私は全国空き家アドバイザー協議会理事長としても活動しておりますが、最近多い空き家課題解決の内容についてお話します。
相続手続きからの物件が多いのですが、相談に持ち込まれる物件の、約半数が「相続未登記」です。
これ、体感の話じゃなくて実際の話です。
「親の名義のまま何十年も放置されていた」
「祖父の名前がまだ登記に残っている」
「先に進もうとしたら、誰が相続人か分からなくなった」
そういった物件が、本当に後を絶たちません。
売りたいのに売れない。
貸したいのに動けない。
解体したいのに手続きが進まない。
そして問題が複雑になっていくにつれて、費用と時間と精神的なコストが積み重なっていく。
今回は、この「相続未登記問題」の実態と、そこから派生する「争続(そうぞく)」の地獄について、現場の人間として包み隠さず話します。
「うちには関係ない」と思っているあなた、それが一番危ないです。

現場の実態。私が相談を受けた物件の「約半分」は相続未登記
空家等管理活用支援法人として新潟市から指定を受け、相続・空き家・不動産活用の相談に日々応じている中で、感じていることをそのまま言います。
「処分したい」
「売りたい」
「どうにかしたい」
という相談で持ち込まれる物件のうち、すぐに動けるものは半分以下です。
残りの半分以上が「相続登記がされていないため、まず登記の問題から解決しないといけない」という状況に陥っています。
これは全国的な問題でもあります。
国土交通省の調査によると、日本全国で約410万ヘクタール(九州の面積を上回る広さ)もの土地が「所有者不明土地」となっており、これらの土地は相続登記がされていないことが主な原因とされています。
新潟に限った話ではなく、日本全体で「相続未登記」の問題が積み上がっているのです。
相続登記とは何か。なぜ放置されてきたのか
そもそも相続登記とは何かを確認しておきましょう。
相続登記とは、不動産(土地・建物)の登記簿上の所有者を、亡くなった方(被相続人)から相続した方(相続人)に変更する手続きです。
これまでの日本の制度では、相続登記は「義務」ではありませんでした。
期限もなく、罰則もなかった。
だから「まあ、いつかやればいい」「急ぎじゃないから後回し」という判断が積み重なり、親が亡くなっても名義を変えないまま何十年も経つ、という物件が日本中に溢れていきました。
相続登記の義務化が開始されたのは、2024年4月1日からです。
相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内に相続登記をしなければならなくなりました。
そして重要なのは、この制度は2024年4月1日以降の相続だけでなく、それ以前に発生した相続にも適用されます。
過去に相続した未登記の不動産は、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
2027年3月31日、この日付を必ず覚えておいてください。

放置が生む「2代・3代遡りの恐怖」。相続人がどんどん増える
ここからが、本当に深刻な話です。
相続登記を放置すると何が起きるか。
一言で言うと「相続人が雪だるま式に増えていく」のです。
具体的なケース
例えば、祖父が亡くなったとき(30年前)に登記をしなかった。
その後、祖父の子ども(あなたの親)が亡くなった。
さらに親の兄弟の一人が亡くなり、その子どもたち(あなたにとっては遠縁のいとこ)が相続権を持つことになった。
こうなると、「そもそも誰が相続人なのか」を調べることから始めなければなりません。
相続人を確定するためには、被相続人の「出生から死亡までの全戸籍」を集める必要があります。
これが曲者で、引っ越しや離婚歴がある場合、複数の市区町村から何十通もの書類を集めなければならないことがあります。
2代・3代遡れば、見たことも聞いたこともない人が「相続人」として出てくることがある。
これは珍しくありません。
「お父さんに、実は認知した子どもがいた」
「結婚前の子どもが別の戸籍に残っていた」
相続人調査をする中で、家族の秘密が明るみに出ることもあります。
これが感情的な問題に発展するケースは少なくない。

相続人が増えると、何が困るのか
なぜ相続人が多いと困るのか。
不動産の相続では、相続人全員の合意(遺産分割協議)がなければ、名義変更・売却・解体などの処分ができません。
相続人が2人なら話し合いはなんとかなるかもしれない。
5人になると、まとめるのが難しくなる。
10人・20人になると、もはや全員と連絡を取ることすら困難になります。
実際に私が相談を受けたケースを、具体的に紹介します(プライバシーに配慮して一部変更しています)。
ケース①:相続人が19人いた物件
祖父の代から登記が放置されていた土地。
祖父の子ども4人のうち2人が先に亡くなっており、その子どもたちにも相続権が移っていた結果、相続人が合計19人に。
そのうち3人は住所が追えない状態になっており、公示送達や家庭裁判所の手続きが必要になった。
司法書士への依頼費用は最終的に150万円を超えた。
ケース②:相続人の一人が海外に住んでいた物件
相続人の一人がアメリカに移住しており、日本の書類に署名・捺印をしてもらうのに数ヶ月かかった。
さらに海外在住者の書類には現地での公証が必要で、国際郵便のやり取りを繰り返すことになった。
ケース③:相続人の存在自体を知らなかった物件
被相続人の隠し子(認知はされていたが、家族に知らされていなかった)が相続人として登場。
感情的な対立が生まれ、遺産分割協議が完全に停止した。
最終的に弁護士を立てた調停・審判まで発展し、2年以上かかった。

