今の家づくりにおいて、窓の断熱性を高める「樹脂サッシ」は必須のアイテムです。
しかし、実は「ガラスの種類」までこだわって選べていますか?
Low-Eガラスには、夏の太陽熱を遮る「遮熱型」と、冬のポカポカした熱を取り入れる「断熱型」の2種類があります。
これを東西南北の窓の方角に合わせて正しく配置しないと、夏に部屋がオーバーヒートしたり、冬に寒くなったりしてしまうのです。
建築士の視点から、窓選びで失敗しないための新常識をわかりやすく解説します。

まず「樹脂サッシ」だけでは性能は決まらない
新築・リフォームの相談を受ける中で、「樹脂サッシにしたから断熱は安心」と考えている方によく出会います。
確かに、フレーム部分が熱を伝えやすいアルミから、熱を伝えにくい樹脂に変わったことは大きな進化です。
しかし、窓全体の性能を決めるのは「サッシ(フレーム)+ガラス」の組み合わせです。
ガラス面積は窓全体の7〜8割を占めるため、実はガラスの選び方の方が、窓の性能に与える影響は大きいのです。
樹脂サッシをどれだけ高性能にしても、内側のガラスの種類を間違えれば、「冬は思ったより寒い」「夏は西日でサウナのようになる」という事態が起きます。

Low-Eガラスとは何か。仕組みをおさらいする
Low-E(ロー・イー)ガラスとは、ガラス表面に特殊な金属膜(Low-E膜)をコーティングしたガラスのことです。
「Low Emissivity(低放射)」の略で、熱の放射を抑える働きを持っています。
このLow-E膜を、複層ガラス(ペアガラス)の内側のどちらの面につけるかによって、性能が大きく変わります。
- Low-E膜を外側のガラスの室内側面につける → 遮熱型:日射熱を反射して室内に入れにくくする
- Low-E膜を室内側のガラスの室外側面につける → 断熱型:室内の暖かさを外に逃げにくくしつつ、日射熱は通しやすい
同じ「Low-Eガラス」という名前でも、膜をつける位置が違うだけで、まったく逆の性能になるのです。
ここを理解せずに「Low-Eだから高性能」とひとくくりにしてしまうことが、窓選びの失敗の最大の原因です。

遮熱型と断熱型、それぞれの特徴
遮熱型Low-Eガラス
太陽からの日射熱(近赤外線)を反射する性能に優れています。
夏の強い日差しが入る窓に使うことで、冷房効率を高め、室内の温度上昇を抑えます。
ただし、冬の暖かい日射熱も同時に反射してしまうため、太陽の熱を取り込みたい窓には不向きです。
断熱型Low-Eガラス
室内の暖房熱を外に逃がしにくくする性能に優れています。
同時に、日射熱(特に冬の低い角度から入る太陽光)を効率よく室内に取り込めるため、暖房負荷を減らす効果があります。
ただし、夏に直射日光が強く当たる窓に使うと、日射熱を取り込みすぎてしまい、室温が上がりやすくなります。
つまり、「遮熱型は夏を制する窓」「断熱型は冬を制する窓」というイメージで捉えると分かりやすいでしょう。

方位別の正しい使い分けルール
ここからが今回最もお伝えしたい核心部分です。
日本の気候において、窓の方位ごとに適したガラスタイプは以下のように整理できます。
南面の窓 → 断熱型がおすすめ
南面は、夏は太陽の角度が高いため庇(ひさし)や軒で日射を遮りやすく、冬は太陽の角度が低いため日射熱を多く取り込めます。
断熱型を使うことで、冬の暖かい日差しを効率よく取り込みながら、暖房熱の流出も防げます。
西面・東面の窓 → 遮熱型がおすすめ
西面・東面は、太陽の角度が低い時間帯(西日・朝日)に直接強い日射が入り込みます。
特に西日は夏の室温上昇の最大要因のひとつです。
庇では遮りにくいため、遮熱型ガラスでしっかり日射熱をカットすることが重要です。
北面の窓 → 断熱型がおすすめ
北面は直射日光がほとんど入らないため、日射熱の取得という観点ではメリットが小さい一方、室内の暖房熱が外に逃げやすい方位です。断熱性能を重視した断熱型が適しています。
新潟のように冬の日照時間が少なく、夏は蒸し暑い地域では、この方位別の使い分けがより重要になります。
南面でしっかり冬の陽光を取り込み、西面・東面の日射をしっかりカットすることで、暖房費・冷房費の両方を抑える設計が可能になります。

よくある失敗パターン
設計や窓選びの現場で実際によく見かける失敗例を紹介します。
① 全窓を遮熱型で統一してしまう
「とにかく日射を遮ればいい」という発想で全窓を遮熱型にすると、南面でも冬の日射熱を取り込めず、暖房負荷が増えてしまいます。
新潟のような寒冷地では、暖房費の増加につながりやすい失敗です。
② 全窓を断熱型で統一してしまう
逆に「とにかく断熱性能を高めたい」という発想で全窓を断熱型にすると、西面の窓から夏の強い日射熱が入り込み、冷房が効きにくい・オーバーヒートしやすい部屋になってしまいます。
③ 窓の配置計画と無関係にガラスを決めてしまう
設計の最終段階で「とりあえず標準仕様で」とガラスタイプを決めてしまうと、方位別の使い分けが反映されないまま完成してしまいます。
窓のガラス選定は、間取り・方位計画と同時に検討すべき項目です。

設計段階で確認すべきポイント
これから新築・リフォームを検討される方は、住宅会社との打ち合わせで以下を確認してみてください。
- 各窓のガラスが「遮熱型」「断熱型」のどちらになっているか
- その窓の方位に対して、適切なタイプが選定されているか
- 庇・軒・外付けブラインドなど、ガラス性能と合わせた日射調整の工夫があるか
- 吹き抜けや大きな窓がある場合、特に方位とガラスタイプの整合性が取れているか
性能にこだわる住宅会社であれば、方位ごとにガラスタイプを使い分けた設計図面を提示できるはずです。
逆に「全部同じガラスです」という回答であれば、方位別の検討がされていない可能性があります。

まとめ
Low-Eガラスの選び方について、覚えておいてほしいポイントを整理します。
- 「樹脂サッシだから安心」ではなく、ガラスの種類が窓性能の大部分を決める
- Low-E膜の位置によって「遮熱型」「断熱型」と性能が真逆になる
- 南面・北面は断熱型、西面・東面は遮熱型が基本の使い分けルール
- 全窓を同じタイプで統一すると、夏または冬のどちらかで失敗する
- 窓のガラス選定は、間取り・方位計画と合わせて検討すべき項目
「樹脂サッシだから」で安心せず、一歩進んで「どのガラスタイプが、どの方位に使われているか」まで確認することが、本当に快適な住まいづくりへの近道です。
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