
「誰も住んでいない実家を、リフォームして誰かに貸したいな」と考えたとき、一番不安なのは「この古いお家、本当にまだ人に貸せる状態なのかな?」ということではないでしょうか。
後々、入居者様とのトラブルを防ぎ、安心して家賃収入を得るためには、事前の「建物の健康診断」が欠かせません。
今回は、私たちが専門家として実践している、床の傾きや雨漏りのサインなど、所有者様が自分でできる実家のチェックポイントを3つに絞って分かりやすく解説します。
なぜ「貸す前」の見極めが重要なのか
空き家を賃貸として流通させたいという相談は年々増えていますが、ここで見落とされがちなのが、「貸せる状態かどうか」の見極めです。
古い建物の雨漏りや傾き、配管の老朽化を放置したまま貸し出すと、入居後に不具合が発覚し、入居者との間で修繕義務・賠償責任をめぐるトラブルに発展することがあります。
民法上、賃貸物件のオーナーには「建物を使用収益させる義務」があり、入居後に発覚した重大な欠陥は、原則としてオーナー側の負担で修繕する必要があります。
「見た目はきれいだから大丈夫だろう」という判断だけで貸し出しを進めるのは危険です。
本格的なリフォーム・インスペクション(建物状況調査)に進む前に、まずご自身でできる範囲のセルフチェックを行い、大きな問題がありそうかどうかの「見極め」をしておくことが、後悔しない空き家活用の第一歩です。

セルフチェック①:床の傾き・沈みを確認する
まず確認したいのが、建物の構造的な健全性に関わる床の状態です。
チェック方法
- ビー玉やゴルフボールを床に置いて転がしてみる:床が水平であればほとんど動かず、傾いていれば一定方向に転がっていきます。各部屋で複数箇所試してみましょう。
- 歩いたときに床がフワフワと沈む感覚がないか確認する:特に廊下・水回り付近で床の沈みを感じる場合、床下の根太や大引きが腐食している可能性があります。
- 建具(ドア・引き戸・窓)の開閉に違和感がないか確認する:ドアが片側だけ引っかかる、隙間が斜めにできているといった症状は、建物自体が傾いているサインであることがあります。
- 壁や柱に対して、床のラインが平行になっているか目視で確認する:明らかな傾きが視覚的にわかる場合は要注意です。
何がわかるか
床の傾き・沈みは、地盤の不同沈下(土地の一部だけが不均一に沈む現象)や、シロアリ被害・木材の腐食によって引き起こされることが多くあります。
特に長期間空き家だった建物は、換気不足による湿気の蓄積で床下の木材が傷んでいるケースが少なくありません。
軽微な傾きであれば調整可能な場合もありますが、構造的な問題が疑われる場合は、専門家による詳細な調査(床下点検・地盤調査)が必要になります。

セルフチェック②:雨漏りのサインを見つける
次に確認したいのが、雨漏り・水漏れの痕跡です。
雨漏りは一度発生すると建物内部の腐食・カビの原因になり、賃貸物件として最も嫌われるトラブルの一つです。
チェック方法
- 天井・壁に茶色いシミがないか確認する:円形や帯状の茶色いシミは、過去または現在進行形の雨漏りのサインです。
- 天井裏(点検口がある場合)を覗いてみる:野地板や梁に黒ずみ・湿り気・カビがないか確認します。点検口がない場合は、無理に天井を開けようとせず、専門家に依頼してください。
- 窓まわり・サッシ周辺のコーキングにひび割れがないか確認する:外部からの雨水侵入経路として、窓まわりは特に多い箇所です。
- 屋根の状態を地上から双眼鏡などで確認する:瓦のズレ・棟板金の浮き・コケの発生などが見られないか確認します。屋根に登っての確認は危険なため絶対に避けてください。
- 梅雨時・大雨の翌日に室内を見回る:実際に雨が降った直後は、雨漏りの痕跡が最も見つかりやすいタイミングです。
何がわかるか
雨漏りは、屋根材・防水シートの劣化、棟板金や谷板金のサビ、外壁のひび割れなど、さまざまな原因から発生します。
空き家期間中に発見が遅れると、被害が構造材まで及んでいることもあり、その場合は大規模な修繕が必要になります。
早期発見できれば、コーキング処理や部分補修といった比較的低コストな対処で済むケースも多いため、日頃からのチェックが重要です。