「争続」の地獄。ハンコを押さない、連絡が取れない、高額請求
相続問題がこじれたとき、業界では「争続(そうぞく)」と呼ぶことがあります。
「相続」が「争い」に変わるという、洒落にならない言葉です。
私が実際に見てきた「争続」の具体的なパターンをお伝えします。
「ハンコを押さない」という武器
遺産分割協議書には、相続人全員の実印と印鑑証明書が必要です。
一人でもこれを押さない限り、協議は成立しません。
これを「武器」として使う相続人が実際にいます。
「ハンコを押す代わりに、自分の取り分を増やせ」という交渉をしてくる。
法律的には不正な要求ですが、実務的には「ハンコが欲しいなら追加で金を払え」という事実上の脅迫が成立してしまう局面が生まれるのです。
「そんな親族いない」と思いたいところですが、これは実際にある話です。
普段は仲が良くても、お金が絡んだ途端に人が変わるケースを何度も見てきました。
「連絡が取れない」という消耗戦
相続人の一人が連絡を無視し続ける、引っ越して所在が分からなくなる、というパターンもあります。
連絡が取れない状態が続いても、法的にはその人の権利はなくなりません。
結局、不在者財産管理人の申立てや、家庭裁判所による失踪宣告などの法的手続きを経なければ前に進めなくなります。
これに数年かかることもある。
「全員の合意が取れているのに一人が拒否する」という理不尽
「残りの家族全員が売却に同意していても、一人が反対すれば売れない」
これが法律の現実です。
裁判所に申立てをすることで強制的に解決する手段(遺産分割調停・審判)はありますが、時間とコストがかかる。
弁護士費用・裁判費用を合わせると、小さな物件なら「費用倒れ」になることすらあります。
「高額な費用請求」という圧力
遺産分割協議の中で、一人の相続人が「自分の取り分としてこの金額を要求する」という交渉をしてくるケースがあります。
本来の法定相続分を大幅に上回る金額を要求し、「払わなければハンコを押さない」という構図です。
法律的には認められない主張ですが、他の相続人がこれに疲弊して妥協してしまうことが実際にあります。
特に、早く物件を処分したい・費用を早く回収したいという事情がある相続人は、このプレッシャーに弱くなりがちです。

登記費用の現実。100万円を超えるケースは「普通にある」
「相続登記ってそんなにお金かかるの?」と思われる方のために、正直な数字をお伝えします。
基本的な費用の構成
- 登録免許税:固定資産税評価額の0.4%(例:評価額1,000万円の土地なら4万円)
- 司法書士報酬:通常の案件で5万〜15万円程度が多い
- 戸籍謄本等の取得費用:数千円〜1万円程度
シンプルな案件ならこの程度ですが、問題は複雑な案件です。
相続人が多数いる場合、相続人調査費用(複数の市区町村から戸籍を集める手間)・遺産分割協議書の作成費用・全員の意思確認の調整コストが積み上がります。
10人以上の相続人がいる場合、司法書士報酬だけで50万〜100万円を超えることがあります。
さらに調停・審判に発展すれば弁護士費用が加わり、合計で100万〜300万円以上の費用がかかったケースは、珍しくない。
それだけの費用をかけても、不動産の売却価格を下回ることすら起きる。
「相続しなければよかった」という本末転倒の結果が生まれることがあるのです。

