
10月に入ると、空き家の相談の中身が少し変わってきます。
「今年の冬、実家の雪下ろしどうしよう」「去年は近所の人がやってくれたみたいで、申し訳なくて」「屋根の雪が隣の家のほうに落ちたらと思うと、夜も気になる」。
実家を離れて県外や新潟市内に住んでいる方からの、こういう相談が増えてきます。
新潟の空き家で冬に一番怖いのは、やっぱり雪です。
人が住んでいれば毎日の雪かきや、家の中の暖房で屋根の雪も多少は落ちますが、空き家はそのどちらもありません。
屋根に雪がたまり続けて、ある日一気に落ちる。あるいは重さに耐えきれずに軒先や下屋が壊れる。そういう被害が毎年どこかで起きています。
今日は、空き家の冬の雪対策を、持ち主一人で抱え込むのではなく、地域の人たちやボランティア、業者と一緒にどう回していくか、という話を書いてみます。
ただ、最初に正直に書いておくと、「地域のボランティアが空き家の雪下ろしをしてくれる」という仕組みは、ほとんどありません。
そこを勘違いしたまま冬を迎えると、結局ご近所に負担がかかってしまいます。
そのあたりも含めて整理していきます。
空き家の雪で、実際に何が起きるのか
空き家の雪で起きるトラブルは、大きく分けると次のようなものです。
落雪で人や物に被害が出る
屋根に積もった雪は、気温が上がった日や雨が降った日に、まとまって滑り落ちます。
空き家の屋根は誰も雪を下ろしていないので、落ちるときの量が多くなりがちです。
その下にお隣のカーポートや車、通学路があれば、大きな事故になりかねません。
屋根や建物が雪の重さで壊れる
新雪なら1立方メートルあたり50〜150kgくらいですが、締まった雪や水を含んだ雪になると、その何倍もの重さになります。
何度も降り積もって締まった雪が屋根に1メートル以上乗っていると、古い建物だと軒先が下がったり、下屋(1階部分の小さな屋根)が折れたりすることがあります。
雪どけ水で建物が傷む
屋根の雪が中途半端にとけて、軒先で凍ってまた積もる、ということをくり返すと、屋根材のすき間から水が入りやすくなります。
住んでいれば天井のシミで気づけますが、空き家だと春になって初めて雨漏りに気づくことが多いです。
雪で道がふさがる
空き家の前の雪が片付かないと、道路や歩道にはみ出して、近所の人の通行の邪魔になります。
除雪車が寄せた雪が空き家の前にたまって、誰も片付けないまま春まで残っている、という光景も見かけます。
どれも、持ち主が遠くに住んでいると気づきにくいものばかりです。
気づいたときには、ご近所から連絡が来ている、というパターンが多いです。
雪の被害の責任は、基本的に持ち主にある
ここは大事なので、はっきり書いておきます。
空き家の屋根から雪が落ちて、隣の家の車や塀を壊したり、通行人がけがをしたりした場合、その責任は基本的に建物の持ち主が負うことになります。
民法の工作物責任という考え方で、建物の管理に問題があったと判断されれば、損害を賠償しなければならない可能性があります。
実際、十日町市などの自治体の空き家対策のページでも、所有者が行うべき管理として「降雪時の屋根除雪」が挙げられていて、強風や雪で建物の一部が飛んだりして他人に被害を与えた場合は所有者に賠償責任が問われることがある、と注意が書かれています。
それから、空家等対策特別措置法の改正で「管理不全空家」という区分ができました。
管理が行き届かず、このままだと危ない状態になるおそれがある空き家として市町村から指導や勧告を受けると、固定資産税の住宅用地の特例が外れることがあります。
雪で傷んだまま放置している空き家は、この対象になる可能性が出てきます。
「近所の人がなんとかしてくれるだろう」「去年も大丈夫だったから」という考えで冬を越すのは、法律の面でもお金の面でも、けっこうリスクが大きいです。

新潟の除雪ボランティアは、何をしてくれるのか
では、地域のボランティアはどうなっているのか。
新潟県には、県が運営している除雪ボランティア「スコップ」という仕組みがあります。
県内外から登録したボランティアが、豪雪地帯の集落に出向いて除雪作業をするものです。