セルフチェック③:給排水管・水回りの老朽化を確認する
3つ目のポイントは、目に見えにくい配管まわりの老朽化です。
賃貸として貸し出した後にトラブルになりやすいのが、この給排水管の問題です。
チェック方法
- 蛇口をひねって、水の出方・濁りを確認する:長期間使われていなかった水道管は、内部にサビ・水垢が溜まっている可能性があります。最初に濁った水が出る場合は要注意です。
- 床下点検口から配管の状態を目視する:配管に白い粉状の付着物(水漏れによるカルシウム分の析出)や、明らかな腐食・変色がないか確認します。
- 排水の流れが悪くないか確認する:キッチン・浴室・洗面所で実際に水を流し、排水の速度に問題がないか確認しましょう。
- 給湯器の年式・動作状況を確認する:給湯器の耐用年数は一般的に10〜15年程度とされています。設置年が古い場合、貸し出し前の交換を検討する必要があります。
- 水道メーターが回っていないか確認する(全ての蛇口を閉めた状態で):メーターが回り続けている場合、どこかで漏水している可能性があります。
何がわかるか
給排水管の老朽化は、入居後の「水漏れ」「排水詰まり」「異臭」といったクレームに直結しやすい要素です。
特に空き家期間が長い物件では、配管内部の劣化が進んでいることが多く、目視だけでは判断しきれない部分も多いため、専門業者による配管内部のカメラ調査を検討することもおすすめします。

セルフチェックだけで判断してはいけない理由
ここまで紹介した3つのチェックポイントは、あくまで所有者ご自身でできる範囲の「見極め」であり、専門的な建物状況調査(インスペクション)の代わりにはなりません。
セルフチェックで問題が見当たらなかった場合でも、以下のような理由から、賃貸として貸し出す前には専門家による本格的な調査を強くおすすめします。
- 床下・天井裏の奥深くまで確認するには専門的な機材・知識が必要
- シロアリ被害は素人目には判断が難しいことが多い
- 電気配線の老朽化は、専門家でなければ安全性を判断できない
- 耐震性能の評価には、構造計算を伴う専門的な診断が必要
セルフチェックは「大きな問題がありそうかどうか」の一次判断として活用し、賃貸として実際に流通させる前には、必ず専門家によるインスペクションを受けることをおすすめします。

セルフチェックの結果、どう対応すればいいか
① 特に問題が見当たらなかった場合
そのまま専門家によるインスペンションに進み、詳細な状態を確認した上でリフォーム計画を立てましょう。
② 軽微な問題が見つかった場合(コーキングのひび割れなど)
部分的な補修で対応可能なケースが多く、リフォームと合わせて対処することで、コストを抑えられます。
③ 構造的な問題(床の傾き・雨漏りの痕跡が広範囲)が見つかった場合
賃貸としての活用よりも、売却・解体・利活用の他の選択肢も含めて、専門家と相談しながら方針を検討することをおすすめします。
無理に賃貸として貸し出すと、入居後のトラブルリスクが大きくなります。

まとめ
空き家を賃貸として流通させる前のセルフチェックについて、覚えておいてほしいポイントを整理します。
- 貸し出し前の「建物の健康診断」を怠ると、入居者とのトラブルに発展するリスクがある
- チェック①:床の傾き・沈みは、地盤沈下やシロアリ被害のサインになりうる
- チェック②:雨漏りの痕跡は、天井のシミ・屋根の状態・大雨翌日の見回りで確認できる
- チェック③:給排水管の老朽化は、水の出方・排水速度・給湯器の年式で判断する
- セルフチェックはあくまで一次判断。最終的には専門家によるインスペクションが必須
- 問題の深刻さに応じて、賃貸・売却・解体など複数の選択肢を柔軟に検討する
大切な実家を安心して人に貸し出すために、まずはご自身でできる範囲の「健康診断」から始めてみてください。
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