「ハザードマップで浸水エリアじゃないから安心」
本当にそれだけで大丈夫ですか?
近年の猛烈なゲリラ豪雨では、川の氾濫による外水氾濫だけでなく、道路の排水が追いつかずに発生する「内水氾濫(ないすいはんらん)」による床下浸水が増えています。
新潟市でも、ゲリラ豪雨(予測のつかない局所的な集中豪雨)が多く起こるようになっており、道路がたびたび冠水しています。
新潟市では、ゲリラ豪雨時に冠水するおそれのある箇所の一覧表と箇所マップを毎年更新し公表しています。
そして2022年8月3日〜4日にかけて新潟県下越地域では線状降水帯が発生し、1時間雨量約150mmに達する強烈な雨が降り、各地で大きな浸水被害をもたらしました。
ハザードマップは「河川氾濫が起きたときの想定エリア」を示すもの。
内水氾濫、つまり道路や排水溝が水をさばき切れずに起きる浸水はハザードマップに反映されていないことがほとんどです。
これを防ぐ鍵が、設計時の「基礎の高さ(GL:グラウンドライン)」です。
今回は、あえて余裕を持った高さで基礎を設計する理由を解説します。
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「GL」って何?まず基本から
GL(グラウンドライン)とは、建物が建つ地盤面の高さのことです。
正確には以下の2つに区別されます。
・現況GL:建物を建てる前の、現在の地盤面の高さ
・設計GL:建物が建った後の、計画上の地盤面の高さ
設計GLを決めるにあたっては、基準となる高さの点が必要となり、高さが変化したり基準が無くなったりしない場所の一点を基準点(BM:ベンチマーク)として決め、BMからプラスマイナス何mmのGLとなるか設定します。
つまり設計GLとは、「この土地に家を建てるとき、地盤をどの高さに設定するか」という設計上の判断です。
そしてこのGLの高さが、床下浸水リスクに直結します。
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なぜGLが低いと浸水するのか
地形的に土地が低いところには雨が集まるので、GLが低いと敷地に水が入り込み水害の可能性が高くなります。
GLが低すぎると、家の敷地から水がスムーズに排水されません。
具体的にどういうことか、イメージしてみてください。
大雨が降ると、道路に水が溢れます。
このとき、道路の水位が設計GLより高くなれば、水は敷地内に流れ込みます。
道路より低い土地に建てられた家は、大雨のたびに「水を集める受け皿」になってしまうのです。
SGL設定を現状地盤面(GL)付近で安易に決めてしまい、豪雨時に玄関や床下への浸水が発生した事例が報告されています。
また、敷地周辺の既存ランドスケープや雨水排水計画と整合性が取れていない場合も、外構からの逆流や雨漏りを引き起こす要因となります。
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清新ハウスがGLを「あえて高く」設定する理由
清新ハウスでは、新築・リフォームの設計時に以下の手順でGL設定を行っています。
① 周辺道路・隣地の高低差を現地測量する
単純に「建物を置く場所の高さ」だけでなく、前面道路・隣地・用水路・排水溝の位置と高さを計測します。
新潟には農業水路が多く、大雨時の水の流れ方が土地によって大きく異なります。
この現地調査なしにGLを決めることは、リスクを知らずに設計することと同じです。
② 道路面より高い設計GLを設定する
近年の大雨、そして将来も益々増えるであろう大雨の状況を考慮すると、平坦な土地であれば接続する道路より上げての設計GL設定が望ましいです。
具体的には、前面道路の排水高さより最低でも5〜10cm、状況によっては15〜20cmのGL高さを確保する設計を行います。この「数センチの余裕」が、ゲリラ豪雨の際の命綱になります。
③ ベタ基礎天端の高さを必ずGLより上に設定する
基礎の断面図や矩計図には防湿コンクリート(ベタ基礎)の高さはGLより50mm上げての記載がありますが、これを見逃すと、大雨時に基礎内雨水侵入の失敗となってしまいますので、基礎止水の一番のポイントであり、GLから床の高さや玄関ポーチの高さよりも、防湿コンクリート(ベタ基礎)の高さを重要視することです。
これがGLより低くなってしまうと、地表面を流れてきた水が基礎内に直接侵入します。
このミスは施工後に修正するには大がかりな工事が必要になります。
④ 外構の排水勾配と組み合わせる
GLを高く設定するだけでなく、建物周囲の外構(駐車場・アプローチ・庭)に適切な排水勾配(2〜3%)をつけることで、水を速やかに道路側の排水溝に誘導します。
GLと外構設計はセットで考えることが重要です。
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「GL設定が低かった」ことによる実際の失敗事例
設計GLの設定ミスによる失敗は、業界内でも多く報告されています。
ある工務店の実例では、防湿コンクリート(ベタ基礎)をGLより下げてしまった結果、大雨が降ると地下水が上昇し床下に水が溜まってしまう事になり、それを防ぐための工事として、基礎外周部に犬走の様なコンクリート打設の止水工事を追加で行い対処しました。
設計士もGL高さの重要性の認識が甘かったための失敗経験だったと報告しています。
追加の止水工事だけで数十万円のコストが発生したうえ、住み始めてからの精神的なストレスは計り知れません。
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新潟で特に注意すべき「内水氾濫リスクの高いエリア」
新潟市では、ゲリラ豪雨時の道路冠水リスクの高い箇所を毎年更新して公表しています。
特に以下の条件の土地は注意が必要です。
・農業水路・里道に近い土地:排水能力を超えると水路からの溢水が起きやすい
・旧水田・低地を造成した住宅地:もともと低い地形のため水が集まりやすい
・道路より低い、または同じ高さの土地:排水の逃げ場がない
・排水溝・グレーチングが近くにない土地:集中豪雨時に道路水位が上がりやすい
購入を検討している土地や、既存の住宅リフォームを行う場合は、必ずこれらの条件を確認したうえで設計GLの設定を検討してください。
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リフォームでも「GL対策」はできる
「もう家を建ててしまったから手遅れ」ではありません。
既存住宅でも以下の対策が有効です。
① 外構の排水改善(土間コン打設・透水性舗装) 敷地内の排水経路を整備し、水を素早く道路側に流す設計に改修します。費用目安は30〜80万円程度。
② 基礎外周の止水・防湿工事 基礎と地盤の間にコンクリートを増打ちして止水性を高める工事。費用目安は20〜50万円程度。
③ 玄関・基礎まわりへの防水止水板の設置 ゲリラ豪雨の際に玄関前や基礎周辺を防水するための止水板を設置。費用目安は10〜30万円程度。
これらを組み合わせることで、既存住宅でも床下浸水リスクを大幅に低減できます。
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まとめ
ゲリラ豪雨・線状降水帯が年々激化する中、「ハザードマップで安全だから大丈夫」という認識は危険です。
・内水氾濫による床下浸水は、ハザードマップに反映されていない
・設計GLを道路面より高く設定することが、浸水防止の基本
・ベタ基礎天端をGLより50mm以上上げることが最重要ポイント
・外構の排水勾配とセットで設計することで効果が最大化される
・新潟は農業水路・低地が多く、周辺の水の流れ方を現地調査することが必須
新築・リフォームを検討している方は、「間取りや外観」と同じくらい、「GLの高さと排水設計」を確認することを強くおすすめします。
但し、設計GLを高くするということは、土留めを設置する費用が発生しますので、それも覚えておく必要があります。
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