「親の終活」と「実家じまい」。
この2つを「別々の問題」として考えている方が、実はすごく多いんです。
「終活は親本人の問題。実家の処分は相続が発生してから考える別の話」そう思っていませんか。
はっきり言います。
この2つを切り離して考えると、必ず詰まります。
なぜか。
親が元気なうちしかできないことと、相続後でないとできないことが混在しているからです。
この両方をうまく組み合わせて「同時進行」で進めることが、最もスムーズに・最もコストをかけずに・最も家族が揉めずに問題を解決する方法です。
今回は、「親の終活」と「実家じまい」を同時に進めるための具体的な方法を、順番に話していきます。

まず整理。「終活」と「実家じまい」は何が違うのか
混同しやすいので、最初に整理しておきます。
「終活」とは
親本人が自分の人生の終わりに向けて準備をすること。
遺言書の作成、財産の整理、介護・医療に関する意思表示、葬儀の希望の伝達など、親が生きている間に本人が主体となって行う準備です。
「実家じまい」とは
親が亡くなった後(または施設入居などで住まなくなった後)に、実家の荷物を整理し、不動産をどうするか決め、処分・売却・活用を進めること。
子ども世代が主体となって進める後処理です。
この2つは、タイムラインが重なる部分があります。
それが「親が施設に入った後・亡くなる前後の時期」です。
この時期をうまく使えるかどうかが、スムーズに進むかどうかの分かれ目になります。

なぜ「同時進行」が正解なのか。別々にやろうとすると起きること
「順番にやればいい」と思っている方に、現実を伝えます。
「終活を終わらせてから実家じまいを始めよう」とすると…
終活がいつ終わるか、誰にも分かりません。
親の体の状態・気持ちの状態・認知機能の変化、これらは予測できない。
「終活が終わった」という明確なゴールもない。
待っている間に実家が傷み、親の判断能力が落ち、問題が複雑化していきます。
「相続が発生してから実家じまいを始めよう」とすると…
相続発生後は、感情的にも余裕がない時期に、多くの手続きが同時に押し寄せてきます。
葬儀・49日・相続税の申告・金融機関の手続き・実家の管理。
これを並行してこなしながら「実家の処分方法を家族で話し合う」のは、精神的に限界に近い状態です。
さらに相続登記・荷物の整理・売却・解体。
これらに数年かかることもある。
その間ずっと固定資産税を払い続けながら。
「同時進行」なら何が違うか
親が元気なうちに「親の意思」を確認しながら実家の将来を決められる。
「この家はどうしてほしいか」
「思い出の品で残しておきたいものはあるか」
「土地は売っていいか」
これらは本人に聞けるうちに聞いておかないと、後で分からなくなります。
同時進行で進めることで、「親が元気なうちにしかできないこと」と「子どもが先に動いておけること」を重ねて消化できる。
これが最も効率的で、最も後悔が少ない方法です。

