「父が施設に入って5年になります。実家はそのまま残っているんですが、なかなか片付けに行けなくて…」
この話、空き家の相談で本当によく聞きます。
「分かってはいるんです。でも仕事もあるし、遠くて行けないし、兄弟と話し合いがまとまらないし」という状況で、気づいたら5年が経っていた、というパターンです。
はっきり言います。
放置が続くほど、後で動くための費用と手間が増えます。
これは脅しでも誇張でもなくて、現場で何件も見てきた現実です。
建物は人が住んでいない状態で急速に傷む。
家財は年々価値がなくなる。
相続人が増えるケースも出てくる。
「今は動けない」が「永遠に動けない」に変わっていく。
今回は「どこから手をつければいいか」を整理します。
特に「親が施設に入っている・親が亡くなってから数年が経っている」という状況の方に向けて、具体的に話します。

なぜ放置するほど費用が増えるのか
「放置しても家があるから固定資産税だけ払えばいい」と思っている方がいます。
でも実際には複数の「放置コスト」が積み重なっていきます。
建物の傷みが加速する
人が住んでいない家は、住んでいる家の数倍の速さで劣化します。
換気されないため湿気がこもり、木材が腐朽する。雨漏りが起きても誰も気づかないため、発見が遅れて被害が広がる。
シロアリが入っても分からない。
「5年後に行ってみたら思ったより傷んでいた」というのはよく聞く話で、リノベーション費用がどんどん増えます。
家財の価値がなくなる
今あるタンス・食器・農機具・貴金属、放置期間が長くなるほど「売れるもの」の価値が下がります。
湿気・カビ・虫害で状態が悪くなる。
「10年前に整理していれば買取できた」ものが、今は産廃扱いになることがあります。
整理業者に払う費用は同じでも、入ってくるお金(買取額)がゼロに近づいていきます。
相続人が増える
相続登記をしないまま時間が経つと、次の相続が発生することがあります。
「元々の相続人は兄弟3人だった→長男が亡くなって配偶者と子どもが相続人に加わった」という形で、全員の合意が必要になる。
人数が増えるほど話し合いが難しくなります。
特定空家・管理不全空家の指定リスク
建物の状態が悪化すると、自治体から「管理不全空家」や「特定空家」に指定されるリスクが上がります。
指定されて勧告を受けると、固定資産税の住宅用地軽減特例(最大6分の1)が外れて、税額が最大6倍になる可能性があります。
「何もしない」ことにコストがかかる、これが放置された空き家の現実です。
「実家じまい」で取り組む課題の全体像
実家じまいで取り組むべき課題は、大きく4つあります。
① 物(家財・荷物)の整理
家の中に残されている家具・日用品・衣類・思い出の品などの整理・処分。
量が多いため、段階的に進める必要があります。
② 権利(所有権)の整理
相続登記・名義変更の手続き。
2024年4月から相続登記は義務化されており、過去分の猶予期限は2027年3月31日です。
これが済んでいないと売却も活用も始められません。
③ 方針の整理
家・土地を将来どうするか(売却・賃貸・民泊・リノベ・解体等)を家族で決める。
方針が決まらないと、何のために整理しているのかが分からなくなります。
④ 建物の維持管理
整理が完了するまでの間、建物の状態を保つための管理。
何もしないと傷みが加速します。
一般的に進めやすい順番は「①物の整理→②権利の整理→③方針の整理」ですが、②の相続登記は①と並行して動かせます。④の維持管理は、①〜③が完了するまで継続的に必要です。

「今すぐ始められること」から動く
「全部一気にやろう」とすると心理的・体力的・費用的な負担が大きすぎて動けなくなります。
今日から始められる小さいことから動きましょう。
登記事項証明書を取得する
法務局(またはオンライン)で「登記事項証明書」を取得します(手数料600円程度)。
「誰の名義になっているか」「建物の登記はあるか」を確認します。(建物が未登記のケースが最近多い!)
これが全体の状況把握の出発点になります。
固定資産税の通知書を確認する
毎年送られてくる固定資産税の通知書を確認します。
土地・建物の評価額・課税額が分かります。
「どのくらいの規模の資産か」の把握に使えます。
家の外観だけ確認しに行く(または写真を送ってもらう)
「中の整理はまだ無理でも、外から見てどういう状態か」を確認します。
屋根・外壁・ブロック塀・庭木の状態を確認するだけで、「いつまでに何かしなければいけないか」の緊急度が把握できます。
遠方の方は、地元の知人・親戚に「外から写真を撮って送ってほしい」と頼むだけでもいいです。
家族に「今年中に一度集まって話し合いをしよう」と連絡する
「盆・年末・連休のどこかで実家に集まって、今後の方針を話し合いたい」という提案を家族にします。
決めなくていい。集まるきっかけを作るだけでいいです。
「生前整理」を今のうちに進める重要性
親がまだ元気で・施設に入っていてもある程度意思疎通ができる状態であれば、「生前整理」を進めることができます。
本人の意思を確認しながら整理できる
家財には「捨ててはいけないもの」「誰かに形見として渡したいもの」「価値のあるもの(骨董・宝飾品等)」が混在しています。
親が判断できる状態のうちに「これは残す・これは処分していい」を確認しながら進めると、整理が格段にスムーズになります。
親が亡くなった後・認知症が進んだ後では「これは捨てていいのか」が分からなくなります。
全部保管しようとすると費用がかかる。
全部捨てようとすると後悔が残る。
本人確認が最大の効率化です。
「残す・渡す・処分」の3分類を先に決める
帰省したときに「とりあえず全部取っておく」という整理は後で困ります。
「残すものはこの場所だけ」「形見分けは〇月〇日に家族が集まってやる」「迷ったら売る」という明確なルールを先に決めておくと、作業が進みやすくなります。

