「雰囲気のある古民家で民泊をやりたい」
相談の中で、特に秋になると増えてくる話題です。
紅葉・佐渡・越後湯沢のスキーシーズン前、新潟の観光需要が高まるこの時期に「古民家を宿泊施設にしたい」という方が動き始めます。
古民家民泊は、うまくいったときの魅力は本物です。
インバウンドのゲストが「日本の古い家に泊まりたい」という需要と合って、高単価・高稼働率という事例が全国で増えています。
でも正直に言います。
古民家の民泊は、普通の物件より規制の壁が高いのです。
消防と建物の問題で止まるケースが多い。
「物件は決まった・雰囲気もいい・リノベの見積もりも取った。
でも消防署に図面を持っていったら、想定外のことを言われた」という話を何件も聞いています。
今回は古民家を民泊にするときの「消防法」「建築基準法(用途変更)」「旅館業 vs 住宅宿泊事業の選択」について、建築士の立場から実務的に整理します。

古民家民泊で最初に決めること。「どの法律で運営するか」
古民家で民泊をする場合、まず「どの法律の枠組みで運営するか」を決めることが最初の判断です。
この選択で、必要な設備・手続き・コストが全然変わります。
① 住宅宿泊事業法(民泊新法)での届出
年間180日以内の宿泊に限定した「住宅」としての届出制度です。
都道府県知事への届出だけで始められます。
古民家の場合、断熱性・設備の不足が課題になりやすいですが、民泊としての構造設備基準は旅館業法ほど厳しくなく、まず試してみる段階において現実的な選択肢です。
ただし重要な注意点があります。
住宅宿泊事業法の届出対象は「住宅」に該当する建物に限られます。
長期間にわたって空き家状態だった古民家が「住宅」の定義を満たすかどうかは、管轄の都道府県担当窓口に事前確認することをおすすめします。
「古民家だから住宅として届出できるはず」と思って進めると、「住宅の定義を満たさない」として届出が受理されないケースがあります。
これが「古民家特有のつまずきポイント」のひとつです。
② 旅館業法(簡易宿所)での許可
年間を通じて営業できますが、保健所への許可申請が必要です。
消防設備・建物の基準が住宅宿泊事業より厳しくなります。
通年稼働を目指す・収益性を最大化したいという場合は旅館業法の選択になりますが、設備費用・申請の難易度も上がります。
古民家の場合、どちらを選ぶか
「まず試してみる」「改修費用を抑えたい」段階では住宅宿泊事業法での届出が現実的です。
「通年稼働・本格運営」を目指す場合は旅館業法を視野に入れますが、古民家ゆえの建物の問題(後述)が大きなハードルになります。
最初から旅館業を目指して大規模改修して「やっぱり客が来なかった」というリスクを考えると、住宅宿泊事業法で始めて様子を見る方が合理的なケースが多い。

消防法の話。「自動火災報知設備」の問題
古民家民泊で最も多いつまずきポイントが消防設備です。
旅館業許可・民泊届出のどちらでも、「消防法令適合通知書」(施設が消防法令に適合していることを消防機関が証明する書面)の提出を求められます。
消防用設備を整えたうえで、管轄の消防署に事前相談し、交付を受ける流れになります。
民泊は、消防法上「(5)項イ」(旅館・ホテル・宿泊所)という用途に分類されます。
住宅よりも厳しい消防基準が適用されます。
主に必要な消防設備
主な設備義務(規模・形態により異なる)として、自動火災報知設備または特定小規模施設用自動火災報知設備、誘導灯、消火器、場合によっては避難器具・スプリンクラーが必要になります。
「特定小規模施設用自動火災報知設備」という重要な緩和制度
消防法上の「特定小規模施設」に該当する民泊施設(原則として延べ面積300㎡未満)では、配線工事不要の簡易な「特定小規模施設用自動火災報知設備」の設置が認められています。
延床面積300㎡未満で原則2階建て以下の建物では、この無線式の設備で対応できます。
配線工事が不要なため、通常の自動火災報知設備(50万円以上)と比較して、15〜25万円程度と大幅にコストを抑えられます。
これが使えるかどうかで、消防設備費用が大きく変わります。
古民家の多くは延床面積300㎡未満のものが多いですが、大きな古民家・蔵がある場合などは超える可能性があります。
2025年1月の消防設備基準の緩和
2025年1月の消防庁通知および住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)の改正により、小規模な民泊施設における消防設備要件が緩和されました。
宿泊室の床面積の合計が50㎡以下などの一定の条件を満たす場合、自動火災報知設備の設置が免除され、住宅用火災警報器の設置で済むようになるなど、導入コストを大幅に抑えられるケースが増えています。
つまり「家主が同居していて・宿泊室の合計面積が50㎡以下」という小規模な古民家民泊では、一般的な住宅と同じ住宅用火災警報器で対応できる可能性があります。
古民家特有の消防問題
古民家で特に問題になりやすい点があります。
築年数が古い建物は「木造・茅葺き・板張り壁・土壁」など可燃性の素材が多い。
消防署がこれを「火災リスクが高い」と判断した場合、通常の基準より追加の設備を求められることがあります。
また「たった1本の避難階段しかない3階建て以上の建物」(特定一階段等防火対象物)は、これまで特定小規模施設用の設備が使えなかったのですが、2024年8月の法改正でこの要件が緩和されました。
消防設備で一番やってはいけないこと
消防署への事前相談をせずに設備を整えて、検査で「これでは通らない」と言われること。
せっかくリノベーションした後でやり直すことになります。
消防署への事前相談は、リノベーション工事の前にやる。
これが古民家民泊での消防対応の鉄則です。

