「実家を売ろうとしたら、登記の名義がおじいちゃん(曽祖父)のままで、全然動けない」
この相談、本当に増えています。
「まあいつかやればいい」「急いでいないから後回し」と思っているうちに10年・20年・30年が経ち、その間にまた相続が発生して相続人がどんどん増えていく。
最終的に「名義人が明治時代の先代で、相続人が何十人もいる」という状況に陥ったとき、解決に何年もかかるケースがあります。
はっきり言います。
相続登記は「義務化」されました。もう「後回し」が通用しない時代です。
そして、義務化以前の分も期限があります。
今回は、相続登記の義務化の内容と、実家の名義を今すぐ確認すべき理由、そして何から始めればいいかを話します。

相続登記とは何か。なぜ放置されてきたのか
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)名義の不動産(土地・建物)を、相続した人の名義に変更する登記手続きです。
これまでは「義務ではなかった」
2024年4月以前、相続登記に法的な期限も義務もありませんでした。
やらなくても罰則がなかった。だから「急ぎじゃないから後でいいか」という判断が積み重なり、日本全国で「誰の土地か分からない土地」が大量に生まれました。
国土交通省の調査によると、全国の土地の約22%が「所有者不明土地」になっているとされています。
面積にすると、九州の面積を超えるほどの土地が「持ち主が誰か分からない」状態です。
この問題を解決するために、2024年4月から相続登記が義務化されました。
相続登記義務化の内容。知らないと損をする3つのポイント
ポイント①:義務化の内容
2024年4月1日から、相続によって不動産を取得した人は、相続を知った日から3年以内に相続登記をしなければならないことになりました。
正当な理由なく3年以内に登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
ポイント②:過去の相続分にも適用される
これが非常に重要なポイントです。
2024年4月1日以前に発生した相続についても、義務化の対象になります。
ただし、経過措置として「2027年3月31日まで」という猶予期間が設けられています。
つまり「10年前・20年前に発生した相続で、まだ登記していない」という場合も、2027年3月31日までに登記しなければ過料の対象になる可能性があるということです。
この期限まで、残り約1年8ヶ月(2026年8月現在)です。
すでにギリギリのタイミングになっています。
ポイント③:「相続人申告登記」という応急処置
遺産分割協議がまとまらない・相続人が多くて全員の合意が取れないという場合でも、「相続人申告登記」という簡易な手続きを使えば、とりあえず義務を果たしたとみなしてもらえます。
「自分がこの不動産の相続人の一人です」と法務局に申し出るだけで、ひとまず期限内の義務を満たしたと認められます。
正式な遺産分割協議が完了するまでの「つなぎ」として有効な制度です。

まず「実家の名義」を確認する方法
「うちの実家、名義がどうなっているか分からない」という方、今すぐ確認できます。
① 法務局で「登記事項証明書」を取得する
法務局(またはオンラインの「登記ねっと」サービス)で、実家の「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得できます。
費用:600円(書面での交付)または500円(オンライン)
取得するには、対象物件の所在地・地番が必要です。
「実家の地番が分からない」という場合は、固定資産税の通知書に地番が記載されているので確認してください。
② 登記事項証明書で確認すべきこと
取得した登記事項証明書の「甲区(こうく)」という欄を見てください。ここに「所有者」の名前と住所が記載されています。
チェックポイント:
- 名義人が「亡くなった方(被相続人)」のままになっていないか
- 名義人が「祖父・曽祖父など2代以上前の先代」になっていないか
- 住所が「現在の住所と一致しているか」(名義人が生前に引っ越した場合、住所変更の登記も必要)
「名義人の名前が知らない人の名前になっている」という場合は、複数世代にわたる相続が重なっている可能性があります。
司法書士に相談してください。

