日本の家は「建てた瞬間から価値が下がり、20年でゼロになる」とよく言われますが、これって本当にもったいないと思いませんか?
実は、世界の先進国では、しっかり建てた家をメンテナンスしながら住み継ぎ、買った時より高く売れることも珍しくありません。
これからの時代、私たちが目指すべきなのは、使い捨ての家ではなく、30年後も50年後も家族の「資産」であり続ける家づくりです。
住宅会社の立場として、その本質を語ります。

衝撃の事実:日本の家は「20年で価値ゼロ」、欧米の家は「古いほど高い」
まず、日本と欧米の住宅に対する価値観の違いを、数字で確認してみましょう。
中古住宅の流通シェアの圧倒的な差
欧米の住宅市場では、全流通量の8割〜9割が中古住宅であるのが常識です。
一方の日本では、長らく10%台で推移し、2022年にようやく42.3%に達したところです。
この数字の劇的な差こそが、日本がいかに「新築至上主義」という特殊な市場であるかを、端的に示しています。
「築20年=価値ゼロ」の日本、「築50年でも売買される」欧米
日本では、木造住宅の価値は約20年で失われるとされ、どれだけ丁寧に住んでいても、売却時には「古家付き土地(=解体前提)」として扱われることが珍しくありません。
一方、米国では住宅を「買う」というより「投資」という意識が強く、買ったら終わりではなく、高く転売できるように購入後はメンテナンスするのが常識とされています。
さらに興味深いことに、米国では新築よりも中古の方がリスクが小さいとみられています。
新しい開発地の新築住宅は、建物の不具合の有無や周囲にどのような住民が住むかわからず、街並みも未成熟なため、むしろリスクが大きいと判断されるのです。
築年数が50年を超す木造住宅の売買も、まったく珍しくありません。
同じ「家」なのに、なぜここまで扱いが違うのでしょうか。

日本の家が「資産にならない」3つの構造的理由
日本の住宅が20年で価値を失う背景には、家そのものの性能だけではない、構造的な理由があります。
理由①:税制上の「耐用年数22年」という数字の独り歩き
日本の木造住宅は、税法上の耐用年数が22年と定められています。
これはあくまで減価償却の計算のための数字であり、実際の建物の耐久性とは無関係です。
しかし、この「築20年=価値ゼロ」という評価が、不動産実務や銀行融資の常識として定着してしまいました。
理由②:建物の性能を評価しない金融の仕組み
銀行は建物の性能を見極めるノウハウに乏しく、「土地値」でしか担保を評価しない傾向があります。
その結果、どれだけメンテナンスされた良質な中古住宅でも適切な融資がつかず、市場での評価も上がらないという悪循環が生まれています。
理由③:業界全体の「新築優遇」構造
仲介手数料の仕組みや販売支援など、不動産業界全体が「新築を売る方が儲かる・楽である」構造になってきたことも、中古住宅市場が育たなかった大きな要因です。
個別の住宅の価値を丁寧に評価せず、「築20年で資産価値はゼロ」「築30年で取り壊し」というデジタルな判断が繰り返されてきました。
つまり、日本の家が資産にならないのは、「日本の家がすべて粗悪だから」ではなく、良い家を良いと評価する仕組みが未成熟だったからでもあるのです。

しかし、時代は確実に変わり始めている
「日本では仕方ない」と諦めるのは早計です。世界と日本の両方で、スクラップ&ビルドの時代を終わらせる大きな潮流が動いています。
① 世界的なインフレ・資源価格の高騰
ウッドショック以降、木材をはじめとする建築資材の価格は高止まりが続いています。
「壊して建て直す」コストは年々上昇しており、経済合理性の面からも、既存の建物を長く使うことの価値が相対的に高まっています。
② カーボンニュートラルの潮流
建物の解体・新築には、莫大なエネルギーとCO2排出が伴います。
国際的な脱炭素の流れの中で、「長く使える建物を建て、使い続ける」ことは、環境政策の観点からも強く推奨される方向になっています。
③ 国の制度も「長く使う家」を後押し
長期優良住宅の認定制度、住宅性能表示制度、既存住宅状況調査(インスペクション)の普及、そして2025年4月からの省エネ基準適合義務化。
国の制度は明確に、「性能の高い家を建て、履歴を残し、適正に評価して流通させる」方向へ舵を切っています。
④ 中古住宅市場の成長
前述の通り、日本の中古住宅流通シェアは42.3%まで上昇してきました。
都市部では中古住宅でも高値で売買される例が増えており、「きちんとした家は中古でも評価される」市場が、少しずつですが確実に育ち始めています。

欧米に学ぶ「資産になる家」の3つの共通点
では、100年以上住み継がれる欧米の家には、どんな共通点があるのでしょうか。
日本の家づくりに取り入れるべき本質を整理します。
共通点①:素材そのものが「時を経て美しくなる」
欧米の住宅で多用されるのが、厚みのある無垢材・レンガ・石・漆喰といった自然素材です。
例えば30mm厚の無垢フローリングは、表面に傷がついても削り直しができ、経年変化でむしろ味わいが深まります。
これに対し、薄い化粧シートを貼った建材は、新品のときが最も美しく、劣化すれば張り替えるしかありません。
「新品がピークの素材」ではなく「時間とともに価値が育つ素材」を選ぶことが、資産になる家の第一条件です。
共通点②:メンテナンスを「文化」として実践する
欧米では、住まいのメンテナンスは所有者の当然の責務であり、同時に資産価値を高める「投資」と捉えられています。
外壁の塗り直し、屋根の補修、設備の更新。
これらを計画的に行い、その履歴が家の評価に直結します。
「古い家を買ってメンテナンスして高く売る」という文化が成立しているのは、この積み重ねが正当に評価される市場があるからです。
共通点③:「性能」と「履歴」が可視化されている
欧米の中古住宅取引では、建物の状態を専門家が調査し、その結果が価格に反映される仕組みが確立しています。
「いつ、どんな工事をしたか」「性能はどのレベルか」が記録として残っているからこそ、築50年の家でも安心して売買できるのです。

