環境側の温熱要素は、気温(温度)、湿度、気流、放射の4つで構成され、これを「温熱4要素」といいます。
①気温(温度)
温度計で計る温度です。体感温度は人体機能の関係で夏と冬では異なり、快適に感じる範囲は夏の方が高くなります。
●夏期:26~27℃ ●冬期:20~22℃
●空気調和設備の基準値:17~28℃(夏冬共)
快適性には、室内の温度分布、特に上下温度差が重要になります。空気の性質で、暖かい空気は上昇し冷たい空気が下に滞るといったことが起こります。足元が天井付近の温度よりも低くなり、この温度差が大きくなると不快感を感じます。この上下の温度差は、実は国際的な標準が定められていて、「椅子に座った状態でくるぶし(床上10㎝)と頭(床上110㎝)の温度差として3℃以内」となっています。
②湿度
湿度が高いと体感温度は高くなります。理由は表皮の汗の蒸発が遅くなるからです。汗は主に蒸発することで体の表面の「気化熱」を奪い体を冷却します。汗の蒸発が早いほど冷却のスピードも早くなり体温が下がって涼しく感じます。空気中に含むことのできる水蒸気の量は気温によって変化し、気温が高いほど含むことのできる水蒸気は多くなります。湿度が高いということは、含むことのできる水蒸気の量がすでに多いことになるので、人間の体から出ていける水蒸気の量が少なくなり、体感温度が上がってしまうということになります。
湿度が高いほど体感温度も上昇するので快適な室内環境を作るのに非常に重要な要素で、夏冬共40~60%が快適な範囲とされています。
③気流
風は衣服の断熱性を低下させ、また汗の蒸発を促進するため、体表面温度を下げる効果が大きいです。このため気流によって体感温度は大きく変化し、同じ気温でも気流が速い(風が強い)ほうが体感温度は低くなります。
④放射
室内の放射熱は、人体や暖房器具から周壁面へ、周壁面から人体へやり取りをしています。このとき、周壁面が冷えている(表面温度が低い)と壁面からの放射熱は小さくなり、体感温度が低くなります。逆に壁面が熱い(表面温度が高い)と放射熱が大きくなり、体感温度も高くなります。冬の浴室が寒く感じるのはこの放射熱の影響です。
以上が環境に関する温熱要素になります。人間が温度を感じるにも多くの要素が絡み合っていることが分かっていただけましたでしょうか。次回は人体側の温熱要素についてお話したいと思います。