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犬将軍日記

2026/08/10

実家が「借地(地主から土地を借りている)」の上にある場合の空き家問題!相続・処分時に地主と揉めないための交渉手順

実家が「借地(地主から土地を借りている)」の上にある場合の空き家問題!相続・処分時に地主と揉めないための交渉手順

「実家を片付けようと思ったら、実は地主さんから土地を借りている借地だった……」

このような場合、一般的な空き家処分よりも慎重に手続きを進める必要があります。

地主さんへの挨拶のタイミングや、建物を壊す・売る際にかかる費用のルールを知らないと、思わぬ法律トラブルに発展することも。

今回は、空き家支援法人の視点から、借地の上にある実家をトラブルなくスムーズに整理するための基本ステップをお話しします。

はじめに:「借地」とはどういう状態か

「借地」とは、地主から土地を借り、その上に建物を建てている状態のことです。

土地は地主のものですが、建物は借地人(借りている人)が所有します。

日常的な感覚では「家と土地はセット」と思いがちですが、「建物の所有権」と「土地の利用権(借地権)」が別人に帰属しているのが借地の特殊性です。

借地の上に建物を建てる権利を「借地権」と言います。

借地権は立派な財産であり、相続の対象にもなります。

都市部では、借地権の評価額が土地の更地価格の60〜70%程度になることも珍しくありません。

「価値がないもの」ではなく、きちんと対応すれば資産として活用できる財産です。

一方、借地権には土地の所有権と異なる特殊なルールが適用されます。

この「借地特有のルール」を知らずに動いてしまうと、地主との関係が悪化したり、本来不要な費用を払わされたり、あるいは本来もらえるべきお金を受け取れなかったりという事態が起こります。

実家が「借地(地主から土地を借りている)」の上にある場合の空き家問題!相続・処分時に地主と揉めないための交渉手順

借地権の種類。「旧法借地権」と「新法(普通・定期)借地権」の違い

借地権には、大きく2種類の法律が関係します。

相続した借地がどちらに該当するかによって、対応方法が変わります。

旧法借地権(1992年以前の契約)

1992年(平成4年)8月1日以前に締結された借地契約は、旧借地法に基づく「旧法借地権」です。

旧法借地権は借地人の保護が非常に強く、地主が正当事由なく更新を拒絶することは実際上ほぼ不可能です。

事実上半永久的に土地を借り続けられるため、旧法借地権は高い資産価値を持ちます。

新法普通借地権(1992年以降の契約)

1992年8月1日以降の借地借家法に基づく「普通借地権」です。最初の契約期間は30年以上(木造等の場合)、更新後は20年、その後は10年ずつの更新となります。

更新について正当事由が必要な点は旧法と同様で、借地人の保護は依然として強い。

定期借地権

1992年以降の制度で、契約期間満了で借地関係が終了する仕組みです。

存続期間は50年以上(一般定期借地権)、または30〜50年(建物譲渡特約付き借地権)などの種類があります。

期間満了後は必ず返還しなければならないため、旧法・普通借地権より流通・売却が難しいのが特徴です。

相続した実家の借地がどの種類に該当するかは、最初に行う「契約書の確認」で判明します。

実家が「借地(地主から土地を借りている)」の上にある場合の空き家問題!相続・処分時に地主と揉めないための交渉手順

相続発生直後に最初にやるべきこと

借地上の実家を相続したとわかったら、以下の順序で動いてください。

ステップ①:借地契約書を見つけ、内容を確認する

最も重要な最初のステップが、借地契約書(土地賃貸借契約書)の確認です。以下の内容を必ず確認してください。

  • 契約締結年月日(旧法か新法か)
  • 地代の金額と支払い方法・支払い先
  • 契約期間・更新日
  • 増改築・転貸・譲渡に関する条件
  • 解約・原状回復に関する条件

契約書が見当たらない場合は、地主側(地主または地主の相続人)に連絡し、写しを確認させてもらうか、地主側で保管している内容を確認します。

ステップ②:地代の滞納がないか確認し、継続支払いの手続きをする

借地権を維持するためには、地代を遅滞なく支払い続けることが最低条件です。

被相続人が死亡してから遺産分割協議中の期間も、地代は発生し続けます。

滞納が続けば借地契約を解除される可能性があり、借地権そのものが消滅してしまう恐れがあります。

遺産分割協議中は、相続人の一人が代表して地代を支払い続けるか、地主に事情を説明した上で支払い方法を相談してください。

ステップ③:地主への挨拶を早めに行う

これが、地主との関係を良好に保ち、その後のすべての手続きをスムーズにするための最重要ポイントです。

相続が発生したことを、なるべく早く地主に対して口頭または書面で報告してください。

地主への挨拶に遅れたり、黙って色々な手続きを進めようとしたりすると、「連絡もなしに勝手に動いている」という印象を与え、その後の交渉が格段に難しくなります。

初回の挨拶では、相続が発生した事実と自分が相続した旨の報告、地代の支払いを継続する意思表明、今後どのように対応したいかを相談したい旨を伝えるだけで構いません。

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知っておきたい重要な法律知識:相続では承諾料・名義変更料は不要