「名義がそのままで何が困るのか」具体的な問題を話します
「登記が古いままでも、固定資産税払ってるし、別に住んでいるから問題ないんじゃ?」と思う方がいます。
それは平和な時代の話。
いざ何かをしようとしたとき
売却しようとしたとき
不動産を売却するためには、名義人(所有者)が売買契約に署名・押印する必要があります。
名義人が亡くなっている場合、まず相続登記を完了させてから売却の手続きに入ります。
相続登記が完了するまで、売却は一切進められません。
相続人が多い・連絡が取れない相続人がいる・遺産分割協議でもめている、こうした問題があると、登記完了まで数ヶ月〜数年かかることがあります。
「今すぐ売りたい」のに「登記が完了しないと動けない」という状況になります。
建て替え・リフォームをしようとしたとき
建築確認申請には、土地の所有者情報が必要です。
名義が古いままだと、申請手続きで支障が出ることがあります。
解体しようとしたとき
建物を解体する際も、土地・建物の所有者情報が必要です。
名義が違うと解体工事の手続きが複雑になります。
担保・融資を受けようとしたとき
金融機関の融資を受けるために不動産を担保にしようとする場合、名義が現在の所有者でないと担保設定ができません。

「2代・3代遡る相続」は特に危険。早く動くほど簡単
名義変更を放置するほど、問題が複雑になっていく理由を説明します。
相続人は「代を重ねるほど増える」
祖父の名義が残っている→祖父の子どもたち(父・叔父・叔母)が相続人→さらにその中の一人が亡くなれば、その子どもたち(あなたのいとこ)にも相続権が移る。
10年・20年放置すれば、相続人が10人・20人を超えることがあります。
100人近くになった事例も実際に存在します。
全員の合意(遺産分割協議書への署名・実印・印鑑証明)がなければ登記できないため、一人でも「ハンコを押さない」という相続人がいると全体が止まります。
早く動くほど手続きが簡単
今、名義が親(1世代前)のまま→相続人が兄弟姉妹だけ→全員が健在で連絡が取れる→比較的スムーズに手続きできる。
3年後、さらに誰かが亡くなっていた→相続人が増える→連絡が取りにくくなる→手続きが複雑になる。
「今すぐ動く理由はないかもしれないけれど、動くなら早い方がずっと楽」というのが、相続登記のリアルです。

実際に相続登記を進めるための手順
「分かった。じゃあ何から始めればいいか」を整理します。
STEP 1:登記事項証明書を取得して名義を確認する(即日)
法務局またはオンラインで取得。
名義人が誰になっているかを確認します。
STEP 2:相続人を確定する(1〜2ヶ月)
被相続人の「出生から死亡までの全戸籍」を取得して、法定相続人全員を確定します。
これが最初の難関で、被相続人が引っ越しや離婚歴がある場合、複数の市区町村から書類を取り寄せる必要があります。
STEP 3:遺産分割協議を行う
相続人全員で「誰が何を相続するか」を話し合い、遺産分割協議書を作成します。
全員の実印と印鑑証明書が必要です。
STEP 4:司法書士に登記申請を依頼する
必要書類が揃ったら、司法書士に登記申請を依頼します。
費用の目安:
- 司法書士報酬:5万〜15万円程度(相続人数・権利関係の複雑さで変わる)
- 登録免許税:固定資産税評価額×0.4%
- 書類取得費用:数千円〜1万円程度
複雑な案件(相続人が多い・複数代にわたる相続など)では、これより大幅に高くなることがあります。
2027年3月31日が期限、今動いても余裕がない
相続人の確定・遺産分割協議・書類準備・登記申請、これらのプロセスには数ヶ月〜1年以上かかることがあります。
「2027年3月31日が期限だからまだ大丈夫」と思っている方、複雑な案件では今すぐ動き始めないと間に合わない可能性があります。

まとめ
相続登記の義務化と名義確認について、覚えておいてほしいポイントです。
- 相続登記は2024年4月から義務化。相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料
- 過去の相続分にも適用。猶予期限は2027年3月31日(残り約1年8ヶ月)
- 「相続人申告登記」という応急処置で、ひとまず期限内の義務を果たせる
- まず法務局で「登記事項証明書(600円)」を取得して名義を確認する
- 名義が2代・3代前のままだと、相続人が急増して手続きが複雑になる
- 早く動くほど手続きが楽になる。先延ばしは絶対に損
- 手続きには数ヶ月〜1年以上かかることがある。今すぐ動き始める必要がある
「うちの実家の名義、確認したことがない」という方、今日の最初の一歩は「法務局で登記事項証明書を取ること」だけです。600円で現状が分かります。そこから始めてください。
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