
共働きのご夫婦が増えている今、二人の力を合わせて理想の家づくりを叶える「ペアローン」を選ぶ方が増えています。
確かに借入額を増やせるメリットはありますが、実は金利が少しずつ上がりつつある今だからこそ、慎重にシミュレーションしておくべき「隠れたリスク」があります。
もしどちらかが育休や病気で一時的に収入が減ったら?
団信の保障は二人とも対象になる?といった、銀行では詳しく教えてくれない「もしも」に備えるための賢い資金計画について、本音でアドバイスします。
まず整理する。「ペアローン」「収入合算」の違い
夫婦の収入を活用して借入額を増やす方法には、大きく3つの種類があります。
① ペアローン
夫婦それぞれが主債務者として、2本の独立した住宅ローン契約を結ぶ方式です。
それぞれが団体信用生命保険(団信)に加入でき、住宅ローン控除もそれぞれが受けられます。
お互いが相手の連帯保証人になります。
② 収入合算(連帯債務型)
1本のローン契約を、夫婦の合計収入で申し込む方式です。
契約が1本のため、諸費用はペアローンより抑えられます。
主にフラット35などで取り扱われています。
③ 収入合算(連帯保証型)
主債務者が1人で借り入れ、配偶者が連帯保証人となる方式です。
住宅ローン控除や団信の対象となるのは原則として主債務者のみです。
リクルートが首都圏新築マンション購入者に行った調査によれば、共働き世帯の56%が夫婦でペアローンを組んでおり、世帯年収1,000万円以上の層では79%がペアローンを選択しているという結果が出ています。
共働き世帯にとって、もはや「特別な選択」ではなくなっているのが現状です。

メリット:借入額が増え、控除も2倍になる
ペアローンの最大のメリットは、借入可能額を大きく増やせることです。
例えば年収が夫500万円・妻500万円の夫婦が5,000万円の住宅ローンを組む場合、夫1名の債務者だけでは年収倍率(年収に対する借入額)は10倍と非常に高くなりますが、夫婦2名とも債務者になれば年収倍率は5倍まで下がります。
一般的に年収倍率は7倍以内であれば審査に通りやすいとされているため、ペアローンによって審査が通りやすくなるケースが多いのです。
また、住宅ローン控除も夫婦それぞれが受けられます。
2026年現在の住宅ローン控除は控除率年末残高の0.7%・控除期間最大13年間で、子育て世帯は借入限度額最大5,000万円(新築・認定住宅の場合)となっています。
例えば借入5,000万円(認定住宅)を夫3,000万円・妻2,000万円で分けた場合、夫は最大273万円、妻は最大182万円、夫婦合計で最大455万円の控除を受けられる可能性があります。
単独ローンでは一方しか控除を受けられないため、この差は非常に大きいものです。

リスク①:金利上昇が二人の家計を直撃する
2026年現在、変動金利は0.6〜0.8%台(優遇適用後)で推移していますが、2024年の利上げ以降やや上昇傾向にあります。
一方、長期固定型【フラット35】の最頻金利は2026年2月時点で返済期間21〜35年が2.26%、15〜20年が1.91%となっています。
ペアローンでは、夫は変動金利・妻は固定金利のように、金利タイプを分散させることができます。
これにより、片方が金利上昇の影響を受けても、もう片方は固定金利で安定した返済を続けられるという柔軟な対応が可能です。
一方で、夫婦そろって変動金利を選んでいる場合、金利が上昇すれば二人分の返済額が同時に増加するため、家計への影響が単独ローンより大きくなる点には注意が必要です。