ここで、多くの方が誤解している重要な法律知識をお伝えします。

相続による借地権の引き継ぎに、地主への承諾料・名義変更料は原則として必要ありません。

借地権を地主に無断で「譲渡」した場合は契約解除の対象になりますが、相続は「譲渡」にはあたりません。

法定相続人が借地権を引き継ぐことは、民法上当然の権利であり、地主の承諾は不要で、承諾料・名義変更料を支払う義務もないのです。

実際の現場でも、借地人が変わるときは名義変更料を要求できると考えている地主さんは多く、相続にあたり地主から承諾料を請求されるケースがあります。

しかし、これは法律上根拠のない請求です。

ただし、地主との長年の関係性や今後の円滑な交渉を考えると、法律上の権利を楯に強硬に拒否するのではなく、「法律上は不要とされていると理解しているが、これからも良い関係を続けていきたい」というスタンスで丁寧に対応することが実務的には有効なケースもあります。

こうした交渉の進め方については、弁護士や空き家アドバイザーと相談することをおすすめします。

なお、法定相続人以外の第三者への遺贈(遺言で相続人でない人に贈与すること)の場合は、地主の承諾と承諾料が必要になります。

借地上の空き家を「売却」する場合の手順と費用

相続した借地上の空き家を売却(借地権付き建物の売却)する場合、通常の不動産売買とは異なる手順と費用が発生します。

手順①:建物の相続登記を完了させる

借地権については登記されていないことが多いため名義変更手続きは不要なことが多いですが、建物については亡くなった人から相続人へ名義変更手続きを行わなければなりません。

相続登記が完了していないと、売却手続きを行えないため、早めに完了させておくことが重要です(2024年4月からの相続登記義務化も踏まえて対応ください)。

手順②:地主への事前連絡と交渉

借地権を第三者に売却するには、地主の承諾が必要です。地主に売却の意向を伝え、承諾を求めます。

このとき地主側から「買い戻し(地主自身が購入)」の申し出がある場合もあります。

地主への売却は手続きが最もシンプルで、譲渡承諾料も発生しないため、条件が合えば最善の選択肢の一つです。

手順③:譲渡承諾料(名義変更料)の支払い

地主が第三者への売却を承諾した場合、承諾の対価として「譲渡承諾料(名義変更料)」を地主に支払うのが一般的です。

譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度とされていますが、地主との交渉次第で金額が変わります。

売却を進める前に、譲渡承諾料の金額を地主と事前に確認・合意しておくことが重要です。

売却後に「思ったより高い承諾料を請求された」というトラブルを防ぐためです。

手順④:専門の仲介業者・司法書士との連携

借地権付き建物は通常の不動産より取引が複雑なため、借地権の扱いに慣れた不動産会社・司法書士の関与が不可欠です。

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地主が譲渡を認めない場合の「借地非訟」という選択肢

地主が借地権の売却・譲渡を認めない場合、または法外に高額な承諾料を請求してきた場合、法的手段として「借地非訟(しゃくちひしょう)」を利用することができます。

借地非訟とは、借地人が裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を求める手続きのことで、借地借家法第19条に基づく法的手段です。