【事例】「資産になる家」と「20年で価値を失う家」の分かれ道
具体的なイメージを持っていただくために、対照的な2つのケースを考えてみましょう。
ケースA:価格の安さだけで建てたIさんの家
Iさんは25年前、とにかく初期費用を抑えることを最優先に家を建てました。
断熱性能は当時の最低基準、建材は化粧シート貼りの量産品、外壁は10年ごとの塗装が必要なタイプでしたが、メンテナンスは「壊れたら直す」という後手の対応を続けてきました。
25年経った現在、家は各所に不具合が出始め、冬の寒さ・夏の暑さも深刻です。
売却査定を依頼したところ、提示されたのは「土地値のみ。建物は解体前提」という評価でした。
解体費用を差し引くと、手元に残る金額は土地の価値をも下回る計算です。
ケースB:長期優良住宅で建て、履歴を残してきたJさんの家
一方Jさんは、同時期に建築費が2割ほど高くなることを承知の上で、高断熱・高耐久の仕様と、認定制度に沿った家づくりを選びました。
定期点検を欠かさず、外壁・屋根のメンテナンスも計画的に実施。すべての工事履歴を記録として保管してきました。
25年後の現在も、住み心地はほとんど変わらず、光熱費は近隣の同世代の家より大幅に低い水準を維持しています。
数年前に住み替えを検討した際の査定では、建物にも一定の価値がつき、メンテナンス履歴が評価の根拠として機能しました。
2つのケースの差は「運」ではない
この差を生んだのは、偶然ではありません。
「最初にどんな性能で建てるか」「その後どう維持するか」「その記録を残すか」
この3つの選択の積み重ねが、25年後の資産価値の差になったのです。
子ども世代に「負債」ではなく「資産」を遺すために
ここで、空き家問題の専門家としての視点も加えさせてください。
私は空き家アドバイザーとして、数多くの相続相談を受けてきました。
その中で痛感するのは、性能の低い家・履歴のない家は、子ども世代にとって「資産」ではなく「負債」になってしまうという現実です。
親が遺した実家が、断熱性能が低く、メンテナンス状態も不明で、市場では「解体前提」としか評価されない。
こうなると、子ども世代に残されるのは「解体費用の負担」と「売るに売れない不動産の管理義務」だけです。
今の日本で空き家が900万戸を超えて増え続けている背景には、この「資産にならない家」の大量生産があったと言っても過言ではありません。
逆に言えば、これから建てる家は、この連鎖を断ち切るチャンスだと考えます。
- 長期優良住宅などの認定を取得し、性能を「証明できる形」にしておく
- 高い断熱性能を確保し、将来の省エネ基準の強化にも対応できる家にする
- 点検・修繕の履歴を必ず記録し、「家のカルテ」として蓄積する
- 時を経て価値の増す自然素材を、手の届く範囲で取り入れる
こうした選択は、目先の建築費を多少押し上げるかもしれません。
しかしそれは「消費」ではなく、30年後・50年後の家族への「投資」です。

「資産になる家づくり」のために、今日からできること
これから家を建てる方・すでにお住まいの方、それぞれに向けて、具体的なアクションを整理します。
これから建てる方へ
- 住宅会社を選ぶ際、「長期優良住宅の実績」「断熱等級の標準仕様」を必ず確認する
- 初期費用の安さだけでなく、光熱費・メンテナンス費を含めた「生涯コスト」で比較する
- 「この家は30年後、どう評価されると思いますか?」と住宅会社に率直に聞いてみる
すでにお住まいの方へ
- 今からでも、点検・修繕の履歴を記録として残し始める(レシート・工事写真の保管から)
- 外壁・屋根などの計画的なメンテナンスを「出費」ではなく「資産防衛」と捉え直す
- 断熱リフォーム・耐震補強など、性能を底上げする改修を検討する(補助金制度の活用も)
共通して大切なこと
家の価値は、建てた瞬間に決まるのではありません。
「建て方」×「住み方」×「記録の残し方」の掛け算で、30年後の評価は大きく変わります。
まとめ
スクラップ&ビルドから「資産になる家づくり」への転換について、覚えておいてほしいポイントを整理します。
- 欧米では中古住宅が流通の8〜9割を占め、メンテナンスされた古い家ほど高く評価される
- 日本の「築20年で価値ゼロ」は、税制上の耐用年数22年という数字が独り歩きした結果でもある
- 資源高騰・脱炭素・国の制度転換により、スクラップ&ビルドの時代は終わりつつある
- 資産になる家の条件は「時を経て価値が育つ素材」「計画的なメンテナンス」「性能と履歴の可視化」
- 性能の低い家・履歴のない家は、子ども世代にとって「負債」になりかねない
- 長期優良住宅・高断熱・メンテナンス履歴の蓄積が、家を「資産」に変える具体的な方法
家は、人生で最も大きな買い物であると同時に、次の世代へ手渡すバトンでもあります。
20年で捨てられる家ではなく、50年後も家族を守り、価値を持ち続ける家を。
それが、これからの時代の家づくりの本質だと、私は信じています。
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