「相続放棄」という選択肢と、その落とし穴
「こんなに面倒なら、相続放棄すればいいじゃないか」と思った方、それは正しいかもしれませんが、注意が必要です。
相続放棄には3か月の期限があり、不動産だけを選んで放棄することはできません。
つまり「面倒な土地だけ放棄して、現金は受け取る」ということはできない。
相続放棄は「すべての財産」に対する放棄です。
預金・現金も含めて一切を放棄する覚悟が必要です。
また、相続放棄をしても、管理義務が完全に消えるわけでもありません(相続放棄後も、次の管理者が決まるまでの間の管理責任が残る場合がある)。
安易に「放棄すればいい」という判断は危険です。
弁護士・司法書士に相談した上で判断してください。
「相続人申告登記」という応急処置
「遺産分割協議がまとまらない」
「相続人を全部確定できていない」
という状況でも、使える応急処置があります。
それが「相続人申告登記」です。
相続人申告登記は、遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続人であることを登記官に申し出ることで相続登記の基本的義務を果たしたとみなされる簡易な制度です。
「私はこの不動産の相続人の一人です」と申し出るだけで、義務を果たしたとみなしてもらえます。
これにより、期限(2027年3月31日)に間に合わせながら、時間をかけて遺産分割協議を進めることができます。
ただし、これは「応急処置」にすぎません。
最終的には正式な遺産分割協議・登記が必要になります。
早く動けば動くほど解決しやすい。選択肢が残っているうちに
ここまで読んで、「じゃあうちはどうすればいいのか」と思った方のために、動き始める順序を整理します。
ステップ①:登記の現状を確認する
法務局(オンライン可)で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得してください。
登記名義が誰になっているかを確認します。
亡くなった方の名前が残っている場合、相続登記が未了です。
ステップ②:相続人を確定する
被相続人の出生から死亡までの全戸籍を集め、法定相続人を確定します。
これが最初の難関です。
時間と手間がかかりますが、ここを正確に把握しないと次に進めません。
ステップ③:相続人全員に連絡を取る
相続人を確定したら、全員に連絡を取ります。
「誰が何を相続するか」の話し合い(遺産分割協議)を始めます。
ステップ④:遺産分割協議書を作成・全員で署名押印する
遺産分割の内容が決まったら、協議書を作成して全員が署名・実印で押印します。
ステップ⑤:司法書士に依頼して登記申請する
協議書と戸籍関係書類を揃えて、司法書士に登記申請を依頼します。

2027年3月31日まで残りわずか。今すぐ動いてください
2024年4月1日以前に発生した相続でも登記義務の対象となり、2027年3月31日までが期限です。
2027年3月31日まで、今から1年もありません。
「まだ時間がある」と思っていませんか。
この期間内に相続人調査・遺産分割協議・登記申請を完了させるためには、今すぐ動き始めないと間に合わない可能性があるということを、はっきり言っておきます。
特に複数代にわたって放置されている物件、相続人が多い案件は、調査・協議だけで1年以上かかることがあります。
「急がないといけないことは分かった。でも誰に相談すれば…」という方のために、最初の窓口として清新ハウスを活用してください。
状況を整理した上で、司法書士・弁護士などの適切な専門家への橋渡しをします。
「争続」を防ぐために、今できること
最後に、これから相続が発生する可能性がある方(親が高齢・まだ元気なうち)へのアドバイスも伝えておきます。
① 親が元気なうちに「遺言書」を作成してもらう
遺産分割協議は、遺言書があれば不要(遺言に従って分割できる)になります。
公正証書遺言は法的効力が強く、後から争われにくい。
親が判断力のあるうちに作成を勧めることが、最大の「争続」予防策です。
② 親の財産を把握しておく
どこに何の不動産を持っているか、銀行口座はどこにあるか、これを把握していないと、相続が発生したときにまず「財産の棚卸し」から始めることになる。
事前に整理しておくだけで、相続後の手続きが格段に楽になります。
③ 兄弟・親族で「方向性」を話し合っておく
実家をどうするか、誰が何を引き継ぐか?
これを親が元気なうちに家族で話し合っておくことで、相続発生後の混乱を大幅に防げます。
「話しにくい話題」ですが、「話さなかったことの代償」の方がはるかに大きくなります。
まとめ
相続未登記と争続問題について、覚えておいてほしいポイントです。
- 私が相談を受ける物件の約半分が相続未登記で、すぐに処分できない状態
- 登記を放置すると相続人が代を重ねるごとに増え、2代・3代遡れば「見知らぬ相続人」が出現する
- 遺産分割協議には相続人全員の合意が必要。「ハンコを押さない」「連絡が取れない」「高額請求」が争続の典型パターン
- 相続人が多くなると登記費用だけで100万円を超えることもある
- 相続放棄は不動産だけを選べない。全財産の放棄になる
- 「相続人申告登記」は応急処置として有効。まず義務を果たすための手段
- 2024年4月1日以前の相続も義務化対象。期限は2027年3月31日
- 争続を防ぐ最善策は「遺言書の作成」「財産の把握」「事前の家族での話し合い」
「うちには関係ない」という話ではないです。
むしろ「気づいていないだけで、すでに問題が始まっている」可能性が高い。
今すぐ、親の不動産の登記名義を確認してください。それが第一歩です。
ご相談はLINEからお気軽にどうぞ
「相続未登記の物件がある」
「誰に相談すればいいか分からない」
「とりあえず状況を整理したい」という方は、LINEからご相談ください。
専門家への橋渡し・問題整理を含めてワンストップで対応します。
👉 LINEでご相談はこちら(リンク)
LINEで気軽に無料相談

【モデルハウス公開中!】
NEW!秋葉区小戸上組分譲地内 新「蔵里」OPEN!

古民家から取り出した古材を再利用した新旧融合の新しい住まいの在り方をご体感下さい。
👇👇モデルハウス見学のご予約はこちらをクリック👇👇