建築基準法の話。「用途変更」の問題
消防と並んで大きな壁になるのが、建築基準法上の「用途変更」の問題です。
住宅を旅館業の施設にする場合、建築基準法上は「住宅」から「旅館・ホテル」への用途変更に当たります(旅館・ホテルは特殊建築物)。
200㎡の分岐点
200㎡未満の用途変更は確認申請が不要になったが、法律を守る義務はあります。
床面積の合計が200㎡未満であれば、用途変更の「確認申請」は不要です。
ただし「申請が不要」と「法律に適合しなくていい」は別の話です。
建築基準法の基準(廊下の幅・天井高・採光・換気等)は満たす必要があります。
住宅宿泊事業(民泊新法)の場合
住宅宿泊事業法で届出する場合、建物の用途はあくまで「住宅」のままです。
用途変更の確認申請は原則不要です。
ただし「住宅」の定義を満たす必要があります。
旅館業(簡易宿所)の場合
旅館業で許可を取る場合、「住宅」から「旅館・ホテル等」への用途変更になります。
200㎡以上なら確認申請が必要。200㎡未満でも建築基準法の基準を満たす必要があります。
「検査済証がない古民家」の問題
ここが古民家民泊で最も難しいポイントのひとつです。
昭和時代・平成初期の建物の多くは「検査済証」(建築確認済みであることの証明書)が存在しないか、紛失しているケースがあります。
検査済証がない古民家や築古物件でも、宿泊施設への改修は可能です。
国土交通省の「既存建築物の現況調査ガイドライン」(2025年4月に旧ガイドラインを統合・一本化)に基づき、建築士が現況調査と報告書作成を行うことで、用途変更の手続きに進めます。
調査費用は数十万〜数百万円、期間は数ヶ月〜半年程度を見込む必要があります。
「検査済証がない→現況調査が必要→追加の費用と時間がかかる」
これが予算計画を大幅に狂わせることがあります。
古民家を民泊にする前に「この建物に検査済証があるか」を確認することが最初のステップです。
耐震性の問題
1981年以前に建てられた建物は「旧耐震基準」で建てられています。
現在の耐震基準(新耐震)を満たさない建物に不特定多数のゲストを泊めることのリスク。
これは法的義務というより、オーナーとしての責任の問題です。
旅館業の許可を取る際、耐震性が問われるケースがあります。
耐震診断・補強工事が必要になる場合のコストを事前に見積もっておくことが重要です。

古民家民泊の許認可フロー。正しい順番で動く
「古民家で民泊を始めたい」と思ったときの正しい手順を整理します。
STEP 1:用途地域の確認
その物件のある場所で、民泊・旅館業が許可される用途地域かどうかを確認します。
第一種・第二種低層住居専用地域では旅館業ができない場合があります。
市区町村の都市計画課で確認できます。
STEP 2:建物の基礎情報の確認
- 検査済証の有無
- 延床面積・各階の面積
- 建築年(旧耐震か新耐震か)
- 構造(木造・RC等)
これらを確認してから、次のステップへ進みます。
STEP 3:消防署への事前相談
事前相談として保健所、消防署、建築指導課への事前相談で用途地域、構造設備基準、消防設備の要求を確認します。
建物の図面(なければ手書きの平面メモ)を持って消防署の予防課に相談に行きます。
「この建物で民泊(または旅館業)を始めたい。必要な消防設備と費用の概算を教えてほしい」という相談です。
STEP 4:建築士への相談・現況調査
検査済証がない場合・用途変更が必要な場合は、建築士に現況調査を依頼します。
清新ハウスで対応可能です。
STEP 5:リノベーション計画・見積もり
消防設備の要件・建築基準法の要件が分かった段階で、リノベーションの計画と費用の見積もりを作成します。
「消防と建物の要件を満たすためのリノベーション費用」が概算できた段階で、採算計算をします。
STEP 6:届出または許可申請
住宅宿泊事業の届出(都道府県)または旅館業の許可申請(保健所)を行います。消防法令適合通知書の取得が必要です。

古民家民泊のコスト感。現実的な数字を出す
「古民家を民泊にしたい」という方が最初に驚くのがコストです。
リノベーション費用
古民家の状態によって大きく変わります。
「外壁・屋根の補修+内装の整備+設備更新」のみで済むなら300万〜500万円程度のことも。
でも「構造補強・断熱工事・水回りの全面更新+消防設備」まで必要な場合、1,000万円を超えることがあります。
古民家は「開けてみないと分からない部分」が多いので、実際に現地を見て調査してからでないと精度の高い見積もりが出せません。
この予算に関してはかなり思い違いが多い部分です。
安価で民泊が出来ると思っている方が多いのが現状。
しっかり計画して見積をすることが重要です。
消防設備費用
小規模(延床面積300㎡未満・住宅宿泊事業法):15万〜30万円程度 中規模(旅館業・通常の自動火災報知設備):50万円以上
申請関係費用
建築士の現況調査(検査済証なしの場合):数十万円〜 行政書士・申請代行:10万〜20万円程度
採算の計算
将来的な365日営業(旅館業法への転換)を見据えた設備設計を行うことも、一棟民泊運営を成功させる鍵となります。
まず「年間の収益がどのくらいか」を現実的に見積もってから「それに対して初期投資が何年で回収できるか」を計算してください。
「雰囲気がいいから稼げるはず」という感覚だけで大きな投資をするのは危ないです。
新潟の古民家民泊特有のポイント
新潟で古民家民泊を考える場合の特有の注意点を整理します。
雪国の建物対策
新潟の古民家は積雪に耐えるために「太い柱・厚い壁・重い屋根」という構造を持っていることが多いです。
これは建物の頑丈さという意味ではプラスですが、「断熱性能は現代基準に比べて大幅に低い」という問題があります。
冬のゲストが快適に泊まれる断熱・暖房環境を整えるコストが、通常の古民家より大きくなりやすい。
凍結対策
水道管の凍結防止は新潟の古民家では必須です。
古い配管のままで民泊を始めると、冬に水道が止まってゲストへの影響が出ます。
配管の更新・凍結防止ヒーターの設置を計画に組み込んでください。
インバウンド向けの可能性
新潟の古民家民泊は、インバウンド(特に雪国文化・農村体験・温泉・酒蔵)を目当てにした観光客に刺さります。
Airbnbやbooking.comの「ユニークステイ」カテゴリで差別化できます。
清掃・管理を任せたい場合、グループ会社の㈱SATが住宅宿泊管理業者として運営管理を代行できます。
遠方に住むオーナーの方でも始めやすい体制があります。

まとめ
古民家民泊の消防法・用途変更の問題について整理します。
最初に決めること:住宅宿泊事業法(年間180日・届出制)か旅館業法(通年・許可制)か。古民家では住宅宿泊事業法から始めることが多い。
消防法のポイント:延床面積300㎡未満なら「特定小規模施設用自動火災報知設備(無線式・15〜25万円程度)」で対応できる可能性が高い。
2025年1月の緩和で小規模な場合は住宅用火災警報器でも対応できるケースがある。
消防署への事前相談はリノベーション工事の前に必ずやる。
建築基準法のポイント:床面積200㎡未満なら用途変更の確認申請は不要(ただし法令適合の義務はある)。
検査済証がない古民家は現況調査が別途必要。旧耐震基準の建物は耐震診断を検討する。
新潟特有のポイント:断熱・凍結対策のコストを計画に入れる。
インバウンド需要との相性は良い。
「古民家で民泊をやりたい」という方、まず清新ハウスに相談してください。
「この建物で何が必要か」を建築士として確認することから一緒に始めます。
ご相談はLINEからどうぞ
「古民家の民泊化を相談したい」「消防・建物の確認を一緒にやってほしい」という方はLINEでご連絡ください。
👉 LINEでご相談(リンク)
LINEで気軽に無料相談

【モデルハウス公開中!】
NEW!秋葉区小戸上組分譲地内 新「蔵里」OPEN!

古民家から取り出した古材を再利用した新旧融合の新しい住まいの在り方をご体感下さい。
👇👇モデルハウス見学のご予約はこちらをクリック👇👇