「同時進行」のロードマップ。何をどの順番で進めるか
では具体的に何をどう進めるか。
大きく4つのフェーズに分けて説明します。
フェーズ1:親が元気なうちに進める「終活の土台づくり」
このフェーズで最も重要なのは「親本人の意思を言語化・記録化すること」です。
① 財産の全体像を把握する
不動産(土地・建物の所在・登記名義)、金融資産(銀行口座・証券口座)、保険(加入している保険の種類・証券番号)、負債(住宅ローン残高・借入等)。
これらを一覧化した「財産目録」を作成します。
「親に財産のことを聞くのは気が引ける」という方が多いですが、はっきり言います。
気が引けても聞いておかないと、後で何十倍もの手間がかかります。
「エンディングノートへの記入を一緒に手伝う」という形で進めると、自然に話が聞きやすくなります。
② 不動産の登記名義を確認する
実家の登記が現在誰の名義になっているかを確認してください。
法務局でもオンラインでも「登記事項証明書」を取得できます。
「祖父の名前のまま」
「離婚した父の名前のまま」
という問題が今からでも見つかる場合があります。
これは「相続後に気づく」より「今気づく」方が処理がずっと楽です。
③ 遺言書の作成を勧める
終活の中で最も効果が高い「争続予防策」が遺言書です。
「誰に何を相続させるか」が遺言書に書いてあれば、相続発生後に遺産分割協議をする必要がなくなります。
特に子どもが複数いる家庭や、不動産を特定の人に相続させたい場合は、遺言書がない状態で相続が発生すると、本当に揉めやすい。
公正証書遺言を強くおすすめします。
費用は数万円(財産の総額によって変わる)かかりますが、公証役場で作成されるため法的効力が強く、後から「その遺言書は本物か」と争われにくい。
④ 介護・医療に関する意思を確認する
「延命治療はどうしたいか」
「介護が必要になったら施設か在宅か」
「どの施設がいいか」
これらを親の意思として確認しておくことは、終活の重要な部分です。
同時に「施設に入ることになったら、この家どうする?」という話もここで自然に始められます。
フェーズ2:親が施設に入るタイミングで進める「実家じまいの準備」
親が施設に入るタイミングは、実家じまいを始める「最初のゴールデンタイム」です。
「まだ生きているから実家の処分は早い」と思う方もいますが、これは誤解です。
親が施設に入った時点で、実家は「誰も住まない空き家」になります。
空き家になった瞬間から、劣化が始まり、固定資産税の特例が維持できなくなるリスクが生まれます。
⑤ 荷物・家財の整理を開始する
実家の荷物整理は、体力的にも精神的にも最もきつい作業のひとつです。
そして、親が施設に入ったばかりの時期は「まだ何かあったときに本人に確認できる」タイミングでもあります。
「これ、捨てていい?」「これはどうする?」という確認を本人にしながら進められる間に、少しずつ整理を始めてください。
全部一気にやろうとせず、週1回・月1回のペースで少しずつ進めるのが現実的です。
⑥ 建物の状態を専門家に診てもらう
誰も住まなくなった実家の状態を、建築士やインスペクターに診てもらいましょう。
「この家はこのまま売れるか」「リフォームしたらいくらかかるか」「解体の方がいいか」
これらの判断は、建物の状態を見た上でないと正確にできません。
清新ハウスでは、この段階での現地診断・相談に対応しています。
「処分をどうするか決まっていない段階」での相談も大歓迎です。
⑦ 不動産の方向性を家族で話し合う
「売る・貸す・リノベして誰かが使う・解体する」
この方向性を、親が施設に入ったタイミングで家族会議として決めておく。
全部決めなくていいです。
「方向性だけ合わせておく」だけで、相続発生後の混乱が大幅に減ります。
「そのときになったら考える」は、そのときに一番動きにくい状態になっているので、今決めておく方が絶対にいい。
フェーズ3:相続発生直後に動く「緊急タスク」
親が亡くなったとき、感情的に辛い中でも期限のある手続きがあります。
これだけは必ず対応してください。
⑧ 相続放棄の検討(3ヶ月以内)
相続放棄をするかどうかの判断期限は「相続を知ってから3ヶ月以内」です。
「不動産を引き継ぎたくない」「借金があって相続すると損になる」という場合は、この期限内に判断が必要です。
弁護士・司法書士に相談してください。
⑨ 相続税申告の準備(10ヶ月以内)
相続税の申告・納付期限は「相続を知ってから10ヶ月以内」です。
相続財産の総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を超える場合は、税理士に依頼して申告が必要です。
⑩ 相続登記の準備(3年以内)
2024年4月以降、相続登記は義務化されました。
相続を知ってから3年以内に登記しないと最大10万円の過料が科される可能性があります。
司法書士に依頼して進めてください。
フェーズ1・2で財産目録・登記の確認・家族の方向性の合意ができていれば、このフェーズは格段にスムーズに進みます。
逆に何も準備していないと、このフェーズが「地獄」になります。
フェーズ4:相続登記完了後に進める「実家の最終処分」
相続登記が完了したら、いよいよ実家の本格的な処分を進めます。
⑪ 残った荷物の最終整理
フェーズ2で進めていた荷物整理の続きを完了させます。
まだ大量に残っている場合は、遺品整理業者に依頼することも選択肢です。
⑫ 不動産の売却・活用・解体を実行する
フェーズ2で決めた方向性に沿って、実際の処分を進めます。
- 売却する場合:不動産会社に依頼。相続した空き家の売却には「3,000万円特別控除」の特例が使える可能性があります(相続から3年目の12月31日まで等の条件あり)
- 賃貸に出す場合:リフォームして賃貸物件として運用する。収支のシミュレーションを事前に確認する
- 解体する場合:複数の解体業者から見積もりを取り、比較する。解体後の土地の活用方法も検討する

「同時進行」でよくある落とし穴
スムーズに進めるためのアドバイスとして、よくある失敗パターンも伝えておきます。
落とし穴①:親に「終活の話」を切り出すタイミングを逃し続ける
「もう少し元気なうちに言い出しにくい」「病気になってから話せばいい」と思っていると、認知症が進んで本人の意思確認ができなくなるケースがあります。
「元気なうちしか話せない話」があると、常に意識してください。
落とし穴②:兄弟・姉妹に相談せず、一人で進めようとする
「自分が長男・長女だから全部やらなきゃ」と一人で抱え込む方がいます。
実家の処分は関係者全員の合意が必要なため、一人で進めても後で「なんで勝手に決めたんだ」と揉める原因になる。
最初から「全員の話し合いの場」を作ることが重要です。
落とし穴③:専門家に相談するのを遅らせる
「もっと話が進んでから専門家に行こう」と思っている間に、「あのとき相談していれば使えた手段」が消えていくことがあります。
「まだ何も決まっていない段階」でも専門家に相談することで、全体の見通しが立ちます。

まとめ
「親の終活」と「実家じまい」を同時進行で進めるポイントを整理します。
- 終活と実家じまいは「別の話」ではなく、タイムラインが重なる「同時進行すべき問題」
- 親が元気なうちに:財産目録の作成・登記確認・遺言書の作成・意思確認
- 親が施設に入ったタイミングで:荷物整理の開始・建物診断・家族での方向性の合意
- 相続発生後に:相続放棄の検討(3ヶ月)・相続税申告(10ヶ月)・相続登記(3年)
- 相続登記完了後に:荷物の最終整理・売却・賃貸・解体の実行
- 「元気なうちしか確認できないこと」が存在する。後回しにすると確認できなくなる
- 一人で抱えず、最初から家族全員と専門家を巻き込む
「いつかやらなきゃ」が「今日やろう」に変わるきっかけになってほしい。
何から始めればいいか分からなければ、まず私に相談してください。
一緒に整理しましょう。
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