雪かきを通じて、地域の人と都市部の人が交流するきっかけにもなっています。
また、各市町村の社会福祉協議会でも、除雪ボランティアの登録を受け付けているところがあります。
ただ、ここで知っておいてほしいのは、こうしたボランティアの主な対象は「高齢者世帯など、自分で除雪するのが難しい方が住んでいる家」だということです。
人が住んでいて、生活のために除雪が必要な家を支える仕組みです。
空き家の屋根の雪下ろしは、基本的に持ち主が自分で手配するものとされています。
屋根の上の作業は転落の危険が高く、毎年のように雪下ろし中の事故が起きているので、ボランティアに頼むのは現実的ではありません。
つまり、空き家の冬の対策で地域に頼れるのは、「作業」よりも「目」と「連絡」の部分なんです。
ここを分けて考えると、地域との付き合い方がだいぶはっきりしてきます。
地域にお願いできること、お願いしないほうがいいこと
私が空き家の持ち主の方にお伝えしているのは、次のような線引きです。
地域の方にお願いしてもいいこと
- ときどき家の前を通ったときに、外から様子を見てもらう
- 屋根の雪が多くなってきた、軒先が下がっている、窓が割れている、といった異変に気づいたら連絡してもらう
- 自治会の連絡網に、持ち主の連絡先を入れておいてもらう
お願いしないほうがいいこと
- 屋根に上っての雪下ろし
- 空き家の敷地に入っての本格的な除雪
- 鍵を預けて、家の中の確認までしてもらう
屋根の雪下ろしを近所の方に頼んで、もし転落事故が起きたら、取り返しがつきません。
善意でやってくださった方がけがをした場合、持ち主としても本当につらい立場になります。
「見てもらう」と「作業してもらう」は、同じ「お願い」でも重さがまったく違います。
作業のほうは、業者や管理サービスにお金を払って頼むもの、と割り切ったほうが、ご近所との関係も長く続きます。

地域・業者・持ち主で作る「冬の見守り体制」
では実際にどういう体制を作ればいいのか。私たちが持ち主の方と一緒に作っている形を紹介します。
① 持ち主の連絡先を、地域に預けておく
まずはこれです。空き家の困りごとで一番多いのが、「何かあっても持ち主に連絡がつかない」ということです。
自治会長さんや隣の家の方に、名前と電話番号、できればLINEやメールも伝えておきます。
冬の前に一度あいさつに行って、「何かあったらこちらに連絡をください」とお願いしておくだけで、ご近所の安心感はかなり違います。
手土産を持って行くと、話もしやすいと思います。
② 雪下ろしの業者を、冬の前に決めておく
大雪が降ってから業者を探しても、どこも手いっぱいで来てもらえないことが多いです。
豪雪の年は特にそうです。
秋のうちに、雪下ろしを頼める業者を決めて、「屋根の雪が何センチくらいになったら来てもらう」「連絡があったら何日以内に対応してもらう」といったことを話しておきます。
年間契約や回数契約をしている業者もあります。
費用は屋根の大きさや雪の量、作業の難しさで大きく変わるので、見積もりを取って確認してください。
③ 地域の目と、業者の作業をつなぐ
ここがうまく回ると、体制として機能し始めます。
たとえば、ご近所の方から「屋根の雪がだいぶ多くなってきたよ」と持ち主に連絡が来る。持ち主はそれを業者に伝えて、雪下ろしに来てもらう。
終わったら、ご近所の方に「業者に頼んで下ろしてもらいました、ありがとうございます」と一言伝える。
この流れが一度できると、ご近所の方も「連絡すればちゃんと対応してくれる持ち主だ」と分かるので、気にかけてもらいやすくなります。
④ 空き家管理サービスをあいだに入れる
持ち主が遠方で、ご近所との連絡や業者の手配を自分でやるのが難しい場合は、空き家管理サービスをあいだに入れる方法もあります。
定期的に現地を見回って、写真付きで状態を報告し、雪が多くなったら業者の手配までする、というサービスです。
ご近所の方も、何かあれば管理会社に連絡すればいいので、持ち主本人と直接やりとりするより気が楽だという声を聞きます。
冬の前に、建物側でやっておきたいこと
