ」ということを示せば、比較的スムーズに進みます。
ところが、亡くなった親が建てた古い家の場合、そういう書類が残っていないことがほとんどです。
書類がない場合は、固定資産税の評価証明書や納税証明書、火災保険の証券などを集めて、さらに「この建物は亡くなった父が建てたもので、相続人である私が取得しました」ということを相続人が申し立てる書面(上申書)を用意することになります。
このとき、ほかの相続人の同意や印鑑証明書が必要になるケースが多いです。
相続人が兄弟数人ならまだいいのですが、祖父の代から登記されていない家で、相続人が何代にもわたって増えていると、全員の同意を取るだけで何か月もかかります。
費用と期間の目安
木造の一般的な住宅1棟で、ざっくり次のような費用がかかります。
- 表題登記(土地家屋調査士):8万〜12万円程度。複雑な建物だと15万円くらいになることもあります
- 所有権保存登記(司法書士):3万〜7万円程度
- 登録免許税:固定資産税評価額の0.4%
合わせて10万〜15万円くらいが一つの目安です。
相続人が多くて戸籍を集めたり、関係者の調整をしたりする手間が増えると、20万円を超えることもあります。
期間は、書類がそろっていれば1〜2か月くらいですが、相続人の同意集めに時間がかかると、半年近くかかることもあります。
売却のスケジュールを考えるときは、この時間を最初から見込んでおいたほうがいいです。
買主が見つかってから「実は建物が登記されていませんでした」となると、引き渡しが遅れて話が流れてしまうことがあります。

敷地に附属建物が多いと、費用が一気にふくらむ
ここからが、今日もうひとつ伝えたかった話です。
新潟の郊外や農村部の空き家では、母屋のほかに、敷地の中にいくつも建物が建っていることがよくあります。
- 納屋、作業小屋
- 車庫、カーポート
- 物置
- 蔵(土蔵)
- 離れ
- 鶏小屋や、昔の家畜小屋
こうした附属建物が多いと、処分にかかる費用が大きく変わってきます。
登記する場合:1棟ずつ調べることになる
建物を残して売る場合、附属建物も登記の対象になります。
母屋と一緒に「附属建物」として登記するか、別の建物として登記するかは、使い方や位置関係によって決まります。
どちらにしても、土地家屋調査士が1棟ずつ現地で測って、図面を作ることになるので、棟数が増えれば報酬も上がります。
ただ、すべてが登記できるわけではありません。
登記の対象になる「建物」は、屋根と周りの壁があって外気と分断されていること、基礎などで土地にしっかり定着していること、居住や作業、物の保管などの用途に使えること、といった条件を満たしている必要があります。
ブロックの上に置いてあるだけの物置や、屋根と柱だけのカーポートは、登記の対象にならないことが多いです。
逆に、壁が崩れていたり、屋根が落ちていたりする納屋は、そもそも建物として扱えない状態になっていることもあります。
解体する場合:状態によってはかなりの金額になる
附属建物が古くて使えない状態なら、解体して処分することになります。
ここで費用に大きく影響するのが、建物の状態です。
傷みがひどい建物
雪の重さで屋根が落ちかけている、柱が傾いている、という建物は、重機で一気に壊すと周りに危険が及ぶことがあります。
手作業で少しずつ解体する部分が増えると、そのぶん費用が上がります。
アスベスト(石綿)を含む建材
古い納屋や車庫の屋根・壁に使われている波型のスレート板には、アスベストを含むものがあります。
解体の前には石綿の有無を調べる事前調査が必要で、一定規模以上の工事では調査結果を行政に報告することも義務になっています。
アスベストが含まれていれば、飛散しないように手作業で取り外して、専用の方法で処分する必要があり、費用が上がります。
蔵(土蔵)
土蔵は壁が厚く、土や漆喰、瓦の量が多いので、普通の木造の建物より解体費用がかかりやすいです。
中に古い家財や道具がぎっしり残っていることも多いです。
中に残っている物
納屋や作業小屋には、古い農機具、使いかけの農薬や肥料、タイヤ、廃材などが残っていることがよくあります。
これらは家庭ごみとして出せないものが多く、専門の業者に処分を頼むことになります。
農薬などは扱いに注意が必要なものもあります。
隣の土地へのはみ出し
古い附属建物は、境界ぎりぎりや、境界をまたいで建っていることがあります。
隣の土地にはみ出している場合は、解体の前に隣地の方との話し合いが必要になりますし、境界の確認で測量が必要になることもあります。
母屋の解体費だけを見積もって「このくらいで更地にできる」と考えていたら、附属建物の分で見積もりが倍近くになった、という話は珍しくありません。

「建物を残して売る」か「解体して売る」か
未登記の建物と附属建物がたくさんある場合、どう処分するのがいいのか。
これは、物件の状態によって答えが変わります。
建物を残して売るほうがいいケース
- 母屋の状態がよく、住むために買いたい人がいそうな立地
- 附属建物もまだ使える状態で、農家住宅として価値がある
- 登記の書類が比較的そろっていて、相続人の同意も取りやすい
この場合は、表題登記と保存登記の費用をかけても、建物に価値をつけて売るほうが手元に残るお金が多くなる可能性があります。
解体して更地で売るほうがいいケース
- 母屋も附属建物も傷みがひどく、そのままでは使えない
- 買う人が建物ではなく土地を目的にしそうな立地
未登記の建物を解体する場合は、建物の登記をする必要はありません。
解体したあとに、市町村に家屋が滅失したことを届け出れば、固定資産税の課税が止まります。
ただし、登記されている建物を解体した場合は、法務局に滅失登記を申請する必要があります。
ただ、更地にすると住宅用地の特例が外れて、土地の固定資産税が上がります。
解体してから売れるまでに時間がかかると、その間の税金がかさみます。
売却の見通しを立ててから解体する、という順番が大事です。
どちらがいいかは、登記の費用、解体の費用、売れる見込みの価格を並べて比べないと判断できません。

清新ハウスでお手伝いできること
空き家の処分のご相談では、私たちはまず、登記の状態と、敷地の中の建物の状態を一緒に確認するところから始めます。
登記簿、名寄帳、固定資産税の課税明細を並べて、現地の建物と一つずつ照らし合わせます。
そのうえで、建築士として建物の状態を見て、「この母屋は残して売れる」「この納屋は解体したほうがいい」「この物置は登記の対象にならない」といった整理をします。
登記の手続きは、提携している土地家屋調査士・司法書士にお願いしています。
解体が必要な場合は、アスベストの事前調査や残置物の処分も含めて見積もりを出します。
「実家の建物が登記されているか分からない」
「敷地に古い建物がたくさんあって、何から手をつければいいか分からない」
という段階でのご相談で大丈夫です。
固定資産税の課税明細書が手元にあれば、それを見るだけでも分かることがたくさんあります。
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