借地人からの申し立てが却下されるのは非常に稀で、裁判所は最終的に地主に代わる借地権売却の許可(「代諾許可」)を出すことが一般的です。

ただし、法的な強制力で解決が可能とはいえ、金銭的・精神的負担も大きい手段のため、あくまで最終手段として位置づけ、まずは誠実な交渉で解決を図ることが大切です。

借地上の空き家を「解体して更地返還」する場合の注意点

借地上の建物を解体し、更地にして地主に土地を返還するという選択肢もあります。

借地の管理や地代の支払いを止めたい場合に選ばれることがあります。

ただし、更地返還には以下の点に注意が必要です。

① 原状回復義務がある

借地を返還する際、借地人には原状回復義務があります。

すなわち、借地上に存在する建物を取り壊し、更地にして地主に返還する必要があります。

解体費用は借地人(相続人)の負担です。

② 借地権の「無償返還」は経済的損失になりうる

借地権は財産価値を持つ財産です。更地にして無償で返還することは、本来売却で得られたはずの借地権の価値を放棄することを意味します。

「地主に頼まれたから返した」「管理が面倒だったから返した」という理由で、多額の借地権価値を失ってしまうケースが現実にあります。

必ず、返還前に「売却・地主への買い戻し請求・借地権の譲渡」など他の選択肢を検討してから判断してください。

③ 離職料(立退料)は「更地返還」の場合には発生しない

誤解されやすいのですが、「離職料(立退料)」は、地主側の都合によって借地人が立ち退かざるを得ない場合に地主が払うものです。

借地人自身が自発的に更地返還する場合には、地主への対価を求めることは基本的にできません。

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借地上の空き家を「賃貸に出す」場合の注意点

解体・売却だけでなく、建物を賃貸に出して活用するという選択肢もあります。

この場合は、原則として地主の承諾が必要です(「転貸」となるため)。

ただし、判例上は一定の条件のもとで「借地上の建物を第三者に賃貸することは、必ずしも地主の承諾が不要」という解釈もあります。

この点は契約書の内容・地主との関係によって対応が異なるため、事前に専門家(弁護士・司法書士)に確認することをおすすめします。

【事例①】相続後すぐに地主と話し合い、地主への売却がスムーズに決まったOさんのケース

状況

新潟市在住のOさんは、旧法借地権付きの実家(築55年・空き家)を相続しました。

地代は月5,000円と低額でしたが、建物の老朽化が激しく、維持管理が難しい状況でした。

対応

相続後すぐに地主に挨拶に行き、「建物の相続登記を済ませた後、今後どう処分するか相談したい」と伝えました。

話し合いを重ねた結果、地主が「土地を完全に取り戻したい」という意向を持っていたことがわかり、地主自身への売却(借地権の買い取り)という形で話がまとまりました。

結果

地主への売却は、第三者への売却と違って譲渡承諾料が不要で、手続きも比較的シンプルに進みました。

売却価格は借地権評価額をもとに専門家が査定し、双方合意の上で決定。Oさんは地代の支払いと老朽化建物の管理から解放されました。

【事例②】地主が売却承諾を渋り、借地非訟を視野に入れた交渉でまとまったPさんのケース

状況

Pさんは相続した借地上の空き家(新法普通借地権・残存期間15年)の売却を希望しましたが、地主が「誰が来るか分からない第三者には売らないでほしい」と言い、承諾を渋っていました。

対応

そのまま交渉が膠着する可能性があったため、借地権に詳しい不動産会社と弁護士に相談。

「地主の承諾が最終的に得られない場合は借地非訟という法的手段があること」を念頭に置きつつ、粘り強く交渉を続けました。

最終的に、地主が信頼できると感じた個人の買い手を紹介する形で条件を満たし、地主の承諾と合意した譲渡承諾料で売却が成立しました。

結果

借地非訟には至らずに解決しましたが、法的手段の存在を知っていたことで「焦らず粘り強く交渉できた」とPさんは話しています。

早い段階で専門家に相談したことが、スムーズな解決につながりました。

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借地問題解決に必要な専門家の連携

借地上の空き家の問題は、複数の専門家が関わる複合案件です。

司法書士:建物の相続登記・借地権の登記(地上権の場合)・売買の権利移転登記を担当

弁護士:地主との交渉・借地非訟の申し立て・法的リスクの判断

不動産会社(借地権専門):借地権付き建物の査定・売却仲介・買い手探し。借地権の扱いに慣れた会社を選ぶことが重要

行政書士:遺産分割協議書の作成・各種書類の準備サポート

空き家アドバイザー(空き家等管理活用支援法人):各専門家へのコーディネート・ワンストップの初期相談窓口

借地問題は「誰に相談すればいいかわからない」という入り口の難しさが最初の壁になりがちです。

まずは空き家アドバイザーへの相談から始め、状況に応じて適切な専門家へつないでもらうことが、最もスムーズな解決への近道です。

まとめ

借地上の空き家・実家の相続・処分について、覚えておいてほしいポイントを整理します。

  • 借地権は立派な財産。「価値がないもの」と思って無償返還するのは経済的損失になりうる
  • 相続による借地権の引き継ぎには、地主への承諾料・名義変更料は原則不要(法律上の正当な権利)
  • 相続発生後は、まず借地契約書の確認・地代の継続支払い・地主への早期挨拶が優先
  • 売却には地主の承諾が必要。譲渡承諾料の相場は借地権価格の10%程度
  • 地主が承諾を拒否・不当に高額な承諾料を請求した場合は「借地非訟」という法的手段がある
  • 更地返還は借地権価値の放棄になりうる。返還前に必ず他の選択肢を検討する
  • 地主との良好な関係を保つことが、すべての手続きをスムーズにする最大のポイント
  • 借地問題は複合専門案件。司法書士・弁護士・借地権専門不動産会社・空き家アドバイザーの連携が必要

「複雑でどこから手をつければいいかわからない」という方ほど、早く専門家に相談することが問題を早期解決する最短ルートです。


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