「実家の土地を売ろうと思って動き始めたら、境界の杭が見つからなくて止まってしまった」
この相談、本当に多いです。
はっきり言います。
「境界が曖昧な土地は、売れません。売りにくいです。そして、放置するほど問題が大きくなります。
「ブロック塀のセンターが境界だと思っていた」
「杭があったはずだけど、どこかに埋まっているかもしれない」
「お隣は何十年も前から越境してきているが、見て見ぬふりをしてきた」
こういった「うやむや」な状態で土地の売買を進めようとすると、契約直前や引き渡し後に大きなトラブルになる可能性があります。
今回は、土地の「境界」というテーマについて、正しい知識と対処法を話します。

「境界」には2種類ある。ここを知らないと話が噛み合わない
まず最初に、「境界」には実は2つの概念があることを押さえておいてください。
多くのトラブルは、この2つが混在しているために起きます。
① 筆界(ひっかい)
公法上の区画。法務局に登録された地図(地積測量図)に基づいた、「国が定めた土地の区画線」です。
土地の所有者同士が合意しても変更できない。行政が定めたものです。
② 所有権界(しょゆうけんかい)
実際に「どちらの土地か」という所有権の境目です。
民事上の問題であり、当事者間の合意で変更できます。
「筆界=所有権界」であることが理想ですが、現実には一致していないケースが多い。
よくあるパターン:30年前に「まあここでいいよね」とお互いに口頭で決めたブロック塀の位置が、実は正確な筆界より10cm内側だった。
その結果、「筆界上は自分の土地なのに、ブロック塀で隣に使われている状態」が生まれる、これが「越境」問題の典型例です。

境界杭って何?なぜ見つからなくなるのか
境界杭は、土地の角に打ち込まれた「境界の目印」です。
コンクリート製・金属製・プラスチック製など種類があります。
正式に測量をして設置された境界杭は、法的に重要な意味を持つものです。
境界杭を無断で移動・撤去することは「境界損壊罪」という犯罪に当たります。
にもかかわらず、境界杭が見つからないケースが非常に多い。
なぜか。理由は複数あります。
- 地面に埋まってしまった:長年の土の堆積・植栽の根などで杭が埋もれる
- 工事で抜かれてしまった:外構工事・リフォーム工事・道路工事の際に誤って撤去された
- 最初から設置されていなかった:古い土地では、そもそも境界杭を設置していない物件が多い
- 移動された:悪意のある隣人が境界杭を動かしてしまったケース(犯罪ですが、実際にある)
古い物件(昭和50年代以前)では、そもそも正確な測量をせずに「だいたいここらへん」という感覚で杭を設置していたケースや、杭そのものが存在しない土地が珍しくありません。
「確定測量」とは何か。なぜ売却前に必要なのか
「確定測量」とは、隣地所有者の立ち会いのもとで土地家屋調査士が測量を行い、すべての隣地との境界線を確定させる作業のことです。
確定測量を行うと、
- 境界の位置が正式な書類(境界確認書・確定測量図)として記録される
- 隣地所有者全員のハンコ(承認)が記録に残る
- 登記簿に記載された「公簿面積」と実際の「実測面積」の差異が明確になる
- 新しい境界杭が設置される
という結果が得られます。
なぜ売却前に必要なのか
土地を売買する際、買主・金融機関(住宅ローン)は「この土地がどこからどこまでか」を正確に知りたいと当然思います。
境界が曖昧なままだと、
- 「越境物があることが分かり、解決するまで契約ができない」
- 「実測面積が公簿面積より小さく、価格を下げなければならない」
- 「隣地との境界について合意が取れず、売却が長期化する」
というトラブルが発生します。
確定測量を先に済ませておくことで、売却がスムーズになるだけでなく、「境界が確定している物件」として買主への信頼感が高まり、交渉を有利に進めやすくなります。

確定測量の流れ。何をどの順番でやるのか
STEP 1:土地家屋調査士に依頼する
確定測量は土地家屋調査士の専門分野です。まずは土地家屋調査士事務所に相談してください。不動産会社や司法書士を通じて紹介してもらうこともできます。もちろん弊社からご案内可能です。
STEP 2:資料収集・現地調査(1〜2週間)
土地家屋調査士が法務局・市区町村から地積測量図・公図・登記記録などの資料を収集し、現地で境界杭の有無・状況を確認します。
STEP 3:一次測量・境界案の作成(1〜2週間)
現地測量を行い、境界の案(仮の位置)を作成します。
STEP 4:隣地所有者への立ち会い依頼と境界確認(最も時間がかかる)
すべての隣地所有者(道路を挟む場合は道路管理者=市区町村も含む)に連絡を取り、現地での立ち会い確認を行います。
ここが最も時間と手間がかかる工程です。
隣地所有者が多い・連絡がつかない・海外在住・認知症で判断能力がない・そもそも相続未登記で誰が所有者か分からない、こういった事情が重なると、立ち会い確認だけで数ヶ月かかることがあります。
隣人との関係が良好であれば問題なくサインをもらえますが、「境界について異論がある」「うちの土地が削られる」という主張が出てくると、交渉が難航します。
STEP 5:境界確認書への署名・押印
境界の位置に合意した後、全員が境界確認書に署名・押印します。
STEP 6:境界杭の設置・確定測量図の作成
確認された境界位置に新しい境界杭(金属プレート・コンクリート杭等)を設置し、確定測量図を作成します。
STEP 7:地積更正登記(必要な場合)
実測面積が登記簿の公簿面積と大きく異なる場合は、登記の更正手続きを行います。
全体の期間:最短2〜3ヶ月、隣地の状況によっては6ヶ月〜1年以上かかることもある。
「売りたい」と思ってから確定測量を始めたのでは間に合わないことがあります。
「売却を考え始めたら、まず確定測量の相談から」が正しい順番です。

確定測量の費用はどのくらいか
費用は土地の状況・隣地の数・難易度によって大きく変わりますが、目安として以下を参考にしてください。
| 案件の難易度 |
費用の目安 |
| 隣地少なく・境界確認がスムーズな場合 |
35万〜50万円程度 |
| 隣地が多い・官地(道路等)との確認が必要 |
50万〜80万円程度 |
| 境界に争いがある・隣地の状況が複雑 |
80万〜150万円以上になる場合も |
「高い」と感じる方もいると思いますが、正直に言います。
確定測量をしないまま売却を進めて、後から境界トラブルが発覚すると、裁判費用・補修費用・価格の値引きなど、確定測量費用をはるかに超えるコストが発生することがあります。
確定測量は「保険」として考えてください。
境界杭が見つかった!でも「確定測量図」がない場合の対処
「杭はある。でも正式な確定測量図がない」というケースもよくあります。
杭があっても、それが「誰が・いつ・どんな根拠で設置したか」が不明な場合、法的な証明力が弱くなります。
売却時に「あの杭は本当に正しい位置なのか」と疑義を呈される可能性があります。
この場合も、土地家屋調査士に相談して「現況確認測量」または「確定測量」を実施することをおすすめします。
既存の杭の位置が正確かを確認した上で、正式な測量図として記録に残すことができます。

越境物が発覚した場合。どう対処するか
確定測量の過程で「越境物」が発覚することがあります。
越境とは、相手の構造物(ブロック塀・フェンス・建物の軒・樹木の根など)が自分の土地に入り込んでいる状態のことです。
越境物発覚時の対処パターン
① 越境物を撤去・是正してもらう:相手に越境部分の撤去を依頼する。ただし建物や構造物の場合、撤去には多大なコストがかかるため、合意が難しいことも多い。
② 越境に関する覚書を交わす:「現状は越境しているが、将来建て替え・改築の際には越境を解消する」という覚書を隣地と締結する。売買の際にこの覚書を買主・隣地に引き継ぐことで、現状を維持しながらも将来の解消を約束する方法。これが最も現実的な解決策として選ばれることが多い。
③ 売買価格の調整:越境物の存在を前提として、売買価格を調整する。
越境物の対処方法は「何が越境しているか・越境の深刻度・隣地との関係性」によって変わります。一律に解決策があるわけではないため、不動産会社・土地家屋調査士と相談しながら判断してください。
新潟の土地で特に多い境界トラブルのパターン
新潟特有の事情として、いくつか付け加えておきます。
① 農地が隣接する土地
新潟の郊外・農村部では、住宅地と農地が隣接するケースが多い。
農地と宅地の境界は「水路」「畦道(あぜみち)」で区切られていることがあり、この場合は農業委員会や土地改良区との確認も必要になることがあります。
② 水路・私道の扱い
新潟市内でも、昔の水路(現在は廃止・埋め立て済み)が地図上では残っているケースがあります。
この場合、道路幅・水路の取り扱いが複雑になることがあります。
③ 積雪によるブロック塀の変形・移動
新潟の豪雪地帯では、積雪の重さでブロック塀が倒壊・変形し、元の位置から動いてしまうことがあります。
「塀の位置=境界だと思っていたが、雪で動いていた」というトラブルが起きることもあります。
境界杭を大切にする。普段からできる保全の習慣
最後に、境界杭を守るための日常的な習慣をお伝えします。
- 庭の整備・外構工事の際は、境界杭の位置を事前に確認し、工事業者に「杭の位置は絶対に動かさないように」と伝える
- 境界杭の上を土やコンクリートで埋めてしまわない(発見できなくなる)
- 定期的に杭の位置・状態を確認し、倒れたり埋もれたりしていないかチェックする
- 境界杭が何らかの理由でなくなっていることに気づいたら、勝手に設置し直さず土地家屋調査士に相談する
境界杭は「自分の財産の証拠」です。大切に管理してください。
まとめ
土地の境界確認と確定測量について、覚えておいてほしいポイントです。
- 境界には「筆界(行政が決めた区画)」と「所有権界(当事者間の合意)」の2種類があり、一致していないことがある
- 境界杭は長年で埋まる・撤去されるケースが多い。見つからなくても「だいたいここ」で決めてはいけない
- 確定測量は隣地所有者全員の立ち会い・署名が必要。最短2〜3ヶ月、状況によって1年以上
- 費用の目安は35万〜80万円程度。難易度が高い案件ではそれ以上
- 確定測量は「売却前の保険」。後からトラブルが起きるコストの方がずっと高い
- 越境物が発覚した場合は「覚書の締結」が現実的な解決策として選ばれることが多い
- 新潟特有の農地・水路・積雪によるトラブルも知っておく
「うちの土地、どこまでか分かりますか?」
この質問に自信を持って答えられない方は、売却を考えているかどうかに関わらず、一度土地家屋調査士に相談することをおすすめします。
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