家財整理の実際の進め方
フェーズ1:全体量の把握と仕分け
各部屋・押入れ・物置・納屋の内容をざっくりと把握します。
「価値がありそうなもの・ないもの」の大まかな見当をつけます。
「部屋ごとに写真を撮って整理する」だけでも、遠方からオンラインで相談・方針決定ができるようになります。
フェーズ2:価値のあるものを先に確認・売却する
貴金属・宝飾品・骨董品・書画・カメラ・切手・コインコレクションは先に買取業者に見てもらいます。
「どうせ安い」と思って捨てた後に「あれは買い取れたかもしれない」という後悔は取り返せません。
「買取と整理を一括で行う業者」を選ぶと、買取額が整理費用から差し引かれてコストを抑えられる場合があります。
フェーズ3:自力処分できるものを先に
市の粗大ごみ・不用品回収・フリマアプリ(メルカリ等)での個人売却を活用して、業者に頼む量を減らします。
「一箱・一個単位でも減らす」という気持ちで進めてください。
フェーズ4:残った家財の業者依頼
最終的に残った家財を不用品回収業者・遺品整理業者に依頼します。
複数社(3社以上)から見積もりを取ることが重要です。
費用の目安(木造一戸建て・30〜40坪・中量程度):50万〜150万円程度(物量・業者によって大きく変わります)。
「一番安い業者にする」より「信頼できる業者を選ぶ」方が後のトラブルが少ない。
口コミ・紹介・資格(遺品整理士・産廃処理業の許可)を確認してください。
家財整理費用を抑えるために「やってはいけないこと」
「全部業者に頼む」だけにする
業者に全部頼む前に「売れるもの・価値があるもの」を自分で確認しないと、業者が買取できるものを一緒に処分してしまうことがあります。
安い業者ほどこのリスクが高い。
複数見積もりなしで決める
家財整理の費用は業者によって大きく違います。
同じ量でも50万円と120万円の差が出ることがあります。
必ず複数見積もりを取ってください。
「いつかやろう」で先送りし続ける
上に書いたとおりです。先送りはコストを増やします。

相続登記(名義変更)も同時並行で動かす
家財整理と並行して、相続登記を進めることが重要です。
2024年4月から相続登記は義務化されています。
「過去に発生した相続分」については2027年3月31日が期限です。
正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。
「家財整理を進めながら、相続登記も司法書士に頼む」という並行作業が現実的な進め方です。
「実家をどうするか」の選択肢を整理する
家財整理・相続登記が整ったら、「実家をどうするか」の方針を決めます。
主な選択肢と現実を整理します。
① 売却する
最もシンプルな選択肢です。
現金化できて管理責任がなくなります。
状態によっては「現状渡し売却」「解体後更地売却」「リノベーション後売却」の方法があります。
② 賃貸として使う
入居者がいれば毎月の収入が生まれ・建物の管理も楽になります。
ただし古い家は入居者が集まらないことも。
リフォームが必要なケースが多い。
③ 民泊として活用する
古民家・農家建築は「日本の農村体験」を求めるインバウンドゲストに刺さります。
弊社で申請から運営管理まで一貫してサポートできます。
④ 解体して更地にする
建物の傷みが激しい・活用の目処が立たない場合は、解体して更地にすることで管理リスク・賠償リスクを消せます。
新潟市の老朽危険空き家解体補助金が使える場合があります。
⑤ そのまま管理しながら維持する
「まだ判断できない」「いつか戻るかもしれない」という場合は、管理業者に委託して状態を維持しながら時間をかけて判断する方法があります。
清新ハウスの空き家管理サービスで対応できます。

段階的に進める3年タイムライン(例)
1年目(今すぐ):登記事項証明書の取得・外観確認・家族会議・大まかな方針決定・貴重品の取り出しと買取依頼・相続登記の準備開始
2年目:定期的な帰省のたびに少しずつ家財を片付け・相続登記の完了・大物家財の業者依頼
3年目:家財整理完了・建物のインスペクション・売却・民泊・リノベーション等の具体的な動きへ
「3年で終わらせる」という目標があるだけで、毎回の帰省に「今日はここを片付ける」という具体的な目的ができます。
「なんとなく実家に行った」と「この押入れを全部整理する」では、進み方が全然違います。
まとめ
「親が施設に入ってから5年、そのままにしている」という方へ。
放置は「コストがかからない」ではなく「見えないコストが増え続けている」状態です。
今すぐできること:登記事項証明書の取得・外観確認・家族に「今年中に話し合いをしよう」と連絡する。
この3つだけでいい。
全部一気にやろうとしなくていいです。
「どこから手をつければいいか分からない」という方、まず相談してください。
「まだ何も決まっていない」段階でも、整理することはできます。
ご相談はLINEからどうぞ
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