リスク②:どちらかの収入が減ったときの返済義務
ここが最も知っておいてほしいポイントです。
ペアローンでは、夫婦はお互いの連帯保証人になるのが一般的です。
そのため、どちらか一方の収入が減った場合でも、返済責任は双方にあります。
出産・育児・転職・病気などによる収入の変動は十分に考えられることであり、万が一返済が滞れば、もう一方が相手の分も含めた全額を返済しなければなりません。
さらに、退職などで無収入になると、その人が受けていた住宅ローン控除も受けられなくなってしまいます。
「ペアローンを解消して単独ローンへ借り換える」という選択肢もありますが、新たなローン審査が必要になり、また持ち分の所有権移転を伴う場合は贈与税が課せられる可能性もあるため、難度は高めです。
ペアローンを検討する際は、どちらか一方の収入が一時的に途絶えても返済を継続できるか、無理のない借入額の設定を事前に話し合っておくことが何より重要です。
リスク③:団信の保障範囲は「自分の分だけ」が原則
ここも、銀行ではあまり強調されないものの、非常に重要なポイントです。
ペアローンでは、夫婦それぞれが個別に団信に加入できます。
しかし、一般的なペアローンの団信は「亡くなった人の残債のみ」が保険金で完済される仕組みです。
たとえば夫婦でペアローンを組み、返済中に夫が亡くなった場合、夫のローン残債分は保険から返済されますが、妻の住宅ローンはそのまま残ります。
残ったローンを妻1人で担う可能性がある点は、大きなデメリットとして理解しておく必要があります。
一方、収入合算(連帯保証型)の場合、団信に加入できるのは主債務者のみが一般的で、連帯保証人に万が一のことがあっても住宅ローンの残債はそのまま残ります。
「夫婦連生団信」という対策がある
この「もう一方のローンが残る」リスクに対応するため、一部の金融機関では「夫婦連生団信」という特別な団信を提供しています。
夫婦連生団信は、どちらか一方に万一のことがあった場合に、夫婦両方のローン残債が0円になる仕組みです。
三井住友銀行「クロスサポート」、みずほ銀行「ペアローン団信」、りそな銀行「ペア団信」、PayPay銀行「超サポ団信」などが代表例です。
夫婦連生団信に加入するには、住宅ローン金利に一定の上乗せが必要で、上乗せ金利は年0.1%〜0.3%程度が相場です。
また、一般的に夫婦連生団信を使えるのは「連帯債務型」に限られることが多く、ペアローンで利用できる金融機関は限られている点も知っておきましょう。
なお、夫婦連生団信が支払われた場合、支払事由に該当していない方の免除された債務が一時所得とみなされ、所得税の課税対象となる可能性があるため、税理士や税務署への確認が必要です。

リスク④:離婚したときの複雑さ
夫婦でローンを組む際の最大のリスクともいえるのが離婚です。
離婚をしても、自宅を売却するか、夫婦のいずれかがローンを全額引き継がない限り、双方のローン返済は続きます。
ペアローンや連帯債務では名義が共有となっているため、売却するには夫婦の合意が必要です。
主債務者である夫が家を出て妻と子供が自宅に住み続けた場合、夫の返済が滞ってしまえば、連帯保証人である妻が全額1人で返済していかなくてはなりません。
物件の売却額がローン残高を下回る「オーバーローン」の場合、差額を自己資金で返済する必要も出てきます。
ローンの一本化(どちらかがすべて引き継ぐ)という選択肢もありますが、残された一人の返済負担が大きくなる上、金融機関の審査を通過する必要があり、持分の譲渡に贈与税が発生する可能性も考慮しなければなりません。
いずれの方式でも、離婚に対する備えは十分とは言えないのが現実です。
ここ最近離婚で売却するケースが増えてきたように感じています。
賢い防衛策:今からできる3つの対策
これらのリスクを踏まえ、共働き夫婦が今からできる防衛策を整理します。
① 「二人の収入合計」ではなく「一人の収入でも返せる額」で借入額を決める
借りられる額の上限まで借りるのではなく、どちらか一方の収入が一時的になくなっても返済を継続できる範囲で借入額を設定することが、最も基本的なリスク対策です。
② 団信の保障内容を契約前に必ず確認する
「自分の分だけ保障されるのか」「夫婦連生団信は使えるのか」を、契約前に金融機関へ具体的に確認してください。
年齢・健康状態・職種によっては夫婦連生型に加入できない場合もあり、その場合は単独またはペアローンに加えて、民間の死亡保険・収入保障保険で必要保障額を補うという実務的な選択肢もあります。
③ 金利タイプを分散させてリスクを抑える
夫婦そろって変動金利にするのではなく、一方を固定金利にするなど、金利タイプを分散させることで、金利上昇局面でのリスクを軽減できます。

まとめ
ペアローン・収入合算について、覚えておいてほしいポイントを整理します。
- ペアローンは借入額を増やせ、住宅ローン控除も夫婦それぞれ受けられる大きなメリットがある
- 一方で、どちらかの収入が減っても返済責任は双方に残る
- 一般的な団信は「亡くなった人の分だけ」保障され、もう一方のローンは残るのが原則
- 「夫婦連生団信」を使えば両方のローンを0円にできるが、金利上乗せ・取扱金融機関の制限がある
- 離婚時はローンの一本化・売却に夫婦の合意が必要で、複雑な手続きが発生する
- 「借りられる額」ではなく「一人でも返せる額」を基準に借入額を決めることが最大の防衛策
夢の実現に向けて借入額を増やすことは魅力的ですが、それと同じくらい「もしも」への備えを話し合っておくことが、後悔しない家づくりの第一歩です。
ちなみに、今日ご紹介した内容については、絶対これが良い!というものではなく、最終的にはご自身に合うものをチョイスするカタチになりますのでご注意ください。
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