
新潟市で住宅会社をやっていると、この数年で相談の中身がはっきり変わってきたのを感じます。
以前は「家を建てたい」「リフォームしたい」という前向きなご相談が中心でした。
ところが今、最も多いのは「親が住んでいた家をどうしたらいいか分からない」という、少し重たいご相談です。
空き家の処分方法を調べようとすると、売却、解体、寄付、国庫帰属…といった言葉が並びます。
ただ、どれも一長一短で、しかも「あなたの家にはどれが向いているのか」までは書いてくれません。
私自身、現地を見て、そのうえで「これは売れます」「これは解体してからのほうがいい」とお伝えする場面が年々増えています。
この記事では、新潟という土地の事情を踏まえたうえで、空き家の処分方法を整理してお伝えします。
ご実家をお持ちで、そろそろ考えなければと思っている方の、判断材料になれば幸いです。

「とりあえず置いておく」が、結局いちばん高くつく
まず最初にお伝えしたいのが、これです。
空き家の相談で圧倒的に多いのが「どうしたらいいか分からないので、とりあえずそのままにしている」というケースなのですが、この「とりあえず」がいちばん損をします。
理由は大きく三つあります。
新潟の雪と湿気は、思っている以上に家を痛めます
人が住まなくなった家は、驚くほど早く傷みます。
換気がされず、暖房も入らないため、湿気がこもって内部から腐っていきます。
新潟の場合、ここに雪の問題が加わります。
誰も雪下ろしをしない家は、屋根に荷重がかかり続けます。
私が現地調査に伺って、雪の重みで棟がたわんでいる、カーポートが潰れている、雨樋がすべて落ちている、といった状態を見ることは珍しくありません。
一冬越えるごとに、資産価値ははっきりと下がっていきます。
春先に「去年見たときはまだ売れる状態だったのに」と申し上げなければならないことがあり、これが本当に心苦しい。
空き家の処分を考えるなら、雪が降る前に動くかどうかで結果が変わります。
固定資産税が最大6倍になる可能性があります
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」があり、固定資産税の課税標準額が最大6分の1に軽減されています。
ところが、2023年に改正された空家等対策の推進に関する特別措置法により、この扱いが厳しくなりました。
従来から「特定空家等」に指定されると特例から除外される仕組みはありましたが、改正によって新たに「管理不全空家等」という区分が設けられました。
特定空家になる一歩手前、つまり「このまま放置すればそうなるおそれがある状態」でも、市町村から勧告を受けた時点で特例が外れます。
つまり、倒壊寸前まで待たなくても、管理を怠っていると判断された段階で税金が跳ね上がる可能性があるということです。
この改正の意味は小さくありません。
相続登記は2024年4月から義務化されました
もう一つ、押さえておいていただきたいのが相続登記の義務化です。
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をすることが義務となりました。
正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象となります。
重要なのは、これが施行日より前に発生した相続にも適用されるという点です。
「祖父の代から名義が変わっていない」というご実家は、新潟でも本当に多い。
心当たりのある方は、処分の検討と並行して、まず名義がどうなっているかを確認してください。
名義が整理されていない不動産は、売ることも壊すこともできません。
処分方法を考える以前の、入口の問題です。

空き家の処分方法は、大きく5つ
では具体的な選択肢を見ていきます。
ご自身の状況がどれに当てはまりそうか、考えながら読んでみてください。
1. 建物を残したまま売却する(古家付き土地)
最もシンプルで、費用負担も少ない方法です。
解体費をかけずに済むうえ、買主が住宅ローンを使える場合もあります。
「こんな古い家、売れるわけがない」とおっしゃる方が多いのですが、実際にはそんなことはありません。
近年は中古住宅を安く買って自分好みに直したいという層が確実に増えています。
特に新潟市内の生活利便性が高いエリアであれば、築古でも十分に買い手がつきます。
ただし、雨漏りやシロアリ被害がある場合は、契約不適合責任の問題が出てきます。
売主として何を告知すべきか、事前に整理しておく必要があります。
2. 解体して更地で売却する
建物の傷みが激しい場合や、再建築を前提とした買主を想定する場合はこちらです。
更地のほうが買い手の間口は広がります。
気をつけていただきたいのは、解体すると住宅用地の特例が外れ、翌年度から固定資産税が上がるという点です。
売れる見込みが立つ前に急いで壊してしまい、その後何年も更地のまま高い税金を払い続ける、これは避けたい展開です。
順番としては、まず売却の見通しを立ててから解体する。
この順序を守るだけで、無駄な出費をかなり防げます。
3. 賃貸・民泊などで活用する
処分ではなく、持ち続けて収益化する道です。
当社では住宅宿泊事業(民泊)に関わるリフォームのご相談もいただきますが、立地の条件はシビアに見る必要があります。
観光需要が見込めるエリアか、周辺に賃貸需要があるか。
ここが弱いまま改修費だけかけてしまうと、回収できません。
「活用できませんか」とご相談いただいたとき、私が「これは売却のほうがいいと思います」と正直に申し上げることもあります。
4. 自治体や近隣への譲渡・空き家バンクの活用
新潟県内の多くの市町村が空き家バンクを運営しています。
市場に乗りにくい物件でも、移住希望者とつながる可能性があります。
また、隣地の所有者に買い取ってもらう、あるいは譲るという選択肢も現実的です。
他人にとっては使いにくい土地でも、隣に住んでいる人にとっては駐車場や庭として価値があるケースは多いのです。
なお「自治体に寄付すればいい」と考える方がいますが、自治体は公共目的での利用予定がない不動産を原則として受け取りません。
ここは期待しすぎないほうがいいところです。
5. 相続土地国庫帰属制度を使う
2023年4月に始まった制度で、相続または遺贈により取得した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえます。
ただし要件は厳しく、建物が建っている土地は対象外です。
使うのであれば解体が前提になります。
加えて、審査手数料と、原則10年分の土地管理費相当額にあたる負担金の納付が必要です。
宅地の場合、負担金は原則20万円ですが、市街化区域内などでは面積に応じて算定され、それ以上になることもあります。
「どうしても引き取り手が見つからない土地」の最後の手段、という位置づけで考えるのが現実的です。