体制づくりと合わせて、建物のほうも冬の前に準備しておくと、雪の被害をかなり減らせます。
雪止めの状態を確認する
屋根に雪止めの金具がついている家は、それが外れていないか、曲がっていないかを確認します。
雪止めがないと、雪が一気に滑り落ちやすくなります。隣家や道路に向いた面は特に大事です。
落雪の方向を確認する
屋根の形によって、雪がどちらに落ちるかが決まります。
落ちる先に隣家の建物や駐車場、通路がないか、一度見ておいてください。
危ない場合は、雪止めの追加や、落雪を防ぐ柵などの対策を考えます。
雨樋や軒先の傷みを直しておく
雨樋が外れかけていたり、軒先が傷んでいたりすると、雪の重さで一気に壊れます。
秋のうちに直しておけば、冬の被害を防げます。
水道の凍結対策をしておく
空き家の水道管は、冬の間に凍結して破裂することがあります。
水抜きをしておく、元栓を閉めておくといった対策は必ずやっておいてください。
春に水道を開けたら家の中が水浸し、という話も聞きます。
建築士として空き家を見に行くと、雪止めが外れていたり、軒先の木材が傷んでいたりするのを見つけることがよくあります。
持ち主の方は屋根の上までは見ていないことが多いので、秋のうちに一度専門家に見てもらうと安心です。

春になったら、冬のお礼と点検を
冬の対策というと雪が降る前のことばかり考えがちですが、雪がとけたあとも大事です。
まずは、冬の間に気にかけてくれたご近所の方へのお礼です。
連絡をもらった方、家の前を見てくれていた方に、春に一度顔を出してあいさつしておくと、次の冬もお願いしやすくなります。
一冬を通してどんなことがあったか、雪はどれくらい積もっていたか、といった話を聞けると、翌年の対策の参考にもなります。
それから、建物の点検です。
雪の重さで屋根や軒先がゆがんでいないか、雨樋が外れていないか、屋根材がずれていないか。
家の中に入れるなら、天井や壁にシミが出ていないか、水道管から水が漏れていないかも確認してください。
冬の間に傷んだところを春のうちに直しておけば、梅雨や夏の台風で雨漏りが広がるのを防げます。
逆に、ここで放っておくと、次の冬にはもっと大きな修理が必要になります。

「地域の空き家」として考える
少し大きな話になりますが、空き家の雪の問題は、持ち主一人の問題ではなくなってきていると感じます。
集落の中で空き家が一軒、二軒と増えてくると、除雪車が寄せた雪の置き場がなくなったり、道の除雪を分担していた人手が足りなくなったりします。
空き家の落雪が道をふさげば、その先に住んでいる高齢の方の生活にも影響が出ます。
だからこそ、持ち主が「迷惑をかけないように」と遠慮して何もしないより、地域と連絡を取り合って、自分のやるべきことを業者に頼んでやっておく、というほうが結果として地域のためになります。
清新ハウスが支部を務めている全国空き家アドバイザー協議会の新潟支部は、新潟市から空き家の管理・活用を支援する団体として指定を受けています。
そういう立場もあって、持ち主の方と地域、業者のあいだに入ってお手伝いすることが増えてきました。
冬の雪は、毎年必ず来ます。
そして、持ち主が県外にいても、屋根の雪は下ろさなければなりません。
それなら、秋のうちに連絡先を伝えて、業者を決めて、建物を点検しておく。
やることは多くないです。
清新ハウスでお手伝いできること
清新ハウスでは、新潟市を中心に、空き家の冬に向けた準備のご相談を受けています。
- 建築士による空き家の点検(屋根・雪止め・軒先・雨樋など)
- 冬前の修繕(雪止めの交換や追加、軒先・雨樋の補修)
- 雪下ろし業者のご紹介や手配のご相談
- 空き家管理サービスのご案内
- 冬を越したあとの状態確認と、売却・活用のご相談
「実家が空き家になって初めての冬で、何をしたらいいか分からない」「近所の方に迷惑をかけていないか心配」という方は、お気軽にご相談ください。
雪が降る前の今が、ちょうど動くのにいい時期です。
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