
少し前まで、リビングの間取りを考えるとき、最初に「テレビをどこに置くか」を決めていたと思います。
テレビの位置が決まれば、ソファの向きが決まり、リビング全体の動線が決まる、そんな時代がありました。
でも最近、打ち合わせをしていてふと気づくことがあります。
「テレビの位置、どこでもいいです」
「テレビを置かないかもしれないです」
という声が、以前より明らかに増えているのです。
リビングのテレビをめぐる状況が、静かに、しかし確実に変化しています。
今回は、この変化を踏まえた上で、後悔しないテレビの位置とテレビボード(TVボード)の選び方について、建築士の視点からお話しします。
テレビの「リビングの主役」時代が終わりつつある
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、リビングにおけるテレビの立ち位置は、ここ5〜10年でかなり変化しました。
変化の背景
最大の要因は、映像コンテンツの視聴方法の多様化です。
Netflix・Amazon Prime Video・Disney+・YouTubeなど、スマートフォンやタブレット、ノートパソコンで手軽に好きなコンテンツを楽しめるようになりました。
「テレビ(放送)を見る」という行為そのものの頻度が下がり、特に20〜40代の子育て世帯では「ほとんどテレビ放送は見ない」という家庭も増えています。
また、在宅勤務の定着により、リビングに求められる機能も変わりました。
「家族が集まってテレビを見る空間」という一本軸から、「仕事・勉強・くつろぎ・食事が共存する多機能な空間」へとシフトしています。
その結果、テレビはリビングの「中心」ではなく、あくまで「選択肢の一つ」という位置づけになってきているのです。

それでも「テレビをなくす」には踏み切れない理由
では、テレビをリビングからなくせばいいのかというと、そう簡単でもありません。
ニュース・スポーツ中継・子どもの教育番組・NHK・地元のローカルニュース(新潟は天候・交通情報が重要です)。
こうした「やっぱりテレビで見たい」というコンテンツは根強く残っています。
また、「来客時のBGMとして映像を流す」「家事しながら音声だけ聞く」「子どもが小さいうちはEテレが欲しい」という実用的な需要もあります。
多くのご家族が最終的に落ち着くのは「テレビはあるけれど、主役にはしない」という方向性です。
これが、最近の住宅設計でテレビまわりに変化が生まれている本質的な理由です。
テレビ位置の「昔の正解」と「今の正解」
昔の正解:ソファの正面、部屋の中心線上に
以前は、リビングのソファの正面にテレビを配置し、すべての家具・動線をテレビを見るために最適化するのが「正解」でした。
テレビを中心に、ソファの向き・ダイニングテーブルの位置・照明の角度が決まる。
いわばテレビがリビングの「設計起点」でした。
今の正解:テレビは「あるけれど邪魔にならない」場所へ
現在のご家族の多くが求めているのは、「必要なときは快適に見られるが、見ていないときは存在感を消せる」テレビの在り方です。
具体的には、以下のような変化が起きています。
① 壁掛けテレビの普及
テレビボードをなくし、テレビを壁に直接取り付ける「壁掛けスタイル」が急速に増えています。
テレビが宙に浮いたような形になるため、床面がすっきりし、テレビボード周辺のコード類が目立たなくなります。
ただし、壁掛けにするには新築・リフォーム時に壁内への配線処理(電源・HDMI・アンテナ線を壁内に通す)と下地補強が必要です。
「入居後に壁掛けにしたくなった」という場合、壁の解体工事が必要になるため、新築時に「将来壁掛けにするかもしれない」という意向を設計者に伝えておくことを強くおすすめします。
② ニッチ(壁のくぼみ)への埋め込み
壁を少し掘り込んで、テレビがその中に収まるニッチを設けるスタイルも人気です。
壁掛けよりもさらに「壁の一部にテレビが溶け込んでいる」印象になり、空間のすっきり感が高まります。
③ 可動式・隠せるテレビ台
使わないときはテレビを収納できる可動式のスタンド・引き出し式のボードを採用するスタイルも出てきています。
「テレビを見ないとき、見た目をなくしたい」というご要望に応える選択肢です。

テレビボード(TVボード)の在り方も変化している
テレビと並んでリビングの印象を左右するのが「テレビボード」です。
この在り方も、大きく変化しています。
変化①:「大きくて低い」から「コンパクトで存在感を消す」へ
かつてのテレビボードは、テレビのサイズに合わせた大型のものが主流でした。
DVDプレーヤー・ゲーム機・各種リモコン・ケーブル類を収納するため、収納スペースが大きなテレビボードが求められていたのです。
しかし現在は、録画機・DVDプレーヤーの利用が減り、動画はストリーミングに移行しています。
テレビボードに収納すべきものが減り、「コンパクトでシンプルなテレビボード」または「テレビボード自体をなくす」という方向に向かっています。
変化②:「フロア型」から「壁付け型(フローティング)」へ
壁から浮かせて取り付ける「フローティングタイプのテレビボード(ウォールユニット)」が人気を集めています。
床面が見えることで部屋が広く見える視覚効果があり、床のお掃除もしやすくなります。
また、フローティングタイプはテレビボードとテレビが一体的に「壁のデザインの一部」として見えるため、インテリアとしての完成度が上がります。
変化③:「収納重視」から「デザイン重視+必要最小限の収納」へ
タンスのような大容量収納型のテレビボードから、必要最小限の収納(リモコン・小物程度)とデザイン性を両立させたシンプルなボードへ。
テレビまわりを「コーナーとして飾る」感覚に近づいています。

新潟の住宅で「テレビ位置」を考えるときに注意すること
建築士として、新潟の住宅に特有の観点も付け加えておきます。
① 直射日光への配慮
新潟は夏に強い日差しがあり、西向きの窓からの西日が強烈です。
テレビに直射日光が当たると、画面の反射でほとんど見えなくなります。
テレビの設置壁と窓の方向は必ず確認してください。
理想は、テレビを「窓に対して垂直な壁(窓の横の壁)」に設置すること。
窓の正面の壁にテレビを設けると、昼間はほぼ映らない状態になることがあります。
② 冬の「暖房器具とテレビの配置」
新潟の冬は石油ファンヒーター・ストーブを使う家庭が多いです。
暖房器具の近くにテレビを置くと熱による故障リスクがあります。
また、エアコンの吹き出し口がテレビを直撃する位置関係も避けたい配置です。

まとめ:テレビは「存在感を選べる」時代になった
テレビがリビングの絶対的な主役だった時代から、「あるけれど存在感をコントロールできる」時代へ、これが現在のリビング設計のテレビをめぐる変化の本質です。
整理すると、今の時代に合った方向性は以下の通りです。
- テレビは「必要だが主役にしない」スタンスで計画する
- 壁掛けスタイルを検討するなら、新築・リフォーム時に配線処理と下地補強を必ず依頼する
- テレビボードは「大型収納型」より「フローティング型・シンプル型」が空間をすっきりさせる
- 直射日光が当たらない壁への配置と、窓の方向との関係を必ず確認する
- 「テレビを置かない可能性」も設計上想定し、フレキシブルに対応できるコンセントと配線を整えておく
テレビは今後も形を変えながら私たちの生活に存在し続けるでしょう。
でもその在り方は、「画面の前に家族が集まる」から「必要なときだけさりげなく使える道具」へと、確実にシフトしています。
リビングのテレビとテレビボードの計画は、「今どう使うか」と「5年後・10年後もどう使いたいか」を合わせて考えることが、後悔しない住まい設計の秘訣です。
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