
「そろそろ実家の片付けや、将来どうするかを親と話し合いたいな……」
そう思いつつも、いざ切り出すと親が機嫌を損ねてしまいそうで後回しにしていませんか?
実は、実家の片付けをスムーズに進めるコツは、「将来の処分」をゴールにするのではなく、「今の親の暮らしを安全・快適にするための整理」として一緒に始めることです。
お盆休みに向け、建築士・空き家相談のプロの視点から、揉めずに笑顔で進めるための切り出し方をお伝えします。
なぜ「実家じまい」の話は揉めやすいのか
まず、この問題が難しい理由を整理しておきましょう。
子ども世代が「片付け」「処分」という言葉を使うと、親世代には「もう死んでもいいと思われているのか」「早く出ていけと言われているのか」という不安や反発として伝わってしまうことがあります。
長年暮らしてきた家には、思い出や愛着が詰まっており、それを「片付ける対象」として扱われることに、感情的な抵抗を覚える方は少なくありません。
さらに、実家の片付けというテーマは「相続」「財産」という将来の話と直結しやすく、親世代からすると「財産をあてにされているのでは」という警戒心が生まれるケースもあります。
こうした心理的な壁があるからこそ、話を切り出す「順番」と「切り口」が非常に重要になります。

発想の転換:「処分」ではなく「安全な暮らしのための整理」から始める
ここで提案したいのが、「実家じまい」を最終ゴールに置かないという考え方です。
いきなり「将来この家をどうするか」という重い話から入るのではなく、「今の暮らしを、より安全で快適にするための整理」という切り口から入ることをおすすめします。
具体的には、以下のような言葉かけです。
- 「最近、家の中で足元が危なくないか気になってて。一緒に少し片付けてみない?」
- 「廊下に物が多いと、転んだら危ないから、少し整理しようか」
- 「もし何かあったときのために、大事な書類がどこにあるか一緒に確認しておきたいな」
この切り口の良いところは、親自身の安全・快適さを目的にしているため、拒否反応が生まれにくい点です。
財産整理という硬いアプローチではなく、日々の暮らしの安全性というテーマであれば、親も前向きに応じやすくなります。

【事例】お盆帰省をきっかけに、自然に会話を始めたケース
実際の進め方をイメージしていただくために、一つの事例をご紹介します。
状況
新潟市内在住のAさん(50代)は、県外に住む80代の両親のもとへお盆に帰省しました。
以前から実家の将来について話し合いたいと思っていたものの、「片付けよう」と切り出すことに抵抗があり、何年も先延ばしにしていました。
きっかけ
帰省中、廊下に置かれた新聞紙の束につまずきそうになった母親を見て、Aさんは「危ないから、ちょっとここだけ片付けようか」と提案しました。
母親も「確かに最近つまずきそうになる」と同意し、一緒に廊下の荷物を整理することに。
展開
廊下の片付けを進める中で、自然と「この和室、もう使ってないよね」「この納戸、何が入ってるか覚えてる?」という会話が生まれました。
母親も「実はこの部屋、将来どうしようか迷ってたのよ」と、自分から将来の話を切り出してくれるようになりました。
結果
1回の帰省で「実家じまい」全体を進めることはできませんでしたが、廊下という小さな範囲の片付けから始めたことで、親自身が「片付け」に前向きな気持ちを持つきっかけができました。
その後、電話でのやり取りを重ね、翌年の帰省時には空き部屋の整理・不要な家具の処分にまで話が進んだといいます。
この事例からわかるのは、「実家じまい」は一度の帰省で完結させようとせず、小さな一歩から始めて、時間をかけて進めていくことの重要性です。

お盆帰省で実践できる、段階的な進め方
ステップ①:「安全性」を切り口に、小さな範囲から始める
廊下・玄関・階段など、転倒リスクのある場所の片付けから始めましょう。
「危ないから」という理由は、親にとって受け入れやすい動機になります。
ステップ②:思い出の品は「否定せず」一緒に振り返る
古いアルバムや思い出の品を見つけたら、「これ捨てよう」ではなく、「これ懐かしいね、どんな時のもの?」と、まず一緒に振り返る時間を作りましょう。
思い出を大切にする姿勢を見せることで、親も「全部否定されているわけではない」と安心できます。
ステップ③:重要書類の場所を確認する
権利証・保険証券・通帳など、いざというときに必要な書類がどこにあるかを、この機会に確認しておきましょう。
「もしものときに困らないように」という目的であれば、親も納得しやすい話題です。
ステップ④:将来の希望を「聞く」姿勢で臨む
「この家をどうしたい?」と一方的に決めるのではなく、「お父さん・お母さんは、この家についてどう考えてる?」と、まず親自身の希望を聞く姿勢が重要です。
親が主体的に将来を考えられるようにサポートすることが、円満な進め方の基本です。
ステップ⑤:一度で終わらせず、次回へのきっかけを残す
お盆の帰省で全てを終わらせようとせず、「次に帰ってきたときは、この部屋を一緒に見てみようか」と、次回につながる会話で締めくくりましょう。

「実家の価値を落とさない」ために知っておきたいこと
実家じまいを進める際、片付けと同時に意識しておきたいのが、建物としての資産価値を落とさないという視点です。
① 使わない部屋も、定期的な換気・通風を心がける
長期間閉め切られた部屋は湿気がこもり、カビ・木材の劣化が進みやすくなります。片付けと合わせて、定期的な換気の習慣をつけることをおすすめします。
② 荷物を減らすことで、将来の維持管理がしやすくなる
将来的に空き家として管理する場合も、荷物が多いと点検・清掃の手間が大きくなります。
早い段階での整理は、将来の管理コスト削減にもつながります。
③ 建物の状態を専門家の目でチェックしてもらう
片付けが進んだタイミングで、床下・屋根裏など普段見えない部分の状態を、一度専門家に確認してもらうことをおすすめします。
早期に問題が見つかれば、対処コストを抑えられます。

兄弟姉妹がいる場合の進め方
実家じまいは、一人っ子でない限り、兄弟姉妹との情報共有も重要なポイントです。
- 片付けの進捗を、こまめに兄弟姉妹に共有する
- 「自分だけで勝手に進めている」という誤解を生まないよう配慮する
- 将来の実家の活用方針(誰かが住む・売却する・賃貸に出すなど)について、早い段階から話し合っておく
将来的な相続の話まで発展した場合、兄弟間の認識のズレがトラブルの原因になることがあります。
片付けの段階から、オープンなコミュニケーションを心がけることをおすすめします。

まとめ
実家じまいをスムーズに始めるためのポイントを整理します。
- 「処分」ではなく「今の暮らしを安全にする整理」という切り口から始める
- 廊下・玄関など小さな範囲の片付けから、自然な会話のきっかけを作る
- 思い出の品は否定せず、まず一緒に振り返る姿勢を見せる
- 親自身の希望を「聞く」姿勢で臨み、一方的に決めない
- 一度の帰省で完結させようとせず、時間をかけて段階的に進める
- 片付けと合わせて、換気・専門家によるチェックで建物の資産価値も維持する
- 兄弟姉妹がいる場合は、進捗をこまめに共有する
「実家じまい」は、一朝一夕には進みません。焦らず、親の気持ちに寄り添いながら、小さな一歩からお盆休みのこの機会に始めてみてください。
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