お金の話 。 費用と、見落とされがちな税制優遇
処分方法を選ぶうえで、費用の見当がついていないと判断できません。
木造住宅の解体費用は、新潟市内であれば坪あたりおおよそ4万円から6万円程度が一つの目安です。
30坪の住宅なら120万円から180万円といったところでしょうか。
ただしこれは条件次第で大きく変動します。
前面道路が狭く重機が入らない、隣家との距離が近く手壊しが必要、といった現場では割高になります。
豪雪地では冬季に工事が止まるため、着工時期によっても変わってきます。
解体費と並んで必ず発生するのに、見積もりの段階で忘れられがちなのが残置物、つまり家財の処分費用です。
長く住まわれたご実家には、家具、家電、布団、食器、衣類、そして仏壇や写真といったものが、そのまま残っています。
解体業者に「中身ごとお願いします」と頼むこともできますが、産業廃棄物としての処理になるため、単価は一般廃棄物より高くつきます。
一軒分をまるごと任せると、20万円から50万円程度が加算されることも珍しくありません。
ここは、ご家族で運び出せるものは運び出す、リサイクル対象の家電は家電リサイクル法に沿って処分する、といった手間をかけるだけで費用がはっきり下がる部分です。
ただ、遠方にお住まいのご相続人がこれをやり切るのは現実的に難しい。
そのあたりの線引きも含めて、現地でご相談に乗っています。
もう一つ、意外と知られていないのが解体前に補助金が使える場合があることです。
新潟県内でも、老朽危険空き家の除却に対して補助制度を設けている市町村があります。
制度の有無、対象となる建物の要件、予算枠、申請の受付時期は自治体ごとにまったく異なりますし、年度によっても変わります。
重要なのは、多くの制度が「着工前の申請」を条件にしているという点です。
壊してから申請しても、まず通りません。
解体を考え始めた時点で、物件が所在する市町村の担当窓口に一度確認してみてください。
数十万円単位で変わることがあります。
そして、ぜひ知っておいていただきたいのが「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。
一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、相続開始の直前に被相続人が一人で居住していたこと、相続時から譲渡時まで事業や賃貸に使っていないこと、そして相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること、などです。
この「3年」という期限が曲者です。迷っているうちに過ぎてしまい、数百万円単位で手取りが変わってしまった方を実際に見てきました。
適用の可否は個別事情によりますので、必ず税理士や所轄の税務署にご確認ください。
ただ、「そういう制度がある」ということだけは、頭の片隅に置いておいてほしいのです。

新潟で実際に多い、現実的な進め方
ご相談を受けたとき、私がおすすめしている順番があります。
まず、登記簿で名義を確認する。
相続登記が済んでいなければ、そこから着手します。
次に、相続人が複数いる場合は方針を共有しておく。
売却の話が進んでから「聞いていない」と言われて止まる、というのが最もよくある頓挫のパターンです。
この段階で一つ注意したいのが、とりあえず相続人全員の共有名義にしてしまうという処理です。
話がまとまらないときの折衷案としてよく選ばれるのですが、後々かなり厄介になります。
共有不動産の売却や解体には、原則として共有者全員の同意が必要だからです。
そのまま年月が経ち、共有者の誰かが亡くなれば、その持分はさらにその子どもたちへと分かれていきます。
当初3人だった関係者が、気づけば十数人になっている。
しかも面識がなく、連絡先も分からない。
こうなると、処分どころか話し合いの席を設けることすら難しくなります。
新潟の集落部で見かける「誰も手をつけられない家」の多くは、この経緯をたどっています。
そのうえで、建物の状態を専門家に見てもらう。
ここで「残して売れるのか、壊すべきなのか」の判断がつきます。
私が現地調査でまず確認するのは、屋根と基礎、そして水回りです。この三つが持ちこたえていれば、多くの場合まだ道はあります。
そして、雪です。
新潟で空き家の処分を考えるなら、動く時期は春から秋。
冬に入ると現地調査も解体工事も進みません。
「来年の春に考えます」というお返事をいただくことがありますが、その一冬で状態が変わってしまうことがある、というのは正直にお伝えしています。

決められないなら、まず状態を知ることから
空き家の処分方法には、売却、解体、活用、譲渡、国庫帰属と、いくつもの道があります。
ただ、どれを選ぶにしても共通しているのは、先延ばしにするほど選択肢が減っていくということです。
傷みが進めば「残して売る」という選択肢は消えます。
3年が過ぎれば税制の特例は使えなくなります。
名義が整理されないまま次の相続が起きれば、関係者はさらに増えて話がまとまらなくなります。
とはいえ、いきなり「売る」「壊す」と決める必要はありません。
まずはご実家が今どういう状態なのかを知る。
それだけでも、次に何をすべきかがずいぶん見えてきます。
当社では、新潟市を中心に空き家の現地調査とご相談を承っています。
建築士が実際に建物を見たうえで、残せるのか、壊したほうがいいのか、率直にお伝えします。
売却をおすすめすることも、「もう少し様子を見ましょう」と申し上げることもあります。
営業のためにどれかへ誘導するようなことはしません。
ご実家のことで気にかかっていることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
雪が来る前の今が、動くのにちょうどいい